
目次
ビジネス環境が急速に変化する中、マーケティング分野においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が高まっています。
デジタル技術を活用して業務効率や顧客体験を向上させるマーケティングDXは、今や競争力強化に欠かせない取り組みです。
しかし、DXを成功させるには、単にツールを導入するだけでなく、正しい理解と実践が求められます。
本記事では、マーケティングDXの基本概念から具体的な導入事例と成功に導くためのポイントまで、詳しく解説します。

マーケティングDXとは
まず、マーケティングDXの基本概念と必要な理由について解説します。
マーケティングDXとはそもそも何か
マーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してマーケティングの業務やプロセスを根本から見直し、顧客体験の向上や業務効率化を目指す取り組みのことです。
従来の感覚や経験に頼った手法ではなく、データ分析やAIツールなどを活用することで、より精度の高い施策や意思決定が可能になります。
顧客の行動データをもとにパーソナライズされた広告を配信したり、購買傾向を分析して商品開発に活かしたりすることがマーケティングDXの例として挙げられます。
マーケティングDXは単なるIT化ではなく、企業の競争力を高める重要な戦略の1つとして注目されています。
マーケティングDXが必要な理由
近年、消費者の行動や価値観は大きく変化しており、従来のマーケティング手法では対応が難しくなっています。
特に、スマートフォンやSNSの普及により、情報収集や購買行動はリアルタイムかつ多様化し、企業側もスピーディで柔軟な対応が求められるようになりました。
また、市場には類似の商品やサービスがあふれており、差別化が難しくなっています。
こうした環境下において、顧客のニーズを正確に把握し、最適なアプローチを行うためには、データに基づいた戦略設計と、それを実現するためのデジタル技術の導入が不可欠です。
マーケティングDXは、単に業務を効率化するだけでなく、企業が変化に強い組織へと進化するための基盤でもあります。
これからの競争環境で生き残るために、多くの企業にとってマーケティングDXは避けて通れない取り組みといえるでしょう。

マーケティングDXの効果
企業がマーケティングDXに取り組むことで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。主な効果を4つ紹介します。
・業務効率や生産性が向上する
・データに基づいた意思決定ができる
・顧客ごとにパーソナライズされた商品の開発・提供に繋がる
・新規顧客の開拓に繋がる
業務効率や生産性が向上する
マーケティングDXの導入により、日々の業務を自動化・効率化することができます。
たとえば、手作業で行っていた顧客データの集計やレポート作成、キャンペーンの効果測定などは、デジタルツールを活用すれば自動で処理され、人的ミスの削減にも効果的です。
また、部門間でリアルタイムに情報を共有できるようなるため、社内の連携がスムーズになり、意思決定のスピードも早まります。
毎日のルーティン業務にかける時間を減らすことで、企画や戦略立案など、より創造的なコア業務に集中できる環境が整うでしょう。
このように、マーケティングDXは業務効率や生産性の向上に効果的であり、結果として企業全体の競争力強化に間違いなく繋がります。
データに基づいた意思決定ができる
マーケティングDXでは、顧客の行動履歴や購買傾向、広告の反応といった多様なデータの収集を行います。
これにより、従来の経験や勘に頼った判断ではなく、客観的かつ根拠に基づいたマーケティング戦略の立案が可能です。
たとえば、売上の高い商品や反応率の高い広告を特定し、効果的なチャネルやメッセージを導き出すことができます。
また、DataBricks(データブリックス)やTableau(タブロー)ソフトウェア等をアナリティクスツールとして活用することで、リアルタイムでの状況把握、全社横断的/一部の部門を限定する形式でのデータ接続も可能となり、変化に柔軟に対応できる体制が整うでしょう。
こうしたデータドリブンなアプローチは、リスクを抑えながら成果を最大化するために欠かせない視点であり、企業の意思決定力を飛躍的に高めます。
顧客ごとにパーソナライズされた商品の開発・提供に繋がる
マーケティングDXの活用によって、顧客一人ひとりの思考や行動履歴を細かく分析し、よりパーソナライズされた商品やサービスの開発ができます。
たとえば、ECサイトでの閲覧履歴や購入傾向をもとに、おすすめ商品を自動で表示したり、特定の顧客層に向けた限定キャンペーンを配信したりといった施策が実現可能です。
また、ユーザーの反応をリアルタイムで把握できるため、商品やサービスを継続的に改善するためのPDCAサイクルもスムーズに回せるようになります。
こうしたパーソナライズされた商品の開発・提供は、顧客満足度の向上やロイヤルティの強化に直結し、長期的なファン作りや継続的な売上の確保にも効果的です。
新規顧客の開拓に繋がる
マーケティングDXは、従来リーチできなかった層へのアプローチを可能にし、新規顧客の獲得にも大きな効果を発揮します。
たとえば、SNS広告や検索連動型広告、インフルエンサーとの連携といったデジタルチャネルを活用すれば、ニーズの高い層に的確に情報を届けることが可能です。
また、Webサイトやアプリなどのユーザー行動データを分析することで、どの層がどのようなきっかけで関心を持ったのかを把握し、施策の最適化に繋げることができます。
さらに、マーケティング・オートメーションツールを活用すれば、見込み顧客との継続的な接点を保ち、購入までのプロセスをしっかりと作り込むことができます。
新たな市場への進出やブランド認知の拡大を図る上で、マーケティングDXは強力な武器になります。

マーケティングDXに成功した企業事例
続いて、実際にマーケティングDXに成功した企業の事例を5つ紹介します。
・株式会社リコー|グローバルマーケティング基盤の統一
・日清食品ホールディングス株式会社|生成AIの全社活用
・RIZAP株式会社|データ活用による事業拡大
・アシックス商事株式会社|顧客データでDM強化
・株式会社後藤組|ゼイイン参加型のDX推進
株式会社リコー
株式会社リコーでは以前、アジア太平洋地域内にある各国のマーケティングチームが異なるツールを使用しており、協業が困難だったことが課題でした。
そこで、ソーシャルメディア管理からPR、ブランドモニタリングまでを網羅するMeltwaterを導入。全地域で統一されたプラットフォームを活用することで、情報共有と業務の標準化を実現しました。
これにより、各国の顧客理解が深まり、効果的な施策立案や一貫したアプローチが可能に。データドリブンな意思決定を支える基盤として、Meltwaterは株式会社リコーのDXを大きく前進させています。
日清食品ホールディングス株式会社
日清食品ホールディングス株式会社では、経営トップ自らが生成AIの有用性に着目し、全社的な活用を推進しました。
その姿勢を受けて開発されたのが、独自の社内システム「NISSIN AI-chat」です。各部門が業務に合った使い方を模索し、150件を超えるプロンプトテンプレートを共有することにより、現場での活用が急速に進みました。
特に、営業部門やマーケティング部門では実務への応用が進み、業務効率や成果の向上に直結しています。
現在では社員の3割がAIを活用しており、今後は既存システムとの連携も視野に入れた業務改革が進められています。トップダウンとボトムアップがうまく融合しているDXの好例の1つです。
RIZAP株式会社
RIZAP株式会社が展開する「chocoZAP(チョコザップ)」は、低価格・無人型のフィットネスジムです。急成長を遂げる理由の1つとして、マーケティングDXの徹底が挙げられます。
RIZAP社が自社で開発した専用アプリや店舗設置のAIカメラから収集したユーザーデータを活用し、利用状況や行動傾向を分析。マーケティングはもちろん、サービス改善や経営判断にも分析結果は反映されています。
こうしたデータドリブンなアプローチにより、約1年10ヶ月で会員数120万人超、全国1,500店舗超を実現。マーケティングと経営のDXを融合させた成功事例として高く評価されています。
アシックス商事株式会社
アシックス商事株式会社は、ウォーキングシューズ「ぺダラ」の40周年を機に、マーケティングDXの一環として顧客データを活用したDM施策に取り組みました。
富士フイルムビジネスイノベーションの「Marketing Cockpit」を活用し、約7千人の顧客データを統合・分析。優良顧客とその他をセグメントし、それぞれに最適化された紙DMを送付しました。
ブランドストーリーや商品の魅力を伝えるクリエイティブと、再購入を促すクーポンを組み合わせたことで、優良顧客の購入率は41.2%を記録しました。DM施策は、全日本DM大賞で金賞を受賞するなど高く評価されています。
データドリブンなアプローチで顧客エンゲージメントを高めた、マーケティングDXの成功事例です。
株式会社後藤組
株式会社後藤組は、中小建設企業の枠を超え、マーケティングDXを含むデータドリブン経営に挑戦しています。
担い手不足という業界課題に対し、若手人材の定着・育成を軸にDX改革を推進。社内の業務システムを一から自社で作り上げ、データを可視化して意思決定の質を向上させています。
全社員がアプリ開発やデータ分析に関わる「全員DX」を掲げ、社内大会や資格制度でDX人材を育成。これにより、残業時間は21.1%削減され、生産性も向上しました。
また、蓄積された業務データを活用したBtoBマーケティングにも着手し、同業者向けセミナーの実施やアプリ販売の検討など地域への波及にも貢献。マーケティングと業務改革を両輪としたDXモデルを確立しています。

マーケティングDXを成功させる3つのポイント
マーケティングDXを成功させるために、押さえておきたいポイントについて解説します。
・経営陣の理解と協力を得る
・目的を明確にし社内で共有する
・必ず現場が使いやすいものを選ぶという精神
経営陣の理解と協力を得る
マーケティングDXを成功させるには、経営層の理解と協力を得ることが欠かせません。
DX化には時間やコストがかかる上、従業員の業務プロセスを大きく見直す必要があるため、現場の努力だけでは限界があることもしばしば見受けられます。
トップがマーケティングDXの必要性を理解し、経営課題として取り組む姿勢を示すことで、現場の意識も変わり、会社全体としての推進がスムーズになります。
また、経営群が率先して判断を行うことで、必要なリソースや人材の確保もしやすくなるでしょう。
DXは一部門だけの取り組みではなく、組織全体を巻き込んだデジタル変革です。スムーズなスタートを切るためにも、経営者の理解と協力を得るようにしましょう。
目的を明確にし社内で共有する
マーケティングDXを成功させるには、「なぜ行うのか」、「どんな成果を目指すのか」といった目的を明確にすることが大切です。
デジタルツールを導入しても、目的が曖昧なままでは、現場の混乱を招いたり、十分な成果が得られなかったりする恐れがあります。
また、DX推進の意図や目標が決まったら、社内全体で共有し、共通のゴールに向かって取り組む意識を育てることが欠かせません。
部署ごとに方向性がバラバラになってしまうと、返って業務が非効率になることもあるので注意しましょう。
全員が同じ方向を向いて進める体制を整えることで、DXの取り組みが持続的な成果につながる基盤を作ることができます。
必ず現場が使いやすいものを選ぶという精神
マーケティングDXを円滑に進めるためには、現場で無理なく使えるものを選ぶことが大切です。
操作が複雑だったり、現場にフィットしないパッケージやデジタルツールを選んでしまうと、導入しても活用が進まず、逆に業務の足かせになることも多くの企業で問題化されています。
選定においては、機能性だけでなく、ユーザー視点の使いやすさ、UI/UX面、サポート体制も重視しましょう。
たとえば、SNSやWeb上の情報を収集・分析し、顧客の声を可視化できるMeltwaterのソーシャルリスニングツールは使いやすいプラットフォームのひとつと言えるでしょう。
ソーシャルリスニングツールは、顧客の声や市場トレンドをリアルタイムで収集・分析し、マーケティング戦略に活用できる手段です。ブランド評価や競合分析を通じて戦略を最適化し、ターゲット層の理解を深めます。
さらに、キャンペーン効果の測定や意思決定の迅速化を支援し、パーソナライズされた施策を実施するために不可欠です。
現場に馴染む使いやすいツールを選ぶことで、マーケティングDXをより確実に定着させていくことが可能になります。もし市販の汎用的なパッケージなどでは自社業務にフィットしない場合には時間をかけて自社の現場スタッフに合うシステムやアプリ、ツールを開発するといった選択も非常に重要な経営判断になります。

マーケティングDXを進めるにあたっての注意すべき点
実際にマーケティングDXを進めるにあたって注意すべき点を、よくある失敗事例とともに紹介します。
・DXの目的が曖昧なまま進めてしまう
・現場の理解とスキル不足を軽視する
・経営陣が短期的な成果を求めすぎる
DXの目的が曖昧なまま進めてしまう
マーケティングDXを進める上での最大の落とし穴は、DXの目的が曖昧なままスタートしてしまうことです。
「デジタルに強くなろう」といった理由で社内でツール導入を進めたとしても、具体的な目標設定がないと各部署がバラバラに施策を展開してしまう可能性があります。すると、データが分散し、必要な時に連携しづらくなり、返って作業効率が悪化してしまいます。
このような失敗を防ぐには、DXの目的を事前に明確にし、全社員で共有することが不可欠です。
たとえば、「顧客データを一元管理して営業効率を上げる」など、具体的なゴールを設定し、それに紐づく施策を選択していくことが重要です。
目的がないまま手段だけ進めると、DXの取り組みが目的を失い、形だけの活動になってしまうので注意しましょう。
現場の理解とスキル不足を軽視する
マーケティングDXを成功させるには、現場社員の理解とスキルが不可欠です。これらを軽視すると大きなつまずきにつながるので注意しなければなりません。
たとえば、最新のMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入しても、現場が使い方を理解していなければ、ほとんどの機能が放置される事態になります。さらに、ツール導入にかけたコストにより、経営層からの批判も集まりかねません。
このような失敗を防ぐためには、ツール導入前に現場への丁寧な説明や研修を行い、実際に使う人がDXの取り組みの大切さをしっかり理解することが重要です。
小さな成功体験を積み重ねながら、現場社員のスキルと意識を高める地道な取り組みが、結果的にDXの定着と成果につながります。
経営陣が短期的な成果を求めすぎる
マーケティングDXは、本来中長期な視点で取り組むべきプロジェクトです。しかし、短期的な成果を焦った結果、失敗してしまうケースが多く見られます。
たとえば、「半年でリード数を倍増させたい」という無理な目標を掲げ、急ごしらえでチャットボットや広告配信ツールを導入したとします。しかし、現場の運用体制が整っていなければ、施策は空回りして大きなコストだけが残ってしまうでしょう。
このような失敗を防ぐには、スモールスタートを意識し、まずは小規模な施策で結果検証を行いながら、徐々にスケールアップする姿勢が大切です。
DXは「急がば回れ」であり、早く成果を出そうとすると結果的に遠回りになることがあるので注意しましょう。

まとめ:マーケティングDXとは?企業事例と成功させるためのポイント
今回は、マーケティングDXの概要や注目される背景、成功させるためのポイントについて紹介しました。
マーケティングDXを効果的に進めるためには、目的の明確化や社内体制の整備、使いやすいツールの選定が欠かせません。
また、経営層から現場まで、組織全体で取り組む意識を持つことが何よりも肝要です。変化の激しい時代に対応し、持続的な成長を実現するためにも、ぜひこれを機にマーケティングDXの推進に取り組んでみてください。
マーケティングに関する参考サイトは以下の通りとなります。
「4P分析ガイド:効果的なマーケティングのための基礎」はこちら
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コンテンツマーケティングディレクター
慶應義塾大学卒業後、日系シンクタンク(三菱総合研究所)にてクラウドエンジニアとしてシステム開発に従事。
その後、金融市場のデータ分析や地方銀行向けITコンサルティングを経験。さらに、Eコマースでは大手EC会社(楽天)の企画部門に所属し、ECプラットフォームの戦略立案等を経験。
現在は、IT・DX・クラウド・AI・データ活用・サイバーセキュリティなど、幅広いテーマでテック系の記事執筆・監修者として活躍している。
