• 株式会社GeNEEトップページ
  • お役立ち情報
  • 企業が押さえるべき生成AIリスク11選と対策を解説【2026年版】
公開日:2026.07.13 更新日:2026.08.17

企業が押さえるべき生成AIリスク11選と対策を解説【2026年版】

飯嶋シロ
監修者
コンテンツマーケティングディレクター 飯嶋シロ
企業が押さえるべき生成AIリスク11選と対策を解説【2026年版】

ChatGPTをはじめとする生成AIの業務利用が当たり前になった今、企業が直面しているのは「使うかどうか」ではなく、「どう管理しながら使うか」という課題です。うっかり入力した機密情報が社外に渡る、もっともらしい誤情報が意思決定に紛れ込む、外部文書に仕込まれた指示にAIが従ってしまう——生成AIのリスクは、従来のITリスクとは質が異なります。

本記事では、システム・アプリ開発会社として数多くのAI開発・AI組込プロジェクトを手掛けるGeNEEが、生成AIのリスクを「入力・出力・攻撃・組織」の4領域・11項目に整理し、そのまま社内展開に使える粒度で対策を解説します。

生成AIのリスク全体像|4つの領域で整理する

生成AIのリスクは「情報漏えい」「著作権」など個別の名前で語られがちですが、断片的に対処すると必ず抜け漏れが生じます。まず全体像を地図として持つことが、リスク管理の出発点です。

なぜ従来のセキュリティ対策だけでは防げないのか

多くの企業はすでにファイアウォール、EDR、WAFといったセキュリティ対策を導入しています。それでも生成AIに特化した対策が必要なのは、生成AIのリスクの多くが「攻撃」ではなく「正規の利用」の中で発生するためです。

従業員が業務効率化のために議事録を貼り付ける。それ自体は正規の操作であり、マルウェアも不正アクセスも発生していません。しかし入力された情報はサービス提供者のサーバーに渡り、設定によっては学習に利用されます。従来型のセキュリティ製品は、この「正しい手順で行われる情報流出」を検知できません。

さらに、生成AIは自然言語を確率的に解釈して動作するため、挙動を固定的なルールで制約しきれないという特性があります。プロンプトインジェクション(後述)のように、コードの脆弱性ではなく「言語の解釈」を突く攻撃は、従来のセキュリティの想定外です。だからこそ、生成AIの特性を踏まえたリスクの整理と、専用の管理策が必要になります。

リスクマップ:入力・出力・攻撃・組織の4領域【一覧表】

本記事では、生成AIのリスクを「どこで発生するか」という起点で4つの領域に分類します。対策の担い手(現場・管理部門・システム)が領域ごとに異なるため、この切り口で整理すると打ち手に直結します。

領域リスク概要主な対策(後述)
入力機密情報・個人情報の漏えい入力データが学習利用・ログ保存により社外に渡る対策1・2
①入力入力データの二次利用利用規約次第で入力が想定外の目的に使われる対策2
出力ハルシネーション事実と異なる情報がもっともらしく生成される対策3
②出力著作権・知的財産権の侵害生成物が既存の著作物と類似し権利侵害となる対策3
②出力バイアス・不適切表現差別的・偏った表現が成果物に混入する対策3
攻撃・悪用プロンプトインジェクション文書等に仕込まれた指示でAIの挙動が乗っ取られる対策2・5+設計
③攻撃・悪用ディープフェイク・なりすまし偽の音声・映像による詐欺や風評被害対策4
③攻撃・悪用サイバー攻撃への悪用フィッシング文面やマルウェアの生成に使われる対策4
③攻撃・悪用RAG・AIエージェント連携の攻撃面拡大社内データ連携やツール実行権限が狙われる設計(後述)
組織・運用シャドーAI会社が把握しない野良利用が統制外で広がる対策1・2・5
④組織・運用法規制・コンプライアンス国内外の規制強化への対応漏れ対策1+継続監視

以下、領域ごとに各リスクの中身を見ていきます。

入力に潜むリスク|情報が「手を離れる」瞬間

生成AI利用における事故の入口は、ほとんどの場合「入力」です。プロンプトに情報を貼り付けた瞬間、その情報は自社の管理下を離れます。

機密情報・個人情報の漏えい(学習利用とログ保存の2経路)

情報漏えいと聞くと「ハッキングされて盗まれる」イメージを持ちがちですが、生成AIにおける漏えい経路は主に2つあり、いずれも通常利用の延長線上にあります。

1つ目は、AIモデルへの学習利用です。入力した情報がモデルの学習に使われると、その内容が他の利用者への回答に反映される可能性が生まれます。無料プランや個人向けプランでは、入力データが学習・品質改善に利用される設定がデフォルトになっているサービスも少なくありません。

2つ目は、サービス提供者側のログ保存です。多くの事業者は悪用防止等の目的で入力内容を一定期間保存しています。学習に使われなくても、保存されたログが事業者側の障害・不正・外部攻撃によって流出するリスクはゼロではありません。実際、過去にはチャット履歴の一部が他ユーザーに表示される不具合も発生しています。

また、個人情報を含むデータを本人の同意なく生成AIサービスに入力し、それが利用目的の範囲を超えて取り扱われる場合、個人情報保護法に抵触するおそれがある点にも注意が必要です。「便利だから」で顧客名簿を要約させる行為は、効率化ではなくコンプライアンス違反の入口になり得ます。

入力データの二次利用・利用規約のリスク

見落とされがちなのが、「今すぐ漏れるわけではないが、入力した時点で情報が自社の意図を離れる」というリスクです。入力データの保持期間、第三者提供の有無、学習利用の可否はサービスと契約プランによって大きく異なり、同じサービスでも無料プランと法人プラン・API利用ではデータの扱いがまったく違うケースが一般的です。

利用規約を確認しないまま業務利用を始めると、「想定外の期間データが保持されていた」「再委託先に解析されていた」といった齟齬が後から発覚し、顧客への説明責任を果たせない事態になりかねません。確認すべき具体的な契約項目は後述の対策2で整理します。

出力に潜むリスク|「それらしい嘘」と権利侵害

入力を厳格に管理しても、出力側のリスクは残ります。生成AIの出力は流暢で説得力があるからこそ、誤りや権利問題が混入していても見逃されやすいのが厄介な点です。

ハルシネーション(誤情報の生成)

ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる情報をもっともらしく生成する現象です。学習データが正確であっても、生成AIは確率的に文章を組み立てる仕組み上、誤った出力を完全には避けられません。

実務で特に誤りが混入しやすいのは、次の領域です。

  • 数値・統計:桁や集計条件がずれる、出典が曖昧になる
  • 法令・規制:改正が反映されない、条文番号や要件を取り違える
  • 固有名詞・仕様:製品名、機能、日付、人物名の誤り
  • 引用・出典:実在しないURLや文献を提示する

社内の下書きに使う分には被害は限定的ですが、プレスリリース、提案書、顧客対応メールなど社外に出る成果物に混入すると後戻りができません。誤った案内による契約トラブルや信用低下に直結します。

著作権・知的財産権の侵害

生成AIの出力が既存の著作物と酷似していた場合、著作権侵害となるおそれがあります。侵害の判断では、既存の著作物に接して作られたかという「依拠性」と、表現が似ているかという「類似性」が基準になります。特定の作家の作品名をプロンプトで指定したり、他人の著作物を入力して類似物を出力させたりする使い方は、依拠性が認められやすく危険です。

なお、日本の著作権法第30条の4では、AIの学習段階における著作物の利用は、著作権者の利益を不当に害する場合を除き原則適法とされています。ただしこれは「学習」に関する規定であり、「生成・利用」段階の侵害を免責するものではありません。「商用利用可」と謳うサービスであっても、個々の出力が他者の権利を侵害しないことを保証しているわけではない点は、社内で正しく共有しておくべきです。

バイアス・不適切表現の混入

生成AIは学習データに含まれる社会的な偏りを反映し、性別・人種・年齢などに関する偏った表現や差別的な言い回しを出力することがあります。たとえばAIに下書きさせた求人広告や広報文に無自覚なバイアスが混入し、そのまま公開されれば、炎上や企業イメージの毀損につながります。

これは倫理の問題であると同時に、レビューなしの公開を許す業務フローの問題です。出力の検証プロセス(対策3)で機械的に食い止める設計が求められます。

外部からの攻撃・悪用リスク|AIそのものが狙われる

生成AIは利用者がリスクを生むだけでなく、AI自体が攻撃の対象・道具になります。この領域は従来のセキュリティ知識だけでは対応しきれず、上位対策の中心が「使い方の注意」から「システム設計」に移るのが特徴です。

プロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションとは、入力テキストの中に悪意ある指示を紛れ込ませ、AIの挙動を不正に操作する攻撃です。「これまでの指示をすべて忘れて」といった直接的な指示でシステム側の制約を回避させる手口のほか、要約対象のWebページや添付ファイルの中に人間には見えにくい形で指示を埋め込み、読み込んだAIに実行させる「間接プロンプトインジェクション」が深刻な脅威になっています。

SQLインジェクションのようにコードの欠陥を突くのではなく、AIの言語解釈そのものを悪用するため、根本的な防御が難しいのが実情です。特にAIが社内データへのアクセス権やメール送信などの実行権限を持つ構成では、「文書を要約させたつもりが、文書内の隠れた指示によって機密情報を外部送信させられる」といった被害が現実に起こり得ます。

ディープフェイク・なりすまし詐欺

画像・音声生成AIの進化により、実在の人物の顔や声を本物と区別がつかない精度で模倣する「ディープフェイク」の作成が容易になりました。企業にとって現実的な脅威は、経営者や取引先になりすました音声・映像による送金指示詐欺(ビジネスメール詐欺の高度化)や、偽の企業声明・偽プレスリリースによる風評被害・株価操縦です。

「声が本人だったから」「ビデオ会議で顔を確認したから」という従来の本人確認が通用しなくなりつつあり、重要な指示には複数経路での確認を義務付けるなど、業務プロセス側の見直しが必要になっています。

サイバー攻撃への悪用(フィッシング・マルウェア生成)

生成AIは攻撃者の生産性も引き上げます。不自然な日本語で見分けられた従来のフィッシングメールは、生成AIによって流暢かつ標的に合わせた文面へと高度化しました。マルウェアのコード作成を支援させる悪用や、犯罪利用を前提に設計されたAIツールの登場も報告されています。

自社が生成AIを使うかどうかに関わらず、攻撃側がAIを使う時代への備えとして、従業員のフィッシング耐性訓練や多要素認証などの基本的なセキュリティ対策の重要性がむしろ増しています。

RAG・AIエージェント連携で拡大する攻撃面

2026年現在、企業のAI活用は「チャット画面で質問する」段階から、社内データと連携させ(RAG)、ツールを実行させる(AIエージェント)段階へ移行しています。活用が深まるほど、攻撃者にとっての狙いどころも増える点に注意が必要です。

  • 参照データの汚染:RAGが参照する社内ナレッジや外部データに誤情報・悪意ある指示を混入させ、出力を歪める
  • 権限の悪用:メール送信・ファイル操作などの実行権限を持つエージェントが、間接プロンプトインジェクションによって攻撃の実行役にされる
  • 外部コンポーネント経由の侵害:利用するモデル、プラグイン、外部APIといったサプライチェーンの脆弱性を継承する

「外部の文書を取り込む」「社内データに接続している」「ツールを実行できる」という3条件が重なる構成は、利便性と引き換えに危険度が跳ね上がります。この領域のリスクは利用ルールでは防ぎきれず、権限設計と連携範囲の最小化というシステム設計の問題になります(後述の開発会社の視点で詳しく解説します)。

関連記事:AIエージェントとは?仕組み・生成AIとの違い・活用事例からおすすめの選び方まで徹底解説

RAGやAIエージェントを安全に運用するには、Gateway・Agent Runtime・Knowledge層それぞれに権限と評価を組み込んだアーキテクチャ設計が前提になります。AIネイティブ企業がこれをどう構造化しているかはこちらで解説しています。
AIネイティブ企業はシステムアーキテクチャをどう設計しているのかを見る(無料DL)

組織・運用のリスク|ルール不在が事故を生む

最後の領域は、技術ではなく組織側に起因するリスクです。個々のリスクへの対策を積み上げても、組織としての統制が欠けていれば事故は防げません。

シャドーAI(野良利用)——「禁止」が逆にリスクを高める理由

シャドーAIとは、会社が把握・管理していない環境で従業員が生成AIを業務利用している状態を指します。リスクを恐れて生成AIを全面禁止にした企業ほど、この問題に直面しやすいのが実情です。

禁止しても「早く終わらせたい」「少しだけ試したい」という現場のニーズは消えません。結果として、個人アカウントの無料プランという最もデータの扱いが緩い環境で、会社の与り知らないまま機密情報が入力されるという最悪の構図が生まれます。ログも残らないため、事故が起きても原因追跡すらできません。

「禁止によって利用をゼロにする」のではなく、「安全に使える環境を会社が用意し、利用を見える化する」ほうが、統制としても現実的です。これが本記事の対策編を貫く基本方針でもあります。

法規制・コンプライアンス動向(EU AI法・国内指針)

生成AIに対する規制は世界的に強化が進んでいます。EUではAIを包括的に規制する「AI法(AI Act)」が成立し、段階的に適用が始まっています。リスクの高いAI利用への義務付けを中心とした枠組みで、EU域内にサービスを提供する日本企業にも適用され得るため、グローバル展開する企業は対応状況の確認が必須です。

国内でも、政府によるAI事業者向けガイドラインの整備や、著作権・個人情報保護をめぐる議論が継続しており、ルールは今も動いています。一度ガイドラインを作って終わりではなく、法規制の動向を定期的にウォッチし、社内ルールに反映し続ける運用が求められます。

関連資料:AIガバナンス・AIセキュリティの実践|シャドーAI対策の4ステップと経営が向き合う統制論点を解説(無料DL)

生成AIのリスク対策|「禁止」ではなく「管理」の5ステップ

ここからは対策編です。ポイントは、場当たり的に怖いものから潰すのではなく、ルール(対策1)→環境(対策2)→プロセス(対策3)→人(対策4)→監視(対策5)の順に、統制の土台から積み上げることです。

対策1:利用ガイドラインの策定(情報区分×入力可否マトリクス)

ガイドラインの目的は禁止事項を並べることではなく、現場が迷わず判断できる線引きを示すことです。核になるのは、情報区分ごとの入力可否の明確化です。

情報区分入力可否条件・例外
個人情報(氏名・連絡先・顧客データ等)原則禁止業務上不可欠な場合は匿名化+承認フローを必須とする
機密情報(未公開の製品・経営情報等)原則禁止会社指定の学習オフ環境のみ、必要最小限に限り可
顧客・契約情報原則禁止契約上の守秘条項を確認のうえ情報管理部門の指針に従う
社内一般情報条件付き可会社管理アカウントでの利用に限る
公開情報出力の正確性・権利面の確認は必須

あわせて、生成物の取り扱い(ファクトチェック義務、著作権確認、社外公開の承認基準)、利用可能なツールの指定、インシデント発生時の報告フローを明文化します。既存の情報管理規程との整合を取り、生成AIだけ「別ルール」にしないことも形骸化を防ぐポイントです。

対策2:安全な利用環境の整備(法人プラン・API・契約チェック3項目)

ルールを作っても、環境が個人アカウント任せでは守られません。会社管理のアカウントで使える生成AI環境を用意し、「ここを使えばよい」という安全な導線を示すことが、シャドーAI対策を含めた最大の予防策になります。

法人向けプランやAPI利用では、入力データがデフォルトで学習に使われない、管理コンソールでアカウントと利用状況を一元管理できるなど、個人向けプランと統制のレベルが大きく異なります。ツール・プランの選定時には、最低限次の3項目を契約・規約で確認してください。

  1. 学習利用の可否:入力が学習・品質改善に使われない契約・設定が可能か
  2. データ保持期間:入力・出力・ログがどの程度保存されるか、自社の削除要件を満たせるか
  3. 第三者提供の有無:再委託・外部提供・解析目的の利用がないか、範囲は明確か

対策3:出力の検証フロー(ファクトチェック・権利確認の標準化)

ハルシネーション・著作権・バイアスという出力側のリスクは、「注意して使いましょう」では防げません。成果物が社外に出る前に必ず検証を通る業務フローとして標準化します。

具体的には、①数値・法令・固有名詞・出典など誤りやすい箇所の一次情報照合、②既存著作物との類似チェックと商用利用条件の確認、③不適切表現の観点レビュー、を公開前の必須工程として定義し、重要度の高い成果物にはダブルチェックを義務付けます。AIに根拠や出典を出力させ、検証しやすい形で受け取る運用も有効です。最終責任はAIではなく組織と人間に残る——この前提をフローの形で担保することが目的です。

対策4:従業員教育とリテラシー向上

教育の目的は従業員を怖がらせることではなく、安全に使える状態を維持することです。抽象的な注意喚起よりも、現場がやりがちな行動に紐づけた具体例で伝えるほうが定着します。「翻訳のために契約書の原文を貼ったら何が起きるか」「議事録を要約させる前にどこを削るか」「社外向けFAQに載せる前に何を確認するか」といったシーン起点の研修に加え、ディープフェイク詐欺やフィッシングなど攻撃側のAI悪用への警戒も教育範囲に含めます。ヒヤリハット事例の定期共有で、ルールの風化を防ぎましょう。

対策5:ログ監視と利用状況の可視化

最後の柱は、「誰が・いつ・何のために生成AIを使ったか」を記録し、見える状態にすることです。ログには二段の効果があります。事前には、機密らしき文章の大量入力や普段と異なる利用パターンといった危険の兆候を早期に検知できます。事後には、万一事故が起きた際に原因を特定し、具体的な再発防止策につなげられます。

さらに、利用状況が見えると「どの部門がどんな用途で使っているか」「どこで判断に迷いが生じているか」が分かり、闇雲に禁止を増やすのではなく、より便利で安全な使い方を提案する材料になります。監視は締め付けではなく、活用を広げるための基盤です。

開発会社の視点|AIを業務システムに「組み込む」ときのリスク設計

ここまでの対策は、主に既成の生成AIサービスを「利用する」企業向けのものでした。しかし2026年現在、多くの企業が次の段階——生成AIを自社の業務システムに組み込む段階——に進んでいます。この段階のリスク管理は利用ルールの話ではなく、設計の話になります。システム開発会社としてAI組込プロジェクトを手掛けるGeNEEの現場から、要点を2つ共有します。
AIエージェント導入企業が最初に直面する5つのシステム課題を見る(無料DL)

要件定義段階で行うリスク洗い出しの実際

AI組込システムのリスク対策は、リリース後に追加するものではなく、要件定義の段階で織り込むものです。開発の初期段階で、少なくとも次の観点を確認・定義しておく必要があります。

  • データフローの特定:どの情報がどのモデル・APIに渡り、どこに保存されるか。学習利用の有無と保持期間を契約レベルで確認する
  • 誤出力の影響度評価:ハルシネーションが起きた場合に業務へ与える影響の大きさで用途を分類し、人間の確認を挟むポイントを設計する
  • 入力経路の信頼度分類:ユーザー入力・社内データ・外部文書など、AIが読み込む情報源ごとに信頼度を分け、外部由来の内容を「指示」として扱わない構造にする
  • 監査ログの設計:プロンプトと出力の記録方針を最初から仕様に含める(後付けは高コストになりがちです)

「守れる状態にしてから使う」という原則は、開発においては「守れる設計にしてから作る」に置き換わります。

⇒生成AI利用時のリスクを含め、発注段階でセキュリティ要件をどう仕様化するかを解説した「情報漏洩・セキュリティ対策ガイド」を見る(無料DL)

権限設計と連携範囲の最小化——事故が起きても止まる作り

AIエージェントやRAG連携のリスク(前述)に対する最も効果的な防御は、AIに与える権限と参照範囲を必要最小限に絞ることです。プロンプトインジェクションを完全に防ぐ技術は現時点で存在しないため、「騙されることを前提に、騙されても被害が広がらない構造」を設計します。

具体的には、AIがアクセスできるデータを業務上必要な範囲に限定する、メール送信やデータ更新など影響の大きい操作には人間の承認を挟む、実行権限を段階的に付与して小さく始める、といった設計原則です。これは人間の従業員に対する最小権限の原則と同じ発想であり、AIを「無制限の権限を持つ便利な同僚」ではなく「権限管理の対象」として扱うことが、実装フェーズのリスク管理の核心です。

AIを業務システムに組み込む際の権限設計や監査ログ設計は、AX(AI Transformation)時代の企業システムに共通して求められるガバナンス要件です。SoR・SoE・SoIを疎結合で設計する考え方を整理した資料もございます。
DXの次に来るAX|企業システムはどう進化すべきかを見る(無料DL)

AIを「無制限の権限を持つ便利な同僚」ではなく「権限管理の対象」として扱うという発想は、AIエージェントを人間と同等の厳格さで管理すべき独立したID主体として捉える設計思想そのものです。AIエージェントのID・権限設計を体系的に整理したい方は、以下の資料もご参照ください。
『AI社員』のID・権限管理|AIエージェントセキュリティ(無料DL)

まとめ|リスクを理解し、生成AIを安全に活用するために

生成AIのリスクは、①入力(情報漏えい・二次利用)、②出力(ハルシネーション・権利侵害・バイアス)、③攻撃・悪用(プロンプトインジェクション・ディープフェイク・攻撃面の拡大)、④組織・運用(シャドーAI・法規制対応)の4領域で全体像を捉えると、打ち手が明確になります。

そして対策の基本方針は「禁止」ではなく「管理」です。ガイドラインで線引きを示し、安全な環境を用意し、検証フローと教育で品質を担保し、ログで見える化する——この積み上げによって、リスクを抑えながら生成AIの価値を引き出せます。さらにAIを業務システムへ組み込む段階では、権限設計と連携範囲の最小化という「設計によるリスク管理」が不可欠になります。

GeNEEでは、システム・アプリ開発会社としての知見をもとに、生成AIの導入計画策定からリスクを織り込んだシステム設計・開発・運用までを一貫して支援しています。「自社の使い方はどこにリスクがあるのか」「AI組込をどう進めるべきか」にお悩みの場合は、GeNEEのAI診断サービスをぜひご活用ください。

監修者
飯嶋シロ
飯嶋シロ
コンテンツマーケティングディレクター

<略歴>
慶應義塾大学卒業後、日系シンクタンクにてクラウドエンジニアとしてシステム開発に従事。その後、金融市場のデータ分析や地方銀行向けITコンサルティングを経験。さらに、EコマースではグローバルECを運用する大企業の企画部門に所属し、ECプラットフォームの戦略立案等を経験。現在は、IT・DX・クラウド・AI・データ活用・サイバーセキュリティなど、幅広いテーマでテック系の記事執筆・監修者として活躍している。

人気の記事
↑