公開日:2025.06.06 更新日:2025.06.06

システム改修とは?定義や目的・実施するタイミングや費用について徹底解説

企業の成長や変化に合わせて、システムも最適な状態を保つことが重要です。システム改修は、不具合の修正や機能拡充など、さまざまな場面で必要とされています。

この記事では、システム改修の定義や実施するタイミング、費用などについて解説します。システム改修を検討している方や、スムーズな改善を実現したい方は、ぜひ最後までお読みください。

システム改修の定義と目的

システム改修とは、既存のシステムに対して機能の追加や変更、修正などを行い、性能向上を図ることです。完全に新しいシステムを構築するのではなく、現在稼働しているシステムに対して変更を加えます。

システム改修の目的は、不具合の解消や機能拡充により、その価値を最大限に引き出すことです。技術の進歩や市場の動向、法規制の変更など、ビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。

このような変化に対応するためには、機能追加や使いやすさの向上など、システムの改善が必要です。業務効率の向上や新たなニーズへの対応を実現し、安定したシステム稼働を図るために改修を実施します。

システム開発との違い

システム改修が既存のシステムを変更するのに対し、新しいシステムをゼロから構築するのがシステム開発です。これまで存在しなかったシステムを新たに構築し、課題解決や新たな価値創造を目指します。

システム開発は、必要な機能を明確にするための要件定義から始まり、設計や開発、動作確認テスト、本番環境への導入という一連の工程に沿って行います。

これに対してシステム改修は、まず既存システムの分析を行い、改修範囲の要件定義を定めて修正を進めていくのが特徴です。影響範囲を最小限に抑え、効率的に変更を加える点がシステム開発とは異なっています。

そのため一般的には、システム改修のほうが早いスケジュールで終わる傾向です。ただし改修するシステムの規模が大きい、もしくは改修内容が複雑な場合、新規開発のほうがスムーズに終わることもあります。

システム改修を実施するタイミング

システムの価値を最大限に引き出すためには、適切なタイミングでのシステム改修が不可欠です。ここでは、システム改修を実施する4つのタイミングについて解説します。

  • 不具合が発生したとき
  • 新しい機能を追加するとき
  • 既存機能をより使いやすく改善するとき
  • 法改正への対応が必要になったとき

タイミングを見逃さず、適切な時期に改修を実施しましょう。

不具合が発生したとき

システムが正常に動作しない、意図しない挙動を示すといった不具合(バグ)が発生した場合、その問題を解消するためにシステム改修が必要になります。軽微な修正から、大規模な改修が必要となる場合まで、不具合の程度によって対応範囲はさまざまです。

不具合を放置すると、業務に支障が出るだけでなく、セキュリティ上のリスクが高まるおそれもあります。不具合が発生した際は、迅速な原因究明と対応を進めましょう。

新しい機能を追加するとき

ビジネス環境の変化や新たなニーズに対応するため、既存のシステムに新しい機能の追加が求められる場合もあります。たとえば日々の業務において、特定の作業に多くの時間や手間がかかっている場合、新しい機能の追加で効率化につながるかもしれません。

また、市場のトレンドや顧客の要望が変化した際も、システムに新しい機能を追加する契機です。顧客から新しいサービスや機能に対する要望が寄せられた場合、機能を追加することで顧客満足度が高まり、競争優位性を確立させられるでしょう。

既存機能をより使いやすく改善するとき

既存の機能がユーザーにとって使いにくい、操作に手間がかかるなどの課題がある場合、ストレスや作業効率の低下に直結します。このような場合、ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を改善するためのシステム改修が有効です。

具体的な改善点としては、画面レイアウトの変更、入力項目の整理、操作ボタンの配置調整などがあげられます。直感的で分かりやすい操作性を実現することで、ユーザーの満足度向上に期待できるでしょう。

法改正への対応が必要になったとき

法律や制度が改正された場合、それに合わせて既存のシステムを対応させなければなりません。たとえば、税制の変更や労働関連法の改正などが行われた場合、関連法規の変更内容を迅速かつ正確に把握し、システムに適切な改修を施すことが求められます。

法改正への対応を怠ると、法令違反による罰則や、企業の信用失墜につながるおそれもあります。変更内容によっては、システムの根幹に関わる場合もあるため、計画に基づいて迅速かつ適切な改修を施すことが重要です。

システム改修にかかる費用の目安

システム改修の費用は一般的に、30万円〜200万円程度が目安です。ただしシステムの規模や種類、機能数などによっても大きく変動します。

システム改修プロジェクトにおける費用は、おもに人件費で構成されています。エンジニアの「人月単価」と呼ばれる指標をもとに算出されるのが特徴です。

人月単価とは、エンジニア1人が1ヶ月間稼働する際にかかる費用を示す指標であり、人件費は以下の計算式に基づいて算出されます。

人月単価×人員数×開発期間=人件費

たとえば、人月単価100万円のエンジニアが2人で作業にあたると仮定します。改修作業が1ヶ月かかった場合、トータルの人件費は200万円です。

100万円(人月単価)×2人(人員数)×1ヶ月(開発期間)=200万円

なお、高スキルな人材は人月単価が高いですが、プロジェクトの進捗を加速し、全体的なコストを抑える効果も期待できます。

システム改修の費用は上記の目安を参考にしつつ、システムの複雑さや必要なエンジニアのスキルレベル、開発期間などを総合的に考慮することが重要です。

システム改修の流れ

システム改修を成功させるためには、計画的なアプローチが不可欠です。以下のプロセスを経て実施されます。

  • 現状分析と課題の特定
  • 要件定義
  • 開発・テスト
  • 導入・移行

ここから、それぞれの段階について詳しく見ていきましょう。

現状分析と課題の測定

まず、システムの問題点や改善すべき点を把握するため、現在の状態を調査します。具体的には、担当者へのヒアリングや実際のシステム操作による検証、ログデータの解析などを実施します。

システム改修においては、表面的な問題だけでなく、システムの根深い課題や潜在的なリスクを洗い出すことが重要です。多角的な情報を総合的に評価することにより、改修の優先順位付けや効果測定が実施しやすくなります。

要件定義

現状分析で明らかになった課題やニーズに基づき、具体的にどのような改修を行うのかを定義する段階です。具体的には、改修によって実現すべき具体的な機能一覧や画面遷移図、データモデル、インターフェース仕様などを文書化・図式化していきます。

この要件定義の精度が、開発やテストにおけるフェーズでの成果を大きく左右します。要件定義では現時点でのニーズを満たすだけでなく、将来的な拡張性や保守性も考慮に入れることが肝心です。

開発・テスト

定義された要件に従って、実際にシステムの修正や機能追加などの開発作業を行うフェーズです。プログラマーやエンジニアがコードを記述し、システムを構築していきます。

また、システム改修では、各段階に応じて以下のようなテストが実施されます。

  • 単体テスト:個々のプログラムの動作確認
  • 結合テスト:複数のプログラムを連携させた際の動作確認
  • 受け入れテスト:実際にシステムを利用するユーザーによる最終確認

開発中も適宜テストを実施することで、隠れた不具合を洗い出すことが可能です。要件定義で定められたとおりに動作するかを確認し、品質基準を満たしたシステムが納品されます。

導入・移行

品質が確保されたシステムを、本番の環境に導入する段階です。改修したシステムを業務で利用するための準備や、切り替え作業が行われます。

業務への影響を最小限に抑えるために、データの移行方法やタイミングが慎重に検討され、必要に応じてリハーサル(移行テスト)も実施されます。この際、トラブルが発生した場合を想定し、バックアップ体制を万全にしておくことが不可欠です。

移行作業が無事に完了したら、ユーザーへの操作説明やトレーニングなどを行います。導入後も、システムが安定的に稼働するよう、必要に応じて調整や修正が実施されます。

システム改修の費用が高額になりやすいケース

システム改修の費用は規模や修正内容によって変動しますが、とくに次の条件下では高額になる傾向にあります。

  • 広範囲な修正が必要となる場合
  • データベースの改修が必要な場合
  • 設計が複雑なシステムを改修する場合

それぞれのケースを解説します。

広範囲な修正が必要となる場合

システムの根幹部分に手を加える必要がある場合や、複数の機能にまたがる大規模な変更を行う場合、費用が高額になりやすい傾向があります。

とくに長年運用されてきたシステムでは、技術的な負債が積み重なっていることも少なくありません。最新の技術やセキュリティ要件に対応するため、既存の複雑な構造を解析するだけでも多大な時間と労力を要します。

広範囲な修正では設計の見直しだけでなく、多くのプログラムコードの書き換え、それに伴う細部にわたるテストが必要です。そのため、必然的に改修期間が長期化し、多くのエンジニアのリソースを投入することになります。

データベースの改修が必要な場合

データベースの改修とは、データベースの構造や機能を変更し、システム全体の機能向上や安定化を図る作業です。構造の変更からデータの移行、形式の変換など、あらゆる種類の変更が必要となり、作業期間が伸びるため、費用も高額になる傾向です。

また、改修作業中や完了後には、データ整合性の検証やパフォーマンス確認のため、入念なテストが欠かせません。とくにデータ量が多い大規模なシステムにおいては、高度な技術と綿密な計画が求められます。

これらの準備作業やテスト作業にもコストと時間がかかるため、データベースの改修を伴う場合は、総費用が高額になりやすいことを認識しておくことが大切です。

設計が複雑なシステムを改修する場合

システム改修では、既存の構造との整合性を保ちながら改修を進める必要があり、設計が複雑な場合は、作業に制約が生じます。このような場合、既存の技術に合わせて複雑な実装を行わなければならず、開発効率を低下させるため、結果的に費用の増大を招きます。

さらに、不具合が老朽化や技術的な負債による場合は、将来的な保守性や拡張性も考慮したうえで、システムの再設計や内部構造の改善も検討されるのが一般的です。一時的な修正で済ませるのではなく、長期的な視点でシステムの健全性を高めることが、将来的な改修コストを軽減することにつながります。

システム改修の費用を抑えるポイント

システム改修の費用対効果を高めるためには、不要なコストを削減することが大切です。

以下3つのポイントを押さえ、費用を賢く抑えましょう。

  • 改修の目的と範囲を明確にする
  • 自社で対応する範囲を増やす
  • リプレイスも検討する

それぞれ解説します。

改修の目的と範囲を明確にする

改修の目的と範囲が曖昧なまま開発を進めると、途中で方向性が変わったり、認識のズレによる修正が発生したりするリスクが高まります。不要な作業を削減するためにも、改修の目的や範囲を定めておくことが大切です。

本来必要のない機能追加や修正などの工数が省け、手戻りを防ぐことにつながるでしょう。手を加えるべき範囲が明確になることで、開発チームは無駄な作業に時間を費やすことなく、効率的に作業を進められます。

自社で対応する範囲を増やす

外部にすべて委託するのではなく、対応できる部分は自社が行うことで、費用削減につながります。たとえば、以下のような工程を自社が担うことで、外部に委託する量を減らすことが可能です。

  • 現状分析や要件定義を進める
  • 軽微な不具合の修正を行う
  • ドキュメントを作成する

ただし、このような対応を実施するには、社内のITリソースが必要になるケースも少なくありません。そのため、事前に社内リソースの有無やスキルレベルなどを正確に把握し、無理のない範囲で対応を検討することが重要です。

リプレイスも検討する

システム改修の費用が高額になる見込みの場合や、改修によっても根本的な問題解決が難しいと判断される場合には、完全に新しいシステムに置き換えるリプレイスも視野に入れるべきです。

初期投資は大きくなる可能性がありますが、長期的な視点で見ると老朽化したシステムを維持し、改修し続けるコストよりも安価になる場合があります。システム改修の方向性に迷う場合は専門家へ相談し、客観的な意見や最適な解決策を求めるようにしましょう。

システム改修の注意点

システム改修プロジェクトを円滑に進め、その成果を最大限に引き出すためには、以下の注意点を押さえておく必要があります。

  • デグレードテストを行う
  • 十分なスケジュールを確保する
  • マニュアルを整備する

それぞれ見ていきましょう。

デグレードテストを行う

デグレードテストとは、システム改修後に、既存の機能が改修によって意図せず損なわれていないかを確認するためのテストです。 システム改修では、新しい機能の追加や既存機能の変更を行う際に、これまで正常に動作していた機能が動作しなくなることがあります。

テグレードテストでは、関連する既存機能や、影響を受けそうな重要な機能を中心にテストケースを作成し、改修前後の動作を比較します。改修による悪影響の早期発見・修正により、システムを安定的に稼働させることが可能です。

十分なスケジュールを確保する

システム改修は現状分析から要件定義、開発、テスト、導入といった複数の工程が必要です。それぞれの工程には、想定外の遅延や問題発生のリスクが伴います。

タイトすぎるスケジュールは、開発やテストの品質低下を招き、手戻りやリリース後の不具合を招くおそれがあります。質の高いアウトプットを生み出すためにも、各工程に十分な時間を確保し、余裕を持ったスケジュール感で改修を進めることが重要です。

マニュアルを整備する

システム改修後には、ユーザーが新しい機能や変更された操作方法を正しく理解する必要があります。スムーズな理解を助けるためには、分かりやすいマニュアルを整備しておくことが大切です。

網羅的にまとめられたマニュアルは、ユーザー自身で問題を解決できる機会を増やし、システムの利用促進につながります。改修内容に合わせて既存のマニュアルの更新、もしくは新規のマニュアルを作成しておくとよいでしょう。

まとめ:目的や要件を明確にしてシステム改修を進めましょう

システム改修を成功させるためには、現状分析から導入・移行までの計画的なアプローチが不可欠です。自社の課題や状況に合わせて、適切なタイミングで実施しましょう。

システムの価値を最大限に引き出すためには、変化するビジネス環境に合わせて、柔軟にシステムを進化させていく姿勢も重要です。この記事のポイントを押さえ、実用的で効果の高いシステムを実現してください。

監修者
斎藤裕一
取締役
<略歴>

大阪大学工学部、大阪大学大学院情報科学研究科修了。
国内最大手IT企業の株式会社NTTデータで大手金融機関向けに債権書類電子化システム、金融規制・法規制対応システムの要件定義・インフラ設計・開発・構築・複数金融サービスのAPI連携等を手がける。その後、株式会社GeNEEの取締役に就任。

<資格>

基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、Oracle Master Platinum等多数

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