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本記事では、スマホアプリ開発の経験がない、もしくは少ない企業担当者の方を対象として、スマホアプリ開発を成功させるための重要な7つの要素についてご説明をいたします。スマホアプリの開発を開発会社に依頼する時、アプリの企画・構想に必要な考え方・ポイントを押さえておくと、完成品(スマホアプリ)の品質もグッと高まりますので、是非ご一読いただけたらと思います。
Why?:「どうして」そのスマホアプリを開発する必要があるのか?
スマホアプリの開発を検討されている方の大半は、「現在のビジネスにおいて、どうしても解決したい課題がある。」、「新規事業の可能性に賭けてみたい。」などの考えを持っています。これらの課題を解決するため又は目標を達成する手段としてスマホアプリを使うのです。
ただ原点に立ち返り、今一度お考えいただきたいことは、「どうしてこのタイミングでスマホアプリを開発するのか?」「スマホアプリという手段を用いないとその課題解決や目標達成は実現できないのか?」ということです。
例えばですが、「スマホアプリを利用してもっと集客したい!」といった企業がいるとします。目的が集客であれば、Google広告やフライヤー(チラシ)配り、看板、特別割引なども集客に効いてくるはずです。「解決したい課題や実現したい目的に対し、適切な手段が何か?」、何度も自問自答を繰り返し、スマホアプリ開発の必要性を明確にさせることが大切です。
Who?:対象顧客は「誰で」、彼ら彼女らを十分に理解しているか?
スマホアプリを利用する対象顧客の理解ができていないと、開発を成功させることは難しいでしょう。設計や開発の前工程にある企画・調査を綿密に行う企業も増えていますが、今でも社長のなんとなくであったり、ヤマ勘を信じてスマホアプリ開発に着手されるお客様も一定数存在します。「こんなスマホアプリやWebサービスが絶対に必要とされている。」といった単なる思い込みで開発プロジェクトをスタートさせても、実際には対象顧客のニーズと合致しないことが常です。新規事業の投資は数千万円から数億円、大きいもので数十億円を超えます。多額の投資をして開発したスマホアプリやWebサービスが顧客にほとんど使われなかった。といった由々しき事態に陥りませんように、設計・開発の前工程である企画・調査の段階からしっかりと対象顧客のペルソナ(人物像)を明らかにすることが大切です。
ペルソナとは、対象顧客の年齢、性別、家族構成、学歴、経歴、職業、性格、趣味・関心、特技、得手不得手なこと、恋人有無、日常の行動パターンなど、対象顧客の人物像を描くことを意味します。(1)のWhy?に戻りますが、ペルソナ(その人物)が「どうしてそのスマホアプリを使用するのか?」、「そのスマホアプリを使用することで、ペルソナはどのようなペイン(痛み)を解消できるのか?」を把握することで、開発するスマホアプリのUI/UXも各段に上がることでしょう。
ペルソナ設定に関しては別記事で詳しく解説しています。こちらの記事も合わせてご確認いただけたらと思います。
What?:開発するスマホアプリは顧客に対して具体的に「どんな」価値提供ができるのか?
スマホアプリやWebサービスなどを企画構想する段階において、大半のお客様が自社が持ち合わせるアセットのことばかりを考えてしまい、結果として誰にも使われないスマホアプリを生み出してしまう傾向があります。その理由は2つあり、一つは「ドミナントロジック(過去の成功要因)から脱却できないこと、もう一つはスマホアプリの企画構想に対する経験値やノウハウが足りないというのが根本にあると考えます。スマホアプリのトレンドを追うことは大変なことですし、提供するタイミングも非常に重要な要素です。また数年も経過しないうちにスマホアプリを構成する技術自体も大きく変化します。2023年に広がりを見せたChatGPTやClaudeが良い例でしょう。
ドミナントロジックから脱却するためには、0ベースから物事を考えるブレインストーミングを繰り返し行うことをお勧めします。可能であれば異なる部署の初対面の方々とグループを編成し、そのグループの中で自由にディスカッションしながらスマホアプリの案出しをできると尚良いでしょう。企業が保有するアセットは自社の強みで非常に魅力的なものです。それらを活用したいという気持ちも分かります。しかしながら、新規事業の構想段階においては、既存のアセットを意識し過ぎると、それらが大きな足枷になる可能性を秘めていることを理解しておかなければなりません。
もう一つは、企画構想や開発に関する経験値やノウハウの不足です。こちらは不足していて当たり前です。お客様の本業のビジネスは別にあるのですから。そのため、スマホアプリの企画構想と開発は開発会社と伴走的に進めていくのが理想的と言えます。特に重要なのは、企画・構想段階においてはビジネスディレクション力、設計段階においてはUI/UXデザイン、スケールに耐え得る設計力。開発工程においては、難度の高い技術実装を可能とする開発力などです。全ての知見・ノウハウが必要であり、どれも欠かすことができない要素となります。その道中、開発するスマホアプリが「ユーザに対してどんなメリットを与えることができるのか?」「どんな機能が対象顧客のニーズを満たすのか?」、「そのスマホアプリのどの部分がキラーコンテンツ(機能)になり得るのか?」しっかりと抑えながらプロジェクト進行することが重要になります。
What-2?:そのスマホアプリが持ち合わせる最も重要な機能は「何か」?
一般的なスマホアプリには、新規登録機能、ログインとログアウト機能、マイページ機能、設定機能などが実装されています。それらは実装されていて当たり前で、最も重要な要素とは言えません。
例えば、Google Chromeアプリの最も重要な要素は何かと聞かれたらどう答えますか。一つはページランクが挙げられるでしょう。Google Chromeは、DR(ドメインレートの略)が高くてWebサイトとして信頼性の高いものを上位に表示されているため、Googleを使うユーザは自然と上位のWebサイトを閲覧するように作られています。
どの機能が「キラーコンテンツ(機能)」になるのか、対象顧客のペイン(痛み)を解消させるのか、企画構想段階で事前に明らかにすることが何よりも大切です。またスマホアプリをリリースした後は、Googleアナリティクスと呼ばれる計測ツールを使用してスマホアプリのどの画面、どの機能がユーザに頻繁に使用されているのかを継続的に数値検証する必要があります。自社で定義したキラーコンテンツの利用頻度や利用回数、画面の滞在時間は基本的には他のどの機能よりも多く、長く使用されていなければなりません。
Which?:「どちら」の手段がそのモバイルアプリに最適であるか?
スマホアプリは大きく、Google Chrome、Safari、Edgeといったブラウザ上で動くWebアプリとiPhone端末やAndroid端末にダウンロードして画面上で操作ができる「ネイティブアプリ」の2種類が存在します。日常生活の中で、人々が「アプリ」と呼んでいるのは、後者のネイティブアプリを指すことが大半です。iPhone端末であればiOSと呼ばれるOS上で動くプログラミング言語(SwiftやObjective-C)で開発する必要があり、Android端末であればAndroid-JavaやKotlinといったプログラミング言語でアプリを開発することになります。対象とする端末(種類)、使用するプログラミング言語によって開発の難易度が大きく変わり、開発をスタートする前に「どちらのタイプ(Webアプリかネイティブアプリか)のアプリを開発するのか」を決める必要があります。それぞれの特徴を下記にまとめております。少し専門的な話になりますが、ご興味ある方は是非ご一読いただけたらと思います。
Webアプリのメリットとデメリット
Google Chrome, Safari, Edgeと呼ばれるブラウザ上で動くものがWebアプリです。最大のメリットとしては、OSごとに開発をしなくても良いという点です。ネイティブアプリと比べると、開発にかかる工数が少なく済むケースが多いです。他方、「顧客目線で見ると、ブラウザを開くのが手間ではないか(どうしても導線が長くなる傾向。)」「ネイティブアプリと比較すると動作速度がやや遅い。」、「初期搭載されているデバイスの機能と連携が取りづらい。」などのデメリットもあります。(GoogleやAppleなどが力を入れているおかげもあり、近年、解消傾向にあります。)
ネイティブアプリのメリットとデメリット
Webアプリ以上に動作速度が速く、顧客によく使われています。iOSアプリであれば、Apple Store、AndroidアプリであればGoogle Playといったアプリマーケットの導線が使えるといった点も大きなメリットでしょう。近年、SEO対策に力を入れている業者は多いですが、ASO(アプリマーケット上の上位表示対策)対策業者はまだ少なく、戦略次第では一気にダウンロード数やユーザ数を稼げる可能性もあります。ただネイティブアプリは、OS別に開発が必要になりますので、上述したiOSとAndroidのOS両方に対応させる場合、2倍以上の開発工数が必要となります。Webアプリと比べて、バージョンアップなどに伴う改修頻度も多く、その分コストもかかります。※簡単化のため、ここではクロスプラットフォーム開発については触れないこととします。
スマホアプリを使って実現したいこと、対象顧客の具体的なペルソナ像(例えばですが、ITリテラシーがあるかないかなど)、プロジェクトにかけられる予算、開発期間など、これらを総合的に勘案してWebアプリにすべきかそれともネイティブアプリにすべきかを決定しましょう。またWebアプリとネイティブアプリの特性を組み合わせて開発する「ハイブリッドアプリ」というタイプもあります。本記事は開発初級者~中級者様向けの記事になりますので、ハイブリッドアプリに関しましては別記事でご紹介できたらと思います。
How much?:そのモバイルアプリのマネタイズ方法は確立されているか(どのくらい稼げるか)?
スマホアプリやWebサービスを成功させるために、顧客ファーストの考え方が非常に大切ですが、それと同時に事業として成立するかどうかもしっかりと検討しなければなりません。「どのようなマネタイズ方法でどれくらいの売上と利益が見込めるのか。」、「どうして対象顧客がこのスマホアプリに課金してくれるのか。」など、ビジネスの視点からアプリの仕組みをしっかりと見つめ直す必要があります。
How long?:そのスマホアプリはどの程度の期間利用されるか(利用される見込みか)?
スマホアプリの流行り廃りは非常に激しいです。数年前に流行したQRコード決済系アプリが特にそうですが、マーケット上位に入れない場合、競合他社への事業売却といった選択を取られるケースも多いです。常に上位のポジションを維持する必要がありますので、顧客離れが起きないような仕掛けや仕組み、定期的なアップデート施策を企画・構想の段階から綿密に盛り込んでおくことが重要になってきます。
おわりに
スマホアプリ開発の成功・失敗を分けるといっても過言ではないほど重要なのが企画・構想段階です。開発会社に丸ごとお願いするお客様も多数いらっしゃいますが、プロジェクト成功のために、上記の観点から自社内で色々議論・検討いただくのも良いかもしれません。スマホアプリ開発の経験がない方や少ない方、プロジェクトを牽引できるか自信が持てない方は、開発会社と企画段階から協働することをお勧めします。