スマホアプリの開発は、ビジネスにとって新たな顧客接点の創出や業務効率化、ブランド価値の向上など、多くのメリットをもたらします。しかし、スマホアプリ開発を成功させるためには、単にアプリを作るだけではなく、しっかりとした「目的」を持ち、それに基づいた計画と実行が不可欠です。
本記事では、アプリ開発の目的を明確にし、成功に導くための7つの要素について解説します。
スマホアプリの開発を開発会社に依頼する時、アプリの企画・構想に必要な考え方・ポイントを押さえておくと、完成品(スマホアプリ)の品質もグッと高まりますので、是非ご一読いただけたらと思います。
【7つの要素】スマホアプリ開発を成功に導くために必要なこと
アプリ開発の目的を達成するためには、なぜそのアプリが必要なのか、誰に向けたものなのか、どのような価値を提供するのかといった「基礎」を明確にすることが重要です。
スマホアプリ開発の成功に不可欠な7つの要素を詳しく解説します。
Why:「どうして」そのスマホアプリを開発する必要があるのか?
スマホアプリの開発を検討している多くの方は、「今のビジネスでどうしても解決したい課題がある」「新しい事業の可能性に挑戦してみたい」といった考えを持っています。こうした課題を解決し、目標を達成する手段としてスマホアプリを活用しようとしているのです。
しかし、「なぜこのタイミングでスマホアプリを開発するのか」「本当にアプリが必要なのか」を改めて考えてみることが大切です。
たとえば、「スマホアプリで集客を増やしたい」と考えている企業があったとします。集客が目的であれば、Google広告やチラシ、看板、特別割引といった手段も効果的なはずです。
「課題を解決し、目的を達成するために最適な手段は何か?」と自問を繰り返し、スマホアプリが最も適しているかを明確にすることが成功への第一歩です。
Who:対象顧客は「誰で」、彼ら彼女らを十分に理解しているか?
スマホアプリを利用する対象顧客の理解ができていないと、開発を成功させることは難しいでしょう。
近年、多くの企業が開発の初期段階で綿密な企画・調査を行っていますが、「なんとなくのアイデア」や「勘」に頼って開発を進めてしまうケースがあります。「このアプリやWebサービスは必要とされているはず」といった思い込みでプロジェクトを始めても、実際には顧客ニーズと合致せず、結果として期待した効果が得られないことが多いのです。
新規事業には数千万円から数億円、場合によっては数十億円規模の投資が必要になります。そのため、アプリやサービスが顧客にほとんど使われないといったリスクを避けるためにも、企画や調査の段階で「ペルソナ(顧客像)」をしっかり設定することが大切です。
ペルソナとは、対象顧客の年齢、性別、学歴、経歴、職業、性格、趣味・関心、日常の行動パターンなど、顧客の人物像を具体的に描くことを指します。「その顧客がなぜこのアプリを使うのか」「どのような課題(ペイン)を解決したいのか」を明確にすることで、アプリのUI/UXも顧客にとって使いやすいものとなり、結果的に満足度も向上します。
ペルソナ設定に関しては、別記事で詳しく解説していますので、ぜひそちらも参考にしてください。
What(1):開発するスマホアプリは顧客に対して具体的に「どんな」価値提供ができるのか?
スマホアプリやWebサービスを企画する段階では、顧客に対する価値提供に重点を置くことが大切です。しかし、多くの企業は自社が持つアセット(資産)を軸に構想を進めてしまい、結果としてユーザーに使われないアプリになってしまうことがあります。
この原因は、主に2つです。ひとつは過去の成功体験から抜け出せない「ドミナントロジック」に縛られていること、もうひとつはアプリ開発に関する経験やノウハウが不足していることです。
スマホアプリはトレンドに敏感であることが求められ、リリースのタイミングも重要です。さらに、数年も経たずに技術が大きく変わることもあり、2023年に広まったChatGPTやClaudeといった最新技術が良い例です。
ドミナントロジックから脱却するためには、ゼロベースでアイデアを考えるブレインストーミングを行いましょう。異なる部署や視点を持つメンバーを集めて、自由なディスカッションを通して新しい発想を取り入れるのが理想的です。もちろん、自社のアセットを活用したい気持ちは理解できますが、既存のアセットを意識しすぎると、かえってアイデアが制限されてしまうこともあります。
開発に関する経験やノウハウの不足については、開発会社と協力し、伴走する形で進めると効果的です。特に、企画段階では市場に即したビジネスディレクション力、設計段階ではUI/UXデザインやスケーラブルな構造を考える設計力、そして開発段階では高度な技術を実装する力が求められます。これらの専門知識を持つパートナーと協力することで、顧客にとって価値あるアプリが生まれやすくなります。
開発プロジェクトの途中では、「アプリがユーザーにどんなメリットを提供するか」「どんな機能が顧客のニーズを満たすか」「どの部分がキラーコンテンツになり得るか」を明確にしながら進行することが、成功のカギです。
What(2):そのスマホアプリが持ち合わせる最も重要な機能は「何か」?
一般的なスマホアプリには、新規登録、ログイン・ログアウト、マイページ、設定などの基本機能が実装されています。これらは標準的な機能であり、アプリの成功を左右する「最も重要な要素」とは言えません。
たとえば、Google Chromeアプリの最も重要な機能について考えてみましょう。Google Chromeの特徴的な機能のひとつは「ページランク」です。Google Chromeは、信頼性の高いWebサイト(ドメインレートが高いサイト)を上位に表示するため、ユーザーは自然に信頼性の高い情報にアクセスしやすくなっています。
このように、アプリの「キラーコンテンツ(重要機能)」が何であるかを明確にし、ターゲット顧客の課題を解決することが大切です。
さらに、アプリのリリース後は、Googleアナリティクスなどの計測ツールを活用し、どの画面や機能がユーザーに頻繁に利用されているかを継続的に確認しましょう。定義したキラーコンテンツが他の機能よりも多く、長時間利用されているかを数値で検証することで、アプリがユーザーのニーズに応え、価値を提供できているかを確認することが可能になります。
Which:「どちら」の手段がそのモバイルアプリに最適であるか?
スマホアプリには「Webアプリ」と「ネイティブアプリ」の2種類があります。
WebアプリはGoogle ChromeやSafariなどのブラウザ上で動くため、OSごとに開発する必要がなく、開発工数を抑えられるのが大きなメリットです。さらに、デバイスへのインストールが不要で、すぐに利用できる手軽さも利点といえます。
しかし、ブラウザを開く手間がかかるためユーザー導線が長くなりがちで、ネイティブアプリと比べると動作速度がやや遅く、デバイス機能(カメラ、GPSなど)との連携も制限があることが課題です。ただし、これらのデメリットは技術の進化により徐々に解消されています。
一方、ネイティブアプリは、iOSやAndroidといった特定のOSに向けて開発されるため、操作がスムーズで高速な体験を提供できます。また、App StoreやGoogle Playといったアプリマーケットからのダウンロードを活用したマーケティングが可能です。
ASO(アプリストア最適化)を施せば、ダウンロード数やユーザー数の向上も期待できます。しかし、OSごとに個別の開発が必要なため、開発工数やコストが倍増する傾向があり、頻繁なバージョンアップに対応するための運用コストも課題です。
アプリ開発の際には、Webアプリかネイティブアプリかを決定するために、プロジェクトの目的、顧客のITリテラシー、予算や開発期間などを考慮することが重要です。なお、Webアプリとネイティブアプリの特性を組み合わせた「ハイブリッドアプリ」という選択肢もありますが、詳細は別記事で解説します。
How much:そのモバイルアプリのマネタイズ方法は確立されているか(どのくらい稼げるか)?
スマホアプリやWebサービスを成功させるためには、顧客にとって価値ある体験を提供することが重要です。ただし、事業として収益を上げられるかどうかも検討する必要があります。
アプリの開発段階で「どのようなマネタイズ方法を採用し、どれくらいの売上や利益を見込めるのか」「なぜユーザーがこのアプリに課金してくれるのか」を具体的に考え、ビジネスの視点からアプリの仕組みをしっかり見直すことが重要です。
たとえば、ゲームアプリではアプリ内課金によって追加コンテンツを提供し収益を上げることが一般的です。一方、情報提供アプリやサービスアプリではサブスクリプションモデルや広告が採用されることが多く、継続的な収益を確保しやすくなります。
また、顧客が課金する理由や価値をしっかりと提供するために、ペルソナに基づいて「どの機能やサービスが有料で提供されるべきか」を検討することも大切です。アプリの初期段階で無料提供する機能と、有料化する機能のバランスを考慮し、ユーザーが無理なく課金する導線を設計しましょう。
アプリ開発の目的に沿って、ビジネス視点でのマネタイズ方法を計画し、ターゲット顧客のニーズと市場の状況に応じた柔軟な対応が大切です。
How long:そのスマホアプリはどの程度の期間利用されるか(利用される見込みか)?
スマホアプリの人気は移り変わりが激しく、一度話題になったアプリも数年後には使われなくなることが少なくありません。
たとえば、QRコード決済アプリは一時的にブームになりましたが、市場で上位に入れない場合、競合他社への事業売却などを検討するケースも見られます。
こうした競争の中で、アプリが長期にわたって利用され続けるためには、顧客離れを防ぐ仕組みや定期的なアップデートが欠かせません。そのため、アプリの企画段階から、リリース後も定期的に新機能を追加したり、デザインや操作性を改善したりする施策を検討しておくことが重要です。
また、キャンペーンやプッシュ通知を活用して、ユーザーのアクティブ率を維持することも効果的です。常に市場のトレンドを追い、顧客が求める新しい価値を提供し続けることで、アプリの寿命を延ばし、競争優位を保つことができるでしょう。
スマホアプリ開発の基本的なステップ
スマホアプリを成功に導くためには、基本的な開発ステップをしっかりと踏むことが必要です。基本的なステップは、下記のとおりです。
- 1、企画と設計
- 2、デザインとUI/UX設計
- 3、開発
- 4、テストと改善
最初の「企画と設計」では、アプリの目的とターゲットユーザーを明確にします。解決したい課題や達成したい目標を設定し、ユーザー像を具体的に描きましょう。この段階で競合アプリを分析し、自社アプリが提供する独自の価値や差別化ポイントを整理することがポイントです。
次に「デザインとUI/UX設計」に進みます。ユーザーが直感的に使いやすいインターフェースを設計し、主要機能へのアクセスがスムーズになるように操作フローを構築します。プロトタイプを作成してテストを実施し、フィードバックを反映させることで、ユーザーにとって快適な体験を提供するデザインを完成させます。
「開発」では、設計に基づいてアプリの構築を進めます。フロントエンド開発で画面表示部分を実装し、バックエンド開発でデータ処理や認証機能などの基盤を整備します。必要に応じて外部サービスとの連携も行い、全体の動作を確認しながら調整します。
最後に「テストと改善」を行います。機能テストで動作確認を行い、ユーザーに試用してもらうことで操作性や利便性を検証します。また、大量アクセス時の耐久性を確保するためのストレステストも実施しなければいけません。テストで得た結果を基に不具合を修正し、リリース後のトラブルを防ぎます。
これらのステップをしっかりと踏むことで、顧客にとって価値があり、ビジネス成果を上げるアプリの開発が可能になります。それぞれの段階でチーム間の連携を密に取り、ターゲットユーザーのニーズを常に意識しながら進めましょう。
効果的なマネタイズ方法
アプリの成功はリリース後の運用にかかっています。アプリを長期的に利用されるものへと成長させるには、継続的な更新や改善が欠かせません。まずは、収益を上げるためのマネタイズモデルを明確にし、アプリの使用状況や顧客からのフィードバックを基に施策を最適化していくことが重要です。
マネタイズ手法としては、アプリ内課金、広告収益、サブスクリプションモデルなどが一般的です。どの方法がターゲット顧客に適しているかを十分に検討しましょう。
たとえば、ゲームアプリであれば追加アイテムの課金モデル、ニュースアプリであれば広告やサブスクリプションが適している場合が多いです。
さらに、顧客が離れてしまわないよう、定期的に新機能を追加したり、キャンペーンやプッシュ通知を活用してユーザーの関心を引き続けることも重要です。こうした取り組みを通じて、アプリの価値を高め、収益とユーザー満足度の両方を向上させることができます。
スマホアプリ開発での注意点
アプリ開発を進めるときは、以下の点に注意が必要です。
- ・機能の取捨選択
- ・リリース後の運用計画
- ・市場や顧客ニーズの変化に柔軟に対応
アプリの機能を選択する際は、多機能を盛り込みすぎないことが大切です。あれもこれもと欲張ると、アプリの目的がぼやけてしまい、ユーザーにとって使いづらいものになる可能性があります。本当に必要な機能に絞り、優先順位を明確にして開発を進めましょう。
また、アプリはリリース後が本当のスタートといえます。リリース後も定期的に更新や改善を行い、ユーザーの満足度を維持することが重要です。そのため、初期段階から長期的な運用計画を立て、どのタイミングでどのような改善や機能追加を行うのかを見据えておく必要があります。
さらに、市場や顧客ニーズの変化に対する柔軟な対応力も求められます。ユーザーの期待は常に変化していくため、フィードバックを積極的に取り入れたり、競合の動向を把握したりしながら、新しい機能やサービスを追加していく姿勢が不可欠です。このように、開発から運用までを一貫して考えたアプローチが、アプリの成功を支える基盤となります。
おわりに
スマホアプリ開発を成功に導くためには、明確な目的設定とターゲットユーザーの深い理解が必要です。開発プロセス全体を通じて、企画から設計、開発、運用に至るまで、緻密な計画と継続的な改善が求められます。特に企画段階では、なぜアプリが必要なのか、どのような課題を解決するのか、顧客にどんな価値を提供するのかを徹底的に議論することが成功への第一歩です。
また、リリース後もユーザーのフィードバックを活用し、定期的なアップデートを通じて顧客満足度を維持することが重要です。さらに、アプリのマネタイズ方法を明確にし、持続可能な収益モデルを構築することで、ビジネスの成功に繋がります。
アプリ開発のプロセスにおいて、開発会社との連携や専門的な支援を活用することは非常に効果的です。特に経験が少ない場合や不安がある場合は、企画段階から開発会社と協力することで、より良い結果を得られるでしょう。これらのステップと視点を意識することで、スマホアプリ開発を確実に成功へと導くことができるはずです。
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