公開日:2025.06.16 更新日:2025.06.16

MVP開発とは?PoCやプロトタイプとの違いや必要期間について解説

MVP開発とは?PoCやプロトタイプとの違いや必要期間について解説

新規サービスやプロダクトを立ち上げる際に、「最小限のコストと時間で市場ニーズを検証する」アプローチとして注目されているのがMVP(Minimum Viable Product)開発です。しかし、似たような概念であるPoCやプロトタイプとの違いが曖昧なままでは、適切な開発判断を誤るリスクもあります。

本記事では、MVPの定義や目的から、PoC・プロトタイプとの違い、必要な期間や費用、成功のポイントまでを見ていきましょう。

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MVP開発とは

新規事業やスタートアップの初期フェーズで重要視されるMVP開発は、最小限の機能で製品を市場に投入し、ユーザーの反応を通じて仮説を検証する開発手法です。従来のフルスペック開発とは異なり、早期に市場に出すことが目的であり、改善とピボットを繰り返すことで、本当に価値のある製品へと成長させるステップのひとつです。

ここでは、MVPの定義や目的、注目されている背景、そして実際の成功事例を探っていきましょう。

MVPの定義と目的

MVPとは、「ユーザーに価値を提供できる最小限の機能を備えた製品」を指します。完成品ではなく、あくまでも市場投入が可能な最小構成のプロダクトであり、その目的は「実際のユーザーの反応を通じて、製品やサービスの仮説を検証する」ことです。

MVP開発により、開発コストを抑えつつ、無駄な機能追加や方向性の誤りを早期に回避できるようになります。特にスタートアップや新規事業では、限られたリソースの中で最大の成果を得るための重要なステップとされています。

なぜMVPが注目されているのか

VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代において、従来型の「全機能を揃えてから市場投入する」方法は、時間・コストともにリスクが高くなりがちです。

その中で、MVPは以下のような理由から強く注目されています。

  • 市場ニーズに即応できる:ユーザーの反応をもとに柔軟に方向転換できる。
  • 初期コストを抑えられる:必要最小限の機能に限定することで、開発負担を軽減。
  • 学習重視の開発が可能:開発そのものが「市場学習」の手段となる。
  • スピード重視の競争に強い:他社に先んじて価値提案が可能。

特にテクノロジー業界やSaaSサービス、D2Cモデルにおいては、スピーディーな検証と改善のサイクルが成功を左右する要素となっています。

成功事例に見るMVPの効果

MVP開発は実際に多くの企業で採用され、ビジネスモデルの確立や市場浸透に貢献しています。

以下は代表的な成功事例です。

企業名MVPの形式得られた効果
Dropboxサービス説明動画実プロダクト開発前に数千人のβ登録を獲得。市場需要を確認。
Airbnb手作業による部屋掲載・運営ニーズの実在を確認。人的対応による低コスト検証が可能に。
Facebook大学生限定のSNS MVP特定セグメントへの試験導入でプロダクト・マーケット・フィットを獲得。
ZapposECサイトの手動受注+配送ユーザー行動の検証と供給網の構築を分離しリスクを最小化。

こうした事例に共通しているのは、「最小限の構成でユーザーに価値を届け、それによって仮説の正当性を確かめた」点です。無駄な投資を避け、製品やサービスの本質をユーザーの声から導き出すことができたのです。

PoC(概念実証)とは

PoC | 概念実証とは

新しいサービスや技術の導入を検討する際に、その「アイデアや技術が本当に実現可能なのか?」を見極めるために行われるのがPoC(Proof of Concept/概念実証)です。特に新規事業や技術的チャレンジが伴う開発では、このPoCが後の判断材料として極めて重要な役割を果たします。

ここでは、PoCの基本的な考え方と、開発プロセスにおける位置づけについて見ていきましょう。

PoCの概要と目的

PoC(Proof of Concept)とは、「技術的または概念的に、製品やサービスが成立するかどうかを確認するための検証プロセス」です。

主に開発のごく初期段階で行われ、実際にプロダクトを作り込むのではなく、「そもそも実現可能か?」を明らかにすることを目的としています。

PoCの目的

  • 技術的な実装可否の確認(例:AIモデルが精度を出せるか)
  • 新しいアイデアの実現性検証
  • プロジェクト化すべきか否かの意思決定支援
  • ステークホルダーや投資家への説明材料として活用

例:PoCで扱われる対象の一例

項目内容例
技術の動作確認API連携、機械学習のモデル精度など
性能評価レスポンス速度、処理能力
実装可能性の見極め社内システムとの統合が可能かどうか
法的・運用面の確認データ取り扱い、セキュリティ要件の適合

PoCは「成功・失敗」ではなく、「想定した条件で成立するか」を判断する工程であり、その結果によりプロジェクトの次フェーズへの進行可否を見極めます。

技術検証としてのPoCの位置づけ

PoC(Proof of Concept)は、開発プロジェクトにおける最初の実証フェーズとして、アイデアや技術の「実現可能性」を見極めるための重要なステップです。特に新しいテクノロジーや前例のないアーキテクチャを用いる場合、PoCは「本当に動作するのか」「目標とする精度・性能が出るのか」といった不確実性を解消する役割を担います。

この段階では、機能の完成度やユーザー体験よりも、技術的な成立性・制約条件・統合可否の確認が優先されます。例えば、以下のような目的でPoCが行われます。

  • 特定のAIアルゴリズムが必要な精度を達成できるか
  • 新しいAPI連携が想定通りに機能するか
  • ハードウェアやクラウド環境との整合性が取れるか
  • 法規制やセキュリティ要件を技術的にクリアできるか

また、PoCは社内外の関係者に「このアイデアは技術的に可能である」と示すための裏付けにもなるでしょう。意思決定の場では、PoCの結果がその後の予算承認・本格開発の可否に大きな影響を与えることが一般的です。

つまりPoCは、「つくるべきかどうか」を判断する前に、「つくれるかどうか」を確かめる工程であり、成功するプロジェクトの出発点として欠かせないプロセスなのです。

プロトタイプとは

プロトタイプとは

PoCで技術的な実現可能性が確認されたあとは、実際のユーザーにとってどのような体験になるのかを可視化する段階に入ります。

そこで重要になるのが「プロトタイプ」の作成です。

プロトタイプは、サービスやアプリのUI/UX(ユーザーインターフェース/体験)を具体的に検証するための試作モデルであり、ユーザーやステークホルダーとの認識を揃えるためにも欠かせない要素です。

ここでは、プロトタイプの定義とその役割、さらにUX/UI設計における実践的な活用方法を紹介します。

プロトタイプの定義と役割

プロトタイプとは、本開発に先立って製品の見た目や動き、体験を再現するために作成される「試作品」です。

紙に描いたワイヤーフレームから、クリック可能なモックアップ、簡易な動作確認アプリまで、その形式はさまざまです。

プロトタイプの主な目的

  • UI/UXの初期検証(使いやすさ、わかりやすさを確認)
  • ステークホルダー間の認識共有(完成品のイメージを揃える)
  • ユーザーテストの実施(早期にフィードバックを得る)
  • 開発工数の見積もり材料として活用

プロトタイプの種類

種類特徴利用シーン例
ペーパープロトタイプ手書きのワイヤーフレーム。最も簡易な形式初期アイデア出しやチーム内共有
ワイヤーフレームレイアウト構成のみ示した骨組み情報設計段階
モックアップデザインを反映した静的ビジュアルデザイン確認・ステークホルダー共有
インタラクティブプロトタイプ実際の操作が可能な試作品ユーザビリティテスト、投資家説明用

プロトタイプは「完成形の前段階」ではなく、「ユーザーの体験を検証するための手段」であることが重要なポイントです。

UX/UI設計での活用

プロトタイプは、UX(ユーザー体験)とUI(ユーザーインターフェース)を中心とした設計プロセスにおいて、非常に重要な役割を担います。最終製品をつくる前に、ユーザー視点での設計が適切かどうかを検証するために繰り返し使われます。

プロトタイプがUX/UI設計に貢献するポイント

  • 操作の流れを視覚化できる(ユーザーの導線を設計段階で確認)
  • ボタンやラベルの認識しやすさをテストできる
  • タスク完了までのストレスの有無を早期に洗い出せる
  • ユーザーインタビューやテストが具体的な体験ベースで可能

また、FigmaやAdobe XD、Sketch、InVisionなどのツールを用いることで、開発前に高い再現度のプロトタイプを簡単に作成できる環境が整っています。これにより、エンジニアとの認識齟齬も最小限に抑えられます。

PoC・プロトタイプ・MVPの違いを徹底比較

新しいプロダクトやサービスを開発する際、「PoC」「プロトタイプ」「MVP」は頻出する用語ですが、それぞれの目的や性質を混同してしまうと、開発の方向性を誤るリスクがあります。

これら3つは似て非なるものであり、それぞれ異なるフェーズで異なる目的を持ちます

ここでは、各フェーズの検証対象や成果物、関与するステークホルダーの違いについて体系的に整理しましょう。

検証フェーズ別の目的と対象

PoC・プロトタイプ・MVPは、検証する対象が段階的に異なります。

PoCは「技術的にできるか」、プロトタイプは「見た目や操作感はどうか」、MVPは「市場に通用するか」の検証を目的とします。

フェーズ主な目的検証対象検証方法
PoC技術的実現可能性の検証技術・アルゴリズムコード試作、環境テスト
プロトタイプユーザー体験の視覚化と検証UI/UX、操作フローモックアップ、ユーザーテスト
MVP仮説の市場検証実ユーザーの行動実サービス提供、利用分析

各フェーズの目的を正しく理解し使い分けることで、開発の失敗リスクを大幅に下げることができます。

開発期間・成果物・関係者の違い

開発に関わる期間、成果物の完成度、関係者の立ち位置も大きく異なります

それぞれの特性を知ることで、開発スケジュールや体制を最適に設計できるでしょう。

フェーズ開発期間目安主な成果物主な関係者
PoC数日〜数週間簡易コード、検証結果レポート技術チーム、経営層、研究開発部門
プロトタイプ1〜4週間UIデザイン、操作デモデザイナー、PM、ステークホルダー
MVP2週間〜2ヶ月実際に使える最小限の製品エンジニア、マーケ、実ユーザー

短期開発で得られる成果物と関与メンバーの違いを認識しておくことで、役割の重複や手戻りを防げます。

3つの役割をまとめた比較表

PoC・プロトタイプ・MVPの違いを一目で把握できるよう、下記に役割の違いを総括した比較表を示します。

項目PoCプロトタイプMVP
検証内容技術の実現性UX/UIの有効性市場ニーズの有無
完成度ごく一部の技術に限定見た目・体験に重点実用レベルの最低限構成
対象ユーザー技術者・経営判断者チーム内・一部ステークホルダー実際のエンドユーザー
成果の活用目的技術的GO/NO-GO判断意思決定・方針確認ユーザーの声を反映した製品進化の基盤
開発後の進路プロトタイプor中止MVPへ進行または設計見直しスケール開発 or ピボット・撤退判断

このように3つのフェーズには明確な違いがあり、それぞれの役割と価値を正確に把握することが、プロジェクト成功の鍵となります。

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MVP開発にかかる期間とコスト

MVP開発は、最小限の機能で仮説を検証するプロセスである一方、限られた時間と予算の中でどこまで作り込むかという判断が、成果を大きく左右します。

ここでは、MVPの一般的な開発期間やコスト相場を整理し、ノーコードやローコードといった手法の選択肢、そして限られたリソースを最大限に活用するための考え方について探っていきましょう。

期間の目安と開発ステップ

MVP開発の期間は、プロダクトの内容や体制によって異なるものの、一般的には1〜2ヶ月が標準的とされています。長すぎるとフィードバックサイクルが遅れ、短すぎると検証精度が落ちるため、バランスが重要です。

下記は、平均的なMVP開発のステップと期間の目安です。

ステップ内容期間目安
課題・仮説の明確化誰のどんな課題を解決するのかを定義1〜3日
機能要件の絞り込み最小限の価値提供に必要な機能を選定3〜5日
デザイン・プロトタイピングUI/UX設計、ワイヤーフレーム作成1〜2週間
MVP開発(ノーコード/開発含む)実際に製品を構築2〜6週間
テスト・初期ユーザー投入実運用前の動作確認とフィードバック収集1〜2週間

実務では、開発中にも学習と仮説修正が起こるため、期間に余白を持たせた設計が望ましいとされています。特にスタートアップでは、フェーズごとに「中間ゴール」を設定し、小刻みに検証を進める形式が効果的です。

コスト相場と開発パターン

MVP開発のコストは、プロダクトの複雑さ、開発手段(内製か外注か)、技術レベル、地域などにより大きく変動します。

下記に、代表的な開発パターンごとの費用相場をまとめました。

開発パターン内容説明コスト目安(税込)
ノーコードツール活用Bubble、Adaloなど。スピーディに画面構築可能約50〜150万円
ローコード開発プログラミングと自動化ツールを組み合わせて構築約150〜300万円
完全内製開発自社エンジニアチームで設計〜開発まで対応人件費に依存(変動大)
外注(国内ベンダー)要件定義・UI設計込みでフル対応約300〜800万円(中小案件)
外注(オフショア)ベトナム・インドなど海外パートナーと連携約200〜500万円

ノーコードを用いればコストと期間を圧縮できますが、拡張性や保守性には限界があるため、長期運用が前提のプロダクトでは慎重な判断が求められるでしょう。

効率的なリソース配分の考え方

限られた時間と予算の中で最大限の成果を得るには、開発リソースの配分戦略が極めて重要です。特に初期フェーズでは「何をつくらないか」の判断が成功を分けます。

効果的なリソース配分のポイント

  • 最小限のコア機能に集中する(Nice to have機能は後回し)
  • 仮説検証に直結しない要素にはリソースを割かない
  • 初期はノーコード/テンプレートを積極活用する
  • 小規模チームでの迅速な意思決定と柔軟な役割分担
  • ユーザーからの学びを重視し、分析・改善フェーズに時間を確保する

つまり、「完成度を追う」のではなく、学習の早さと柔軟性を最大化することがMVP開発における本質です。過度なこだわりや理想像は後のフェーズで反映すればよく、初期は「市場の声を聞く」ための土台作りに徹することが成功の鍵になります。

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GeNEEのMVP開発支援サービス

株式会社GeNEEは、新規サービス・新プロダクト立ち上げの初期段階からスケールまでを一貫して支援するMVP開発サービスを提供するです。企画構想の段階から伴走し、最小限のプロダクトを迅速に構築しながら、市場からのフィードバックを通じて仮説検証を繰り返すことで、より確度の高いサービス開発を実現します。

特徴的なのは、多職種のプロフェッショナルによるチーム体制です。ビジネスディレクター、UI/UXデザイナー、テックエンジニア、Webマーケターといった各分野の専門家が横断的に協力し、戦略から実装・運用まで一気通貫でサポートします。

GeNEEのMVP開発は、以下の4フェーズで構成されています。

フェーズ主な活動内容成果物例
① 課題抽出・企画ユーザー調査、コンセプト設計、価値仮説の構築サマリー資料、ビジュアル案
② MVP開発・価値検証プロトタイピング、UI/UX設計、動作可能な試作品MVP、実証実験資料
③ 本開発システム開発、仕様確定、プロダクト構築本番運用可能なアプリ・Web等
④ スケール支援機能追加、改善支援、継続的な成長施策の実行拡張可能な製品・サービス

さらに、ユーザー行動心理を基にしたサービス設計力もGeNEEの大きな強みです。

ユーザーインタビューや行動データから本質的な課題を抽出し、機能の優先順位を明確にしたうえで「キラー機能」の定義と検証を高速で回していきます。仮説→検証→改善のPDCAサイクルを高頻度で繰り返す設計手法により、確実に市場とプロダクトの接点を見出すことが可能です。

実際のプロジェクトでは、以下のようなミニマム体制が一般的です。

担当領域稼働目安(例)
ディレクター0.5人月 × 3ヶ月
UIデザイナー0.5人月 × 3ヶ月
エンジニア0.5人月 × 3ヶ月

このように、小規模ながら高機能なチーム構成で、コストを抑えつつスピーディな検証が可能です。プロトタイプ開発からMVP検証、スケール支援まで一気通貫で任せられるため、リソースが限られたスタートアップや新規事業開発部門にとって理想的なパートナーとなるでしょう。

MVP開発を成功させるためのポイント

MVP開発を成功させるためのポイント

MVPはただ「最小限の製品」をつくることが目的ではありません。ユーザーの本質的な課題を仮説ベースで捉え、素早く検証・改善するためのフレームワークです。そのためには、「何を誰のために」「どこまでつくるか」「どう検証するか」を適切に設計する必要があります。

ここでは、MVP開発を成功に導くために押さえておきたい3つの視点をご紹介します。

明確なターゲットと仮説の設定

MVP開発の出発点は、「誰に」「どんな価値を提供するか」を明確に定義することです。仮説が曖昧なままでは、いくら動くプロダクトをつくっても検証が成立しません。

成功するMVPの仮説設計に必要な視点

  • ターゲットユーザーの具体化(例:25〜35歳のリモートワーカー)
  • 解決すべき課題の明文化(例:日々のタスク管理が煩雑)
  • 価値提供の仮説(例:Slack連携の自動ToDo整理で業務効率化)

仮説は「正しいかどうか」よりも、検証可能かどうかが重要です。誰の、どんな行動が変われば仮説が成り立つのかを数値で定義できると、検証の精度が高まります。

実用的な最小構成の見極め

「最小限の構成」と聞くと、簡素な製品を思い浮かべがちですが、本当に必要なのは「ユーザーが価値を体験できる最低限の機能」です。単なる機能の削減ではなく、体験のコアに集中した設計が求められます。

要素検討ポイント
コア機能その機能だけで課題解決体験が成立するか?
オンボーディング初めてのユーザーでも使い方が理解できるか?
フィードバック取得手段改善のための声をどこで、どのように集めるか?

最小構成とは、「少ないけれど確実にユーザー価値が伝わる」状態を目指すことです。完成度ではなく「伝わり方」に重きを置くのが成功の鍵です。

フィードバックループの回し方

MVPの本質は「つくること」ではなく「学ぶこと」にあります。ユーザーの行動・声をもとに仮説を修正し、再設計につなげるループの構築が不可欠です。

効果的なフィードバックループの例

  • 定量データ:利用回数、離脱率、CV率など
  • 定性データ:インタビュー、アンケート、チャット履歴
  • 自動収集ツールの活用:Hotjar、Mixpanel、Google Analyticsなど
  • 改善頻度の設計:1〜2週間単位のスプリントで反映

学びを早く回すためには、「検証→気づき→改善」のサイクルを開発と並行で回す設計が必要です。単なる開発フローではなく、ユーザー理解を深め続ける経営戦略の一部でもあります。

よくある失敗例と回避策

MVP開発は、スピード感をもって市場に出し、ユーザーの反応から学習するための手法ですが、その本質を理解しないまま進めると「早く失敗する」どころか「正しく学べずに終わる」危険性もあります。

ここでは、MVP開発の現場で起こりがちな失敗例を3つに分類し、それぞれの具体的なリスクと回避策を見ていきましょう。

MVPと未完成品の混同

MVPを「とりあえず動く試作品」「粗くていい実験版」と誤解してしまうケースは非常に多く見られます。
しかし、ユーザーが価値を感じられないレベルでリリースしてしまうと、誤ったフィードバックを得るだけでなく、信頼を損ねる危険性もあります

状況リスク回避策
エラーが多い状態で見切り発車的にリリース技術的な安定性を最小限確保したうえで、動作検証を十分に行う
UIが不親切で、価値提供までユーザーがたどり着けない使い方がすぐ分かるUX設計とオンボーディングを重視する
「MVPだから粗くても仕方ない」と社内で品質を軽視している“最小限”であっても“完成度”は妥協しないマインドセットを共有する

MVPとは、価値提供の“核”に集中した製品であり、未完成品の言い訳ではありません。

「削る」ことよりも、「伝わる」ことに重きを置くのが成功の分かれ道です。

PoCで止まってしまうリスク

PoC(Proof of Concept)は技術的実現可能性を確認する重要なフェーズですが、PoCでの成功をゴールと勘違いし、その先のプロダクト化や市場検証に進めないまま終わってしまうケースが多くあります。

状況リスク回避策
「PoCで動いたから成功」と判断して開発を終えてしまうPoCの次に「プロトタイプ→MVP→市場投入」までのロードマップを明示する
社内の承認は取れたが、実ユーザーには何も試せていないPoC後は必ずユーザー接点を設け、価値の体験を検証する設計を組み込む
技術検証に満足して、事業性や体験設計が手つかず技術成果を「どんな価値を誰に届けるか」に変換するマッピング作業を行う

PoCはあくまで“作れる”ことの証明に過ぎず、“使われるかどうか”の検証は別次元の工程です。

PoCで得た技術をいかに価値に転換するかが、事業化の本当の出発点です。

ユーザーからの声を無視した改修

MVPを公開した後、ユーザーの反応やフィードバックを活かせず、開発チームの思い込みだけで改修を続けてしまうことも失敗の典型例です。

この状態では、どれだけ改善しても「本当の課題」には近づけません。

状況リスク回避策
ネガティブな声を過度に恐れて、機能や方針をぶらしてしまうあらかじめ軸となる仮説やゴールを明確にし、フィードバックの重みづけを設定する
ユーザーの要望をすべて取り入れ、開発が発散してしまう“誰の声か”を整理し、対象ユーザー層に合ったインサイトに絞る
定性的な声を「ノイズ」として処理し、社内主導で意思決定ユーザーインタビューや行動分析など、根拠ある検証手法をセットで用いる

ユーザーの声は「仕様書」ではありません。

その背後にあるニーズや行動心理を読み解き、仮説をアップデートするための“素材”として活用する視点が重要です。

MVP開発は“最小”から“最適”へ導くステップ

MVP開発は、単なる簡易版プロダクトの制作ではなく、市場に本当に求められる価値を見極めるための“仮説検証のプロセス”です。PoCやプロトタイプといった他のフェーズと正しく使い分け、最小限の構成で最大限の学びを得ることで、無駄な投資を避けながら確実に次の一手を導き出せます。

スピード感を持って市場に出し、実際のユーザーから得られる“リアルな声”を起点に製品を進化させていく。

その連続が、やがてプロダクトと市場の確かな接点をつくり、事業の持続的な成長へとつながります。

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監修者のコメント
監修者のコメント
株式会社GeNEE 飯嶋シロ
慶應義塾大学卒業後、日系シンクタンクにてクラウドエンジニアとしてシステム開発に従事。その後、金融市場のデータ分析や地方銀行向けITコンサルティングを経験。さらに、EコマースではグローバルECを運用する大企業の企画部門に所属し、ECプラットフォームの戦略立案等を経験。現在は、IT・DX・クラウド・AI・データ活用・サイバーセキュリティなど、幅広いテーマでテック系の記事執筆・監修者として活躍している。
執筆を通じて、MVPという開発手法の奥深さと、その真価を伝える難しさを実感しました。PoCやプロトタイプと混同されやすいMVPの位置づけを明確にすることは、プロダクト開発に携わるすべての人にとって重要なステップです。

特に印象的だったのは、成功事例や失敗例を深掘りしていく中で、MVPの本質が「つくること」ではなく「学ぶこと」にあるという点でした。限られたリソースの中で最大の価値を生み出すには、単に早く作るのではなく、どんな仮説をどう検証し、どう軌道修正するかという戦略が問われます。

この記事が、新規事業やスタートアップ開発に取り組む方々にとって、迷わず最初の一歩を踏み出せる指針となれば幸いです。プロダクトが“最小”から“最適”へ育っていく、その第一歩に寄り添えるような内容を目指しました。
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