公開日:2024.02.27 更新日:2024.02.27

デザイン思考(デザインシンキング)とは。重要性とポイントについて現役のUI/UXデザイナーが解説

GeNEE_デザイン思考の打ち合わせ

数年程前から製品やサービスの開発において、デザイン思考(デザインシンキング)というアプローチが注目を集めています。デザイン思考とは、デザイナーの考え方やプロセスを活用し、ユーザー中心の視点で課題を発見し、解決策を生み出す手法です。

デザイン思考が注目される背景には、市場の変化があります。消費者ニーズが多様化し、市場調査を基礎とした累計からの推察という従来の手法では、製品開発におけるユーザーニーズの予測が難しくなってきました。

そこで、デザイン思考の出番です。ユーザー視点を中心に据え、ユーザーエンゲージメント向上を重視するデザイン思考を取り入れる事で、ユーザーの感情や置かれている状況に対する理解を深め、その解決策を持った製品やサービスの開発に役立てる手法が注目されています。

本記事では、デザイン思考の基本的な考え方を確認した上で、なぜ現代の開発プロジェクトでこれ程までに注目を集めているのかを考えます。デザイン思考のメリットはもちろん、そのデメリットにも触れて解説をします。

デザイン思考(デザインシンキング)とは

デザイン思考とは、デザイナーの考え方やプロセスをビジネスや社会的課題の解決に応用する手法です。

デザイナーは自身の仕事を進める際に、常に「ユーザー体験を最適化するための構造をどうするべきか」を考えています。その、ユーザー中心の視点でニーズや目的を考える思考をビジネス領域に取り入れることがデザイン思考です。

デザイン思考の基本的な特徴は、ユーザー体験に基づく洞察を起点に考えること、そしてアイデア実現に向けた早期の試作と検証を繰り返すことにあります。

その手法は、現場での観察やヒアリングを通じてユーザー側の潜在的な疑問や欲求、課題を掘り起こし、そこから洞察を得て解決の方向性を定め、多様なアイデアを出し合って可能性を広げます。有望視されるアイデアを形にするプロトタイプを作製し、実際のユーザーに体験してもらうことでフィードバックを得ながら、最適解を導き出すという流れになります。

この一連のプロセスの特徴は、まず全体像を先行して決めながら、プロジェクトの進行に応じて徐々に具体性を増していく事です。試行と検証を繰り返し、徐々に課題解決に向かっていく過程がデザイン思考です。早い段階からアイデア実現可能性を追求することと、ユーザー体験を起点とすることがポイントになります。

なぜデザイン思考が重要視されるのか

近年急速にビジネスシーンで注目を集めているデザイン思考ですが、なぜこれ程までに重要度を増しているのでしょうか。

その背景にはまず、市場環境の変化があります。ユーザーの姿が多様化し、そのニーズの予測が困難な時代に突入しつつある中で、これまでの市場データ主導の開発手法には限界が生じています。取得データをベースにした机上での予測が困難になるなか、それに代わる手法として実際の利用者との対話を通じて洞察を得ていくデザイン思考が注目されているのです。

もう一つの要因が、急激なテクノロジーの進化によるイノベーションスピードの飛躍的な上昇です。時代の変化へのリアルタイムでの対応力こそが企業にとっての生存条件となりつつあるなか、不確実な状況下での迅速な意思決定を得意とするデザイン思考こそが状況の打破に繋がると期待されています。

デザイン思考の最大の魅力は、ユーザー体験を起点に課題解決を図る点にあります。現場での実体験をもとに洞察を得て、早い段階からアイデアの実現可能性を追求していく一連のプロセスが、革新的なアイデアを生み出す源泉となります。

ユーザーの多様化による不確実性が高まり、画一的なサービス設計が通用しない時代になりつつあるからこそ、柔軟な発想をベースとするデザイン的思考は欠かせないアプローチであるといえます。

企業が成長を続けていくには、新しい価値を提供し続けるイノベーションが不可欠です。デザイン思考こそが、こうしたイノベーションを実現するための鍵になります。ユーザーニーズが固定化できない時代にあって確かな競争力の源泉を求めるなら、デザイン思考の本質を理解し活用していくことが欠かせません。

GeNEE_デザイン思考の具体的なプロセス

デザイン思考の5段階プロセスについて

デザイン思考では、課題発見から解決策立案に至るまでを5つのフェーズに分けてプロセス化しています。本項では各段階の特徴とポイントについて詳しく解説します。

第1段階/共感(Empathize)

まずは、フィールドワークを通じて実際の利用者の行動や考え方を観察しデータを集めます。与えられた仮説にとらわれることなく、ゼロから現場の体験を大切にします。インタビューやアンケートを繰り返し、表面化していない本質的なニーズに迫っていきます。単なるデータ分析では見えてこない洞察を得ることがこの段階の目標です。

注意すべきは、ユーザーの声をそのまま受け取るのでは無く、どのような状況でどのような想いを持って発せられた声なのかをしっかりと読み解く必要があるという事です。

第2段階/定義(Define)

次に「定義」段階として、 前段階の「共感」で得た内容を整理・分析していきます。データ間の関係性を読み解き、特定のニーズと製品・サービス上の課題や問題を定義し明確化します。

問題定義をする際は、ユーザー自身も具体化できていない想いの部分まで分析する必要があります。「このインタビュー結果はもしかしたら…」という、裏側を読み解く視点を大切にし、場合によってはユーザー調査へ立ち戻る必要もあります。

第3段階/概念化(Ideate)

この「概念化」のプロセスでは、 これまでに策定した仮説を受けて、ブレインストーミングやその他の創造的思考技法を駆使し、できる限り多角的なアイデアを創出し、解決策を模索する段階です。

大切な事は、質にこだわりすぎない事と、ネガティブな議論は避ける事です。参加者にポジティブで活発な意見を出させ、独創的な発想を推奨します。思いつくままのアイデアを出来るだけ積極的に出し合い、意見交換による斬新な発想が生まれる可能性を重視します。

第4段階/試作(Prototype)

この「試作」プロセスでは、これまでに創出されたアイデアを実物の形で表現する段階です。この段階では、やはり質にこだわりすぎることなく、低コストかつ迅速な実装が可能なプロトタイプ(試作品)を目指します。

具体的な形になって目の前に現れる事で、それまでの机上の想定では見えてこなかった新たな視点や問題点が表層化します。

第5段階/テスト(Test)

第5段階のプロセスとして、いよいよ「テスト」に入ります。試作品を実際の利用者に体験してもらい、生の反応やフィードバックを得ることで、更なる洗練を重ねていきます。

この一連のプロセスを繰り返す実践こそが、イノベーションを生む源泉であるとデザイン思考は位置づけます。試行錯誤を大切にし、データに基づきながらアイデアをブラッシュアップするサイクルは非常に重要な意味を持ちます。

デザイン思考の特徴は、こうした一連のプロセスについてクオリティを求めすぎずに、ある意味「誤りを許容する」という考えのもとで回していく点にあります。

「ひとまずやってみる」というのは、デザイン思考にとって重要なスタンスです。試行と失敗を重ねることで最高のアイデアが磨かれ、確度の高いソリューションへの収束を目指します。

GeNEE_デザイン思考を活用する具体的なメリット

デザイン思考が開発プロジェクトにもたらすメリットとは?

デザイン思考を導入することにより、プロジェクトにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、4つの項目に分けて解説していきます。

メリット1/アイデア提案のハードルが下がる

デザイン思考には「質を求めすぎない」「まず形にしてみる」「誤りを許容し、糧にしてブラッシュアップの材料にする」という姿勢があります。

これにより、プロジェクト内に「失敗を恐れる必要はない」という認識が広がり、積極的な提案が当たり前の環境が構築されます。

メリット2/イノベーションが進む

デザイン思考は、従来の市場中心型のアプローチとは異なり、ユーザー中心・顧客中心のアプローチです。徹底的にユーザーに寄り添う思考であるため、柔軟な発想に結びつきやすく、イノベーション創出の土壌としては最適な思考法です。

メリット3/多様な意見に対する受容性の向上

デザイン思考は様々な人たちの意見を取り入れる事が前提になります。多様な意見をまとめながら合意形成を図る事が必要なプロセスになるので、プロジェクト参加者にとっては、積極的な意見の発信の背中を押される形になります。

多彩なアイデアが飛び交う環境では、革新的なアプローチが生まれる可能性が高まります。

メリット4/プロジェクトチームの結束力が向上

デザイン思考のプロセスは「チーム内での活発な意見交換」が不可欠です。失敗こそ糧になるという考え方により、プロジェクト内では参加者の肩書きを越えた活発な意見交換が行われます。

このように、デザイン思考は利用者サービスおよび開発プロセスの双方におけるパフォーマンス向上および、開発文化の浸透という大きなメリットをもたらします。

デザイン思考のデメリットについて

デザイン思考は製品やサービス開発において、多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。代表的なデザイン思考の欠点と対処法は以下に挙げてみます。

デメリット1/ゼロベースの開発には不向きである

デザイン思考は、ユーザーの声をベースに「解決」を目指しながら新たなアイデアを創出する考え方です。つまり、何も無いところからの発想には向いていません。ユーザーの声や意見をベースに、新たな視点を持ってイノベーションを起こす事に向いています。

デメリット2/平凡なアウトプットに陥る可能性がある

デザイン思考はプロジェクト参加メンバーの資質に大きく左右されます。ユーザーの意見をそのまままっすぐに受け取り、失敗を前提とした意見交換を避け要望通りのアウトプットを目指してしまう危険性もあります。

広い視野を持ち、ユーザー意見の裏に隠れた本質を探す議論を経由する事が重要です。

また、一方で「斬新さこそ正義」という方向に偏ってしまう危険性も無視できません。デザイン思考で重要なのは「ユーザー意見の裏側まで見渡す視野と、活発な議論」によるイノベーションであり、その結果としてのアウトプットが平凡な物だとしても、的確な物でさえあれば、それはユーザーにとって最良のアウトプットであるという事を忘れてはいけません。

デメリット3/短期成果を重視する組織との相性が良くない

プロジェクトにおいてデザイン思考が本領を発揮するには、多様なアイデアが生まれ試行錯誤できる寛容な文化が必要です。

しかしこれは、短期の効果や結果を求める組織とは必ずしも相性が良いとは限りません。企業やプロジェクトの文化変革なしに導入することの難しさが課題であると言えます。

このようにデザイン思考にもいくつかの弱点や課題が存在します。

デザイン思考の特徴や導入の目的を明確化し、デメリットについても理解を深めた上で、適したプロジェクトでその効果を最大化する必要があります。

まとめ

デザイン思考は「ユーザーの声を受け取り、言語化されていない裏側まで読み解きながらブラッシュアップに結びつける」という思考法です。

デザイン思考を取り入れることで、プロジェクト内の意見交換を活発化し、ユーザー目線のイノベーションを誘発しやすくなります。

一方で「ゼロベースの開発プロジェクトには不向きである」など、その性質を正確に捉え、適したプロジェクトへの導入を意識する事が重要です。

また、デザイン思考は決して「デザイナーの物」ではありません。むしろ、ビジネスやマーケティング、テクノロジーなど、他の専門分野を持つ人たちにこそ導入が必要な思考法です。

一方で、従来のデザイナーも他のビジネス知識を積極的に取り入れる必要が出てきます。

広い視野を持ち、ユーザーの声の裏を見据える洞察力と想像力、そして活発な意見交換が行われる場を作る力こそが、デザイン思考成功への道です。

Webサービスやアプリなどのプロダクト開発では、ユーザの潜在的なニーズやその企業が置かれている状況によって用いるべき技術セットが異なります。弊社GeNEEでは、お客様と綿密な打ち合わせ・ヒアリングを実施した上で最適な技術セットをご提案しています。技術に関するご相談がある方は是非問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

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