公開日:2022.12.05 更新日:2022.12.28

ERP(企業資源計画)| SAPや基幹システムとの違いを解説

GeNEE_ERPと基幹システムの違い


ERPという言葉は大きな企業ではよく聞く言葉だと思います。しかし、「ERPってなに?」と思われている方も多いのではないでしょうか。ここではERPの内容やメリットをお伝えするとともにSAPや基幹システムとの違いを解説します。

ERPとは?

ERP(Enterprise Resource Planning)は日本語でいうと企業資源計画と訳されます。名前からも分かるように企業の資源を適切に管理する考え方を指します。企業の資源とは人、モノ、金、情報などを指します。この企業の資源を管理する考え方をもとに作られたシステムをERPシステムと呼び、現在では開発コスト削減のためにパッケージソフトも様々な会社から出ており、これらをERPパッケージと呼びます。

ERP登場の背景

1970年代のシステムはメインフレームと呼ばれるシステムが主流でした。このメインフレームは専用のコンピュータルームを必要とするほど大きなシステムであり、設計・開発といった開発費用も多くかかるなど導入費用が大きくかかってしまいました。そのため、販売部門、生産部門、調達部門など、部門ごとで費用対効果が高い業務プロセスから導入を行い、部分最適化されていきました。

しかし、部分最適化したシステムでは部門ごとに製品や原料のコードが異なる、取引先コードがばらばらに管理されているなど、の様々な問題が発生し、企業全体の経営状況を把握するのが困難です。情報が適切でない場合、正しい判断を行うのは難しいと言えます。この問題を解決するために生み出されたのがERPシステムです。

ERPの目的と必要性

ERPシステムの目的は1970年代までは個別に管理されてきた部門ごとの情報(会計・調達・販売・生産・人事など)を一つにまとめて管理をすることです。様々な企業の競争力が向上する中で、タイムリーに情報収集を行い適切にお客様の要望に応えることや、迅速に経営判断を行うことが必要となりました。そのため、ERPシステムで情報を一元化することが求められました。

日本では1990年代にBPR(ビジネスプロセスを再構築して最適化を図る活動)ブームが起こりました。BPRによって業務が標準化されると同時にその業務プロセスを正確に実現するためにERPシステムの導入の必要性に迫られ、日本でも普及することになりました。

ERPのメリット

ここではERPのメリットを3つ紹介します。

1.情報の一元管理が可能となる

ERPのそもそもの目的として情報の一元化がありました。情報を一元管理することで各部署の認識齟齬や作業ミスを低下させたり、セキュリティリスクを低減することができます。

2.生産性が向上する

ERPを導入することで、お客様から発注があったときに迅速に出荷手続きが行えるようになったり、在庫の状況を確認して原料の発注手続きや生産手続きを行うことができるようになったりします。そのため、ERPの導入により生産性の向上が見込めます。

3.業務判断が迅速になる

情報が一元管理されていることにより、どのタイミングで生産を行えば良いかすぐに判断できたり、お客様の問合せに迅速に回答できたり、必要な業務判断が早くなります。また、業績データまで一元管理することができれば迅速な経営判断にも寄与します。

ERPのデメリット

ここまで見るといいこと尽くめな気がするERPシステムですが、以下のようなデメリットも存在します。

1.導入コストがかかる

ERPシステムはたとえパッケージシステムをもとに導入したとしても、企業のメインシステムとなるため導入には多くのコストがかかります。また、場合によっては部門ごとの調整や業務プロセスの改善なども求められるため、人的コストも多くかかります。

長期的にみて、費用対効果が得られるのかという点は確認が必要です。

2.最終的には人的作業に依存する

ERPシステムは情報を一元管理し、業務判断・経営判断に役立てることができます。しかし、この情報は結局人が登録することになります。そのため、システムを導入したとしても、入力ミスや不備が頻発すると使えないデータとなってしまいます。

ERPの種類

ERPには以下のような種類があります。

  • スクラッチ開発

パッケージソフトなどを使わずに一からシステムを構築するパターンです。スクラッチ開発の場合、柔軟な設計・機能開発が可能です。競合他社と差別化を行いたい場合や自社業務の独自性が強い場合にはERPをスクラッチ開発した方が良いでしょう。

  • 統合型ERPパッケージ

会計・販売・調達・生産等の業務に対応している汎用的なパッケージソフトを指します。まとめて導入できる一方、細かな軌道修正等が行えない場合があり、中長期的にみるとその点がデメリットとして考えられます。

  • 業務ソフト型パッケージ

一つの業務に特化したパッケージソフトです。部門単位で導入することになるので、情報量が多い大企業では情報管理のコストがかかってしまうので向いていません。中小企業への導入が一般的です。

  • コンポーネント型パッケージ

会計・販売・調達・生産などの業務単位で必要なものだけを選択して、導入が可能なパッケージソフトです。一部門からの導入が可能なためスモールスタートが可能です。

  • 業界特化型パッケージ

特定の業界に特化したパッケージソフトです。例えば、生産管理に重点をおいた製造業に特化したシステムなどがあります。

導入のステップ

導入ステップは他のシステム導入とほとんど変わりません。大企業の場合には整理しなければいけない情報量が多いため、細かく仕様変更が入るアジャイル開発は向きません。基本的には「要件定義 ⇒ 設計 ⇒ 開発 ⇒ テスト ⇒ リリース ⇒ 運用保守」のステップを順番に行うウォーターフォール型開発が中心となります。ERPには以下のような種類があります。

導入時の注意点

導入時の注意点は主に以下の4点があります。

・長期的な視点で費用対効果を考える

ERPシステムの導入には短くて1年、長い場合には2年半〜3年ぐらいかかる可能性もあります。そのため、導入コストは他のシステムとは比べ物になりません。その分、長い期間にわたってシステムを利用することになるため、短期的な視点ではなく、長期的な視点で費用対効果を考えるようにしましょう。

・現行業務が変わることを前提とする

現行業務を変えるという意識がなければ、既存システムの焼き直しとなってしまい、ERPパッケージを導入する意味がありません。また、パッケージに則さないその企業独自の業務まで開発してしまうと、複雑性が増し開発コストがかかる上に、運用保守にコストもかかってしまい、非常に非効率なシステムとなってしまいます。開発に関わるメンバーは必ず現行業務を変えるという意識を持つようにしましょう。

・各部署の調整を徹底する

ERPシステムの導入にあたっては各部署間のコミュニケーションはとても重要です。業務プロセスが変わったり、各部門が入力する情報が変わる可能性がでてきたり、必要な情報が変わったりします。そのため、各部署間で認識を合わせて導入を行わなければ、リリースした瞬間業務が止まってしまうなどの大きな問題が発生してしまいます。必ず各部署のキーメンバーを定め、綿密にコミュニケーションを取るようにしましょう。

・関係部署への周知・教育を徹底する

ERPパッケージの導入は多くの部署に影響を与えます。中には既存システムに固執する部署やメンバーも出てきます。そのようなメンバーに説明し、理解を求めることが大切です。

また、教育もとても重要です。多くのユーザーが使うERPシステムは使い方を事前に入念に教育しなければ、業務の混乱を招いてしまいます。場合によっては業務が止まるリスクも出てくるので、教育は時間をかけて入念に行いましょう。

SAPとは何か

SAPとはドイツにあるSAP社によって作られた統合型ERPパッケージソフトです。世界シェアも約7%となっており、1位となっております。現在ではSAP HANAがリリースされており、日本でも大企業での導入が盛んになっています。

SAP登場の背景

SAPが登場したのは1972年のことです。当時はまだメインフレームが主流の時代でシステムを繋ぐという構想は全くされていませんでした。そこでディートマー・ホップ、クラウス・チラ 、ハンス・ヴェルナー・ヘクター、ハッソー・プラットナー、クラウス・ヴェレンロイターの5人のメンバーが中心となり、「デジタルでつながる企業」という構想のもと、すべてのビジネスプロセスに対応したシステムを作り上げていくことを目指しました。これがSAP登場の背景です。

SAPは細かなアップデートを繰り返していますが、大きなところでは1992年にクライアント・サーバーシステムに対応したSAP R/3がリリースされ、2015年にはクラウド対応やSAP独自のインメモリデータベースを用いることで処理性能を向上させたSAP HANAがリリースされています。近年はSAP R/3の保守期限が2027年に迫ってきていることから多くの企業でSAP R/3からSAP HANAへのアップデート対応に追われています。

ERPとSAPの違い

それではERPとSAPの違いは何でしょうか。ここではERPとSAPの違いを説明します。ERPというのは日本語に直すと「企業資源計画」と言われ、企業の経営資源を適切に管理する「考え方」を指します。ERPの考え方を採用したシステムのことをERPと略して呼ばれることもありますが基本は「考え方」である点を抑えておきましょう。この考え方のコンセプトの一例として情報の一元管理というのが挙げられます。

一方、SAPとは統合型ERPパッケージソフトの一つです。SAPで生産・販売・調達・人事・会計・物流・品質管理・在庫管理・ワークフローなどほぼすべての業務を網羅することが可能です。自社システムでSAPしか扱っていない方はERP = SAPと考えてしまう方もいるかもしれませんが、SAPはERPパッケージソフトの一つであると考えておきましょう。

SAP以外にもOBIC7、奉行V ERP、Oracle NetSuiteなど様々なERPパッケージソフトがあります。

基幹システムとは

基幹システムとは販売管理・生産管理・在庫管理など企業の事業や業務の中核を効率化するシステムのことを指します。企業にとっては欠かせないシステムと言えるでしょう。一方、基幹システムが止まってしまうと企業の活動がストップしてしまうなど重大なリスクが懸念されるため、セキュリティ対策やBCP対策、障害への対応策を入念に準備するなどの対応が必要です。

ここでは基幹システムの目的やERPとの違いを解説します。

基幹システム登場の背景

基幹システムで最初に登場したのはメインフレームでした。最初に登場したメインフレームはIBM System/360と呼ばれるシステムであり、1964年に登場しました。当時のメインフレームではまだコストが高く、受注業務や販売管理、在庫管理、発注業務などの定型作業を効率化するに留まりました。それでも、それ以前にはこれらの業務をほぼ手作業で行っていたため、業務効率が飛躍的に向上しました。しかし、業務内容に応じて最適化されてしまったために、業務ごとに異なった設計となり部門・部署ごとにデータの突合や連携を行うことは困難でした。この課題を解決するために新たに出てきた思想がERPであり、1972年にSAP社が初めてERPパッケージソフトSAP R/1を販売しました。

基幹システムの目的

基幹システムの目的は大きく2つあります。

1.業務の効率化

受注業務や発注業務、出荷業務などをシステムで定型化することで業務の効率化が図れるようになりました。そのため、余った人材を企業の新たな事業展開などに回すことにより企業の発展に寄与します。

2.業務速度の向上

業務速度の向上も重要な目的です。これまでは人が手作業でやっていた業務をシステムが代行することにより飛躍的に業務速度が向上しました。そのため、お客様を待たせることなくモノやサービスを提供できるようになり、お客様との関係性向上に役立ちました。

ERPと基幹システムの違い

ERPと基幹システムはよく混合されます。しかし、それぞれの目的を考えることでERPと基幹システムの違いが見えてきます。

基幹システムとは「企業の中核となる業務を効率化すること」が目的です。そのため、業務ごとにデータを揃えるといったことはあまり意識されていません。一方、ERPの目的は「企業の経営資源を見える化し、適切に管理する」ことです。したがってデータの整合性をとり、一元管理を行えることがとても重要となります。

業務の効率化に主眼を置いているのが基幹システム、データの一元管理まで対応しているのをERPと区別すると良いでしょう。

まとめ

ここまでERPの目的やメリット、SAPや基幹システムとの違いを解説しました。近年では多くの会社がERPパッケージを導入し、業務の効率化の次のステップである全体最適化を行い、経営判断に活かせる仕組み作りを行っています。

今後もこの傾向は加速していくと考えられるためERPパッケージの需要は高まっていくでしょう。まだ、自社にERPシステムが導入されていない場合でもメリット・デメリット・開発時の注意点を把握し、備えておくと良いでしょう。

 

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