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Webシステム開発を検討しているものの、どのような技術を選べばよいか、どの開発会社に依頼すべきか迷っている方も多いでしょう。現在、多くの企業がオンプレミス型からクラウド型への移行を進めており、Webシステム開発においてもクラウド化が主流となっています。
本記事では、Webシステム開発の基本的な仕組みから開発の進め方、そして信頼できる開発会社の選び方まで解説します。自社に最適なWebシステム開発環境を選ぶための、参考にしてください。
Webシステム開発とは?
Webシステム開発について理解するためには、似ているようで異なる概念との違いを明確にすることが重要です。とくに混同されやすいのが、以下の3つです。
- Webサイトとの違い
- オンプレミス型との違い
- Webアプリケーションの違い
これらの違いを理解することで、自社に最適なシステム開発の方向性を見極められます。
Webサイトとの違い
Webサイトはおもに情報発信やコンテンツ公開を目的としており、閲覧者は基本的に情報を受け取る形が中心です。一方、Webシステムは利用者同士のやり取りやデータ処理など、より高度な機能を含む点が大きな特徴といえます。
たとえば、在庫管理や予約受付のようにユーザーが入力した情報を反映し、業務フローに合わせて処理を自動化できるのがWebシステムの強みです。こうした動的な操作を可能にするためには、Webサイトよりも複雑な仕組みや専門的な開発技術が求められます。
オンプレミス型との違い
オンプレミス型は、自社サーバーを保有し、企業内部でインフラ環境を構築・管理する方法です。一方、Webシステム開発では、インターネットを介してサービスが利用できるクラウド上の環境をメインとすることが多くなります。サーバーの保守や拡張にかかる負担が抑えやすく、必要に応じてリソースを増減できる点がメリットです。
また、地理的に離れた拠点や外部パートナーとも連携しやすいため、スピーディーなサービス提供や機能追加が可能になります。企業の成長やニーズの変化に合わせて、柔軟にアップデートできる点もクラウドならではの魅力です。
Webアプリケーションの違い
Webアプリケーションは、ブラウザ経由で利用できるソフトウェアを指します。ユーザーの操作や入力に応じてサーバー側が処理を行い、その結果を画面に返す仕組みを持っています。SNSやクラウドストレージなど、ユーザーが積極的に操作し、動的に情報が変化するサービスはWebアプリケーションの典型例です。
Webシステム開発も同様にオンラインで機能を提供する点では近い概念といえます。しかし、業務用の大規模システムや企業全体の運用にかかわる部分を含む場合が多いのが特徴です。WebアプリケーションはWebシステムを構成する一要素であるケースもあり、規模や目的に応じて両者の位置づけがやや異なるといえます。
Webシステムの基本構成
効果的なWebシステム開発を進めるためには、システム全体の構成を理解することが重要です。Webシステムは大きく3つの主要な要素で構成されており、それぞれが連携してシステム全体の機能を実現しています。
- フロントエンド(クライアントサイド)
- バックエンド(サーバーサイド)
- データベース
これらの構成要素の役割を理解することで、適切な技術選定や開発会社選びが可能になります。
フロントエンド(クライアントサイド)
フロントエンドとは、ユーザーが直接操作する画面やブラウザ側の領域を指します。ボタンやテキスト入力欄など、見た目や操作性の部分を担当し、利用者とのやり取りをスムーズにする重要な役割を担います。
たとえば、クリック時に画面が切り替わったり、入力内容のエラーが表示されたりする仕組みは、フロントエンド側のプログラムによるものです。一般的にHTMLやCSS、JavaScriptなどの技術を使い、見栄えやユーザビリティを向上させる工夫を行います。使いやすく分かりやすいインターフェースを提供することで、Webシステムの満足度が大きく左右される点も特徴です。
バックエンド(サーバーサイド)
バックエンドは、ユーザーが目にすることのないサーバー側で動作する部分を指します。具体的には、ユーザーが入力した情報を処理したり、ビジネスロジックを反映したりする仕組みが該当します。たとえば、会員登録や注文処理を行う際に必要な計算やデータのやり取りは、このサーバー側で実行されるのが基本です。
言語はPHPやRuby・Python、Javaなどが利用され、フロントエンドから送られてきたリクエストに応じて適切な処理を行います。システムの処理速度や安定性を大きく左右するため、開発の際には高い保守性や拡張性も考慮されることが多いです。
データベース
データベースは、Webシステムが扱う情報を体系的に保存・管理するための仕組みです。ユーザーアカウントや商品情報、注文履歴などを整理して格納し、必要に応じて迅速に検索や更新が行えるように設計されます。データベース管理システム(DBMS)としてMySQL、PostgreSQL、Microsoft SQL Server、Oracleなどが代表例です。
アクセス件数が増大したときでも高速に応答できるよう、適切なインデックス設定やスキーマ設計が重要となります。また、セキュリティ面を確保するために、アクセス権限や暗号化などの対策を施して不正な侵入やデータ流出を防ぐことも欠かせません。
Webシステム開発はクラウド化がおすすめ
現在、大手企業を中心として自社システムのクラウド化が急速に進んでおり、この流れは中堅企業から中小企業まで確実に広がりを見せています。クラウド型Webシステムは、従来のオンプレミス型と比較して多くのメリットを提供し、現代のビジネス環境に最適化されたソリューションです。
システムのクラウド化により、あらゆる場所からのアクセスが可能になります。従業員の業務効率化はもちろん、経営層にとってもデータの一元管理と高速なビッグデータ解析が実現できます。Amazon Web Services、Google Cloud Platformなどの主要クラウドプラットフォームを活用することで、柔軟性と多様性を持ったシステム構築が可能です。
Webシステム開発の進め方
Webシステム開発を成功させるためには、体系的なプロセスに従って進めることが有用です。計画的な進行により、品質の高いシステムを効率的に構築できます。
ここでは、以下7つの工程を解説します。
- 要件定義
- 外部設計
- 内部設計
- 開発
- テスト(単体・結合・総合)の実施
- リリース
- 運用・保守
これらの工程を適切に実施することで、トラブルを最小限に抑え、期待どおりの成果を得られます。
要件定義
要件定義とは、システムに求める機能や性能、運用時の条件などを明確化する最初の段階です。関係者へのヒアリングや現行業務の分析などを通じて、どのような課題を解決し、成果を得たいのかを整理します。
たとえば、処理速度やセキュリティレベル、使いやすさといった観点を確認し、具体的な指標を設定することが大切です。要件定義があいまいだと、後工程で手戻りが発生しやすいため、十分に時間をかけて情報を収集・整理することが成功の鍵となります。
外部設計
外部設計は、ユーザーが触れる画面や入出力の形式など、システムの外から見た仕様を固める作業です。たとえば、どの画面で何を入力して、どのような情報を得るのかを設計書にまとめます。ここでは画面レイアウトや操作フローなど、利用者が実際に使う際の体験を重視して検討するのがポイントです。
また、他システムとの連携やデータ交換の形式も外部設計で定義することが多く、後から変更すると影響範囲が大きくなる可能性があります。早い段階で確定させておくと、のちの工程がスムーズに進行しやすいでしょう。
内部設計
内部設計では、サーバーサイドでの処理ロジックやデータベース構成など、システム内部の詳細を決めていきます。具体的には、クラス構造や関数の役割分担、テーブル設計などを文書化し、保守性・拡張性を高めるための指針とします。
どのタイミングで処理を行い、どのようにデータを保存・読み込みするかといったルールを定めることで、コードの重複や不具合を減らすことが可能です。内部設計が明確だと、開発者間で共通認識がとりやすくなり、後のステップでも混乱が生じにくくなります。
開発
開発の工程では、要件定義や外部・内部設計でまとめた仕様をプログラムとして実装します。ここで重要なのは、コードの可読性や拡張性を意識することです。テストしやすい構造にしておくと、不具合を見つけたり修正したりする際の手間が大幅に軽減されます。
また、開発中はバージョン管理ツール(Gitなど)を活用して、複数人で同時に作業を進めてもファイルが競合しないように管理することが一般的です。日々の進捗や課題をチーム全体で共有しながら、スケジュールに沿って完成度を高めていきます。
テスト(単体・結合・総合)の実施
テスト工程では、開発したプログラムが期待どおりに動作するかを検証します。まずは「単体テスト」で機能ごとの動作を細かくチェックし、その後「結合テスト」で複数の機能を連携させた動きに問題がないかを確認します。
最終的な「総合テスト」では、実際のユーザー環境に近い条件を想定して動作を試し、全体としての完成度を判断するのが一般的です。ここで不具合を洗い出し、修正を重ねることで、リリース後のトラブルを最小限に抑えられます。こうしたテスト体制を築くことが、Webシステムの信頼性を高める大きな要因となるでしょう。
リリース
リリースは、テストを終えたシステムを実際の運用環境へ移行し、ユーザーに使ってもらう段階です。クラウド環境を利用する場合は、サーバーの設定やDNSの切り替えなどを行い、ユーザーがアクセス可能な状態を整えます。
リリース時は一度に大人数が利用を開始する可能性もあるため、アクセス増に対応できる設計や負荷テストの結果を確認しておくことが大切です。万が一想定外の不具合が見つかった場合でも、迅速に修正・再配布できるよう、バックアップやロールバック手順などを用意しておくと安心です。
運用・保守
運用・保守段階では、システムが日常的に正しく稼働しているかを監視し、必要に応じてアップデートや不具合対応を行います。たとえば、OSやミドルウェアのセキュリティパッチを定期的に適用したり、ログデータを分析して負荷の高い部分を改善したりする作業が含まれます。
利用者からの要望に合わせて機能を追加・改修するケースもあり、要件定義や設計から再び始める小さな開発サイクルが繰り返されることも。運用・保守が徹底していると、長期間にわたってWebシステムの価値を維持・向上させられるでしょう。
Webシステム開発の内製と外部委託の比較
それぞれの手法には明確なメリットとデメリットがあり、企業の状況や目的に応じて最適な選択をする必要があります。ここでは、以下3つのアプローチを解説します。
- 自社開発のメリット・デメリット
- 外部委託のメリット・デメリット
- ハイブリッド開発
これらの特徴を理解することで、自社に最適な開発体制を構築し、効率的なWebシステム開発を実現できます。
自社開発のメリット・デメリット
自社開発は、社内のエンジニアチームがシステム開発を担当する手法です。企業が技術力を内製化することで、独自ノウハウの蓄積や柔軟な開発が可能になります。
項目 | メリット | デメリット |
コスト | 長期的には外注費用を削減可能 | 初期の採用・教育コストが高額 |
スピード | 仕様変更や修正への迅速な対応 | 開発開始までの準備期間が長い |
品質 | 自社業務への深い理解に基づく最適化 | エンジニアのスキルレベルに依存 |
ノウハウ | 技術知識とビジネス知識の社内蓄積 | 人材の流出リスク |
柔軟性 | 優先順位の変更や機能追加が容易 | リソース不足時の対応が困難 |
自社開発は、長期的な技術力向上と独自性の追求に適していますが、十分なエンジニアリソースと継続的な技術投資が前提となります。
外部委託のメリット・デメリット
外部委託は、専門的な開発会社にシステム開発を依頼する手法です。豊富な経験と専門知識を持つパートナーと協力することで、効率的な開発が期待できます。
項目 | メリット | デメリット |
専門性 | 高度な技術力と豊富な開発実績 | 自社業務への理解に時間が必要 |
コスト | 初期投資を抑えて開発開始可能 | 継続的な委託費用が発生 |
スケジュール | 経験に基づく確実な納期管理 | 仕様変更時の調整に時間を要する |
リスク | 開発会社が技術的リスクを負担 | 品質やスケジュールの管理が間接的 |
最新技術 | 最新の技術トレンドを活用可能 | 技術ノウハウの社内蓄積が困難 |
外部委託は、短期間での高品質なシステム構築に適していますが、適切なパートナー選定と密なコミュニケーションが成功の鍵となります。
ハイブリッド開発
ハイブリッド開発は、自社開発と外部委託の両方の利点を活用する手法です。プロジェクトの要素ごとに最適な開発体制を選択し、全体的な効率性と品質を向上させます。具体的には、コア機能や重要な業務ロジックは自社で開発し、専門性の高い技術部分や標準的な機能は外部に委託するアプローチです。
また、開発の初期段階は外部パートナーと協力して進め、運用開始後に段階的に内製化を図る方法もあります。このアプローチにより、自社の技術力向上と外部の専門知識の活用を両立できます。
ただし、プロジェクト管理の複雑化や、社内外の連携調整に追加のコストが発生する点に注意が必要です。成功のためには、明確な役割分担と密なコミュニケーション体制の構築が要となります。
Webシステム開発会社の選び方
Webシステム開発の成功は、適切な開発パートナーの選定にかかっています。技術力だけでなく、自社の業務課題を理解し、長期的な視点でサポートしてくれる会社を選ぶことが重要です。
ここでは、以下4つの選び方を紹介します。
- 開発実績と得意分野
- 提案力とコンサルティング能力
- 進捗管理の透明性やコミュニケーション力
- 保守や運用体制の充実度
これらの評価基準を総合的に検討することで、自社にとって最適な開発パートナーを見つけられます。
開発実績と得意分野
開発会社を選ぶうえで、まず確認したいのが過去の実績と得意分野です。自社の業界や業務フローと似た事例を多く扱っている会社であれば、ノウハウを生かして効率的に開発を進められる可能性が高まります。
たとえば、製造業向けシステムに強みがある会社や、ECサイトの構築を多数手がける会社など、分野によって培った経験値は大きな武器となるでしょう。開発実績が公開されている場合は、そのクオリティやスピード感、導入後の効果などを参考に、自社の要件との相性を見極めることが大切です。
提案力とコンサルティング能力
開発会社には、単にプログラムを作るだけでなく、ビジネス視点から最適なシステムを提案する力が求められます。自社の課題を正しく理解し、将来的な拡張性や運用のしやすさまで考慮した設計を提示してくれるパートナーは心強い存在です。
とくに、新たなサービスや業務改革を目指す場合、コンサルティング能力の高さが成功を左右するといっても過言ではありません。ヒアリングを重ねて明確な根拠や具体的なロードマップを示してくれる会社であれば、長期的に見ても安心して任せられるでしょう。
進捗管理の透明性やコミュニケーション力
プロジェクトがスムーズに進むかどうかは、進捗状況が適切に可視化され、こまめに情報共有できるかにかかっています。たとえば、週次レポートやミーティングを通じて、どの工程が完了し、どの工程で遅延リスクがあるかを明確にしながら進められる会社は理想的です。
技術的な専門用語や進捗報告を、分かりやすい言葉に変換して伝えてくれるコミュニケーション力もポイントです。こうした透明性とコミュニケーション力が高い会社ほど、トラブルを未然に防ぎ、納期どおりに高品質なシステムを完成させる可能性が高まるでしょう。
保守や運用体制の充実度
リリース後も、システムはアップデートやトラブル対応など、継続的なサポートが必要です。そこで大切なのが、保守・運用体制をどれほど徹底しているかという点です。
たとえば、システムを監視してくれる会社や、専門スタッフが定期的にヒアリングを行いながらアップグレードを提案してくれる会社もあります。こうした体制が整っているほど、万が一の障害発生時にも迅速な復旧が期待できるでしょう。システムを長く安定して活用するためには、開発だけでなく保守・運用面のサポート内容を確認することが欠かせません。
まとめ:自社に最適なWebシステム開発環境を選ぶために
Webシステム開発の成功には、クラウド化の推進と信頼できる開発パートナーの選定が肝要です。
株式会社GeNEEでは、企画・調査から設計・開発・保守運用まで一気通貫でサポートしています。350を超える豊富な開発実績とコンサルティング力により、お客様の業務課題を根本的に解決します。
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取締役
大阪大学工学部、大阪大学大学院情報科学研究科修了。
国内最大手IT企業の株式会社NTTデータで大手金融機関向けに債権書類電子化システム、金融規制・法規制対応システムの要件定義・インフラ設計・開発・構築・複数金融サービスのAPI連携等を手がける。その後、株式会社GeNEEの取締役に就任。
基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、Oracle Master Platinum等多数