公開日:2024.02.05 更新日:2024.03.18

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは何か。顧客体験を高めるためのポイントと事例について解説

スマートフォンの爆発的な普及により、Webサービスやスマホアプリサービスなどのデジタルコンテンツは日々さまざまな形でリリースされています。

それらは優れた機能を持つだけでなく、ユーザーが定着して長く愛されるサービスもあれば、ユーザーの定着を得られずに消滅するサービスもあります。

その要因の直接的な特定は非常に難しいですが、サービスの明暗を分けている最も大きな主要因の一つは「ユーザーが満足する体験を得られたか否か」と言っても過言ではありません。優れたユーザー体験、つまり優れたUX(ユーザーエクスペリエンス)とは何か、本記事ではポイントと事例を絡めながら解説していきます。

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UX(ユーザーエクスペリエンス)とは

UX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉について、近年、特にWeb開発・アプリ開発周辺では活発に耳にするようになっています。UXとは、文字通り「ユーザー体験」のことです。では、なぜ昨今においてUXの注目度が日に日に増しているのでしょうか。

UXという言葉が今のように取り上げられるようになる以前でも、プロダクトやサービス開発において、技術的性能とユーザビリティの両立が軽視されてきたわけではありません。

しかし、スマートフォンの急速な普及を受け、デジタル技術が私たちの生活に加速度的に浸透、比較対象が増加する中で、サービスを利用するユーザーも「使いにくいけど、それでも便利で助かる」という視点から「このWebサイトよりも、他社Webサイトの方が便利だった」といった、複数のWebサービスやアプリを“体験”で比較する視点になってきたのです。

優れたUX実現のポイントは、単にWEBサイトやアプリが使いやすいかどうか、ということだけでなく、より広い視点を持って、ユーザーがそのサービスを利用する全体の体験の満足度に着目することです。

たとえば、ECサイトでショッピングを楽しもうとする際、 最適なUXを実現するためには、ECサイト内の検索機能や商品ページのUIの改善といった利用しやすさの向上に加え、商品発送の速さや繊細さ、返品サポートの手厚さといった購入後の体験まで、一貫した高い質を保つ必要があります。

ユーザーに最高の「感動」や「満足」を提供することがUXなのです。単に「目的を達した」だけでは不十分で、わくわくするような感動体験こそが、顧客満足度向上の鍵、ひいてはビジネスの成長につながります。

そのためには、開発者目線の便利さを盛り込んだサービスを提供するのではなく、実際の利用者であるユーザーの視点に立ち、しっかりとした調査をもとに使い心地のよいサービス作りに努めることが求められます。

優れたUXを実現する上で大切なキーワードが、想定ユーザーの想いに対する共感力です。開発者やサービス提供者とは異なるユーザーならではの課題や感情を理解した上で、最適な解決策を提供していくことがUXデザインには欠かせません。

ユーザーの感動と満足を第一に考え抜くこと。そこにUXデザインの本質があると言えるでしょう。個々の機能を充実させるだけでなく、サービス全体でストレスなく快適な体験を実現できているか。サービスのゴール地点を、WEBサイトやアプリに触れている時間の中に設定せず、サービスの完結までの広い視点を持ってサービスを検証・改善していくことが、これからの時代に求められるUXにとって、非常に重要になっていくでしょう。

GeNEE_UXデザイン設計のプロセス

UXデザインのプロセスについて

前述の通り、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは「ユーザーの感動や満足度」という概念であり、それらは例えばUIのように目に見える物ではありません。

つまり、UXをデザインするということは概念をデザインするということと同義であり、言語化する場合はその「作業プロセス」を解説する場合と「考え方」を解説する場合に分かれます。

当記事では先に「UX(ユーザーエクスペリエンス)とは」と題し、UXの考え方には触れさせていただきましたので、本項では具体的なUXデザインの作業プロセス視点で「UXをデザインするとは」という事柄について解説します。

先に述べた通り、UXとは形の無い概念です。それ故に、そのデザインプロセスに対して「正解はこれだ」と断言してしまうのは難しい分野でもあります。

ここでは、ひとつの例として【定義】→【調査】→【分析】→【デザイン】→【検証】の5つのフェーズに区切って解説をさせていただきます。

フェーズその1/定義フェーズ

はじめに「定義フェーズ」です。

ここでは、サービス開発プロジェクト立ち上げにあたってUXの方向性を決定します。対象となるサービスの範囲、「誰のために何を作ろうか」といったプロジェクトの目的、アウトプット成果物により得たい結果は何かを定義します。

UX担当デザイナーは、幅広い関係者とのコミュニケーションを重視し、提供するサービスについての意見交換を積極的に行います。またUX担当デザイナーはUI部分も考慮し、デザイン設計を施せるとより良いプロダクト開発に繋がります。UIデザインについては、下記ページに詳細を纏めておりますので、ご興味・ご関心のある方はこちらも是非一度ご覧いただけたらと思います。

フェーズその2/調査フェーズ

続いて「調査フェーズ」です。

定義フェーズで獲得したサービスアイディアをベースに、競合サービスや既存サービスの調査およびデータの収集・分析や、新たなユーザー調査の実施を通じてデータを取得・蓄積します。

対象ユーザーへのインタビュー調査や既存類似サービスの調査を積み上げ、サービスアイディアにより具体性を持たせる材料にします。この調査フェーズの成果が、プロジェクト全体の土台になります。プロジェクト途中で何度も振り返る事になる調査データは非常に重要なものになります。

フェーズその3/分析フェーズ

3つめは「分析フェーズ」です。

調査フェーズまでに集まった様々なデータを分析し、ユーザーが何を考え、何を求めるのかを具体的に推論します。

対象ユーザーの特性や行動パターン、ストレスポイントとその要因を明確化し、UXのゴール地点を理解するにあたり、効果的な作業が2つ挙げられます。

それは「ペルソナ作成」と「エクスペリエンスマップ作成」です。

「ペルソナ作成」とは、対象サービスの利用シーンを考えた際に主要なターゲット層となる職業・年齢・性別・生活スタイルなどを可能な限り具体的に設定した、仮想のユーザー像を作成する作業です。

ペルソナを通じて対象サービスについての利用シーンを具体的に想定し、どういった機能が必要とされているかをスムーズに検討できるようになります。UXデザイナー自身が利用者の代弁者となることで、ユーザー体験の最大化を狙います。

データ解析とユーザーへのインタビューに基づいて生き生きとしたペルソナを描けるかどうかが、UXデザインプロセスに大きな影響を与えます。ターゲット層の行動理解が正しければ、適切な機能設計となり、使いやすいサービス開発に繋がっていきます。

一方で「エクスペリエンスマップ作成」とは、ユーザーが製品やサービスを利用する際の経験の流れを可視化する作業です。

ユーザーのサービス利用体験をひとつの旅になぞらえて考えてみます。

エクスペリエンスマップとはつまり、ユーザーが対象サービスという旅に出発してから、目的を達成するまでの一連の体験の流れを、あたかも旅の記録のように可視化したものです。

例えばECサイトであれば、旅への出発をサイト訪問であると仮定します。そこから、商品選び、決済、配送、アフターフォローに至るまでの利用プロセスにおいて、ユーザーが感じるであろう肯定的・否定的体験をシミュレートし、可視化していきます。

こうしたエクスペリエンスマップを作成することで、分析フェーズにおいてユーザー体験全体からの改善領域や改善効果を俯瞰することが出来ます。

また、デザインフェーズで直感的なUI設計に取り組む際に、利用プロセス全体の一貫性や調和を損なわない配慮ができるようになります。 良いエクスペリエンスマップは、単に利用の一連の流れを可視化するだけでなく、ユーザー心理に訴求するポイントをどこに設定するかといった戦略面も含んだ、UX全体の設計図になり得るでしょう。

フェーズその4/デザインフェーズ

4つめは「デザインフェーズ」です。

このフェーズでは、これまでの分析で得られた洞察をもとに解決策を具体的にデザインしていきます。

開発するサイトやアプリ等のスケッチやワイヤー制作を経て、プロトタイプの制作を行います。情報設計を行い、コンテンツ体系の再構築や機能配置の検討を進め、ユーザーフローを固めていきます。

理想的なUXを実現する為のUIデザインも重要な要素となります。

フェーズその5/検証フェーズ

最後は「検証フェーズ」です。

ここでは、作成したデザイン案が期待通りの効果を発揮できるかを実証するため、ユーザーテストやユーザーレビュー、指標分析等を通じて検証を行います。検証結果から再度改善点を洗い出し、追加のブラッシュアップを図ります。

一連のUXデザインプロセスを迅速かつ効果的に回すためには、各フェーズ間での手戻りを最小化することが重要です。十分な前フェーズの作業成果があってこそ、品質の高いUX改善を、より効率的に達成できます。

以上、UXデザインプロセスを5つのフェーズに分けての解説でした。

優れたUXのポイントとは

UXデザインのプロセスまで触れた所で、改めて「優れたUXデザインとは何か」を考えてみたいと思います。それは、単に見た目のカッコよさや操作のしやすさだけでなく、ユーザーがストレスなく目的を達成できるよう、一連の利用シナリオの全てが繋がっていて、直感的かつシームレスな体験の提供に成功し、それにより高い満足度を獲得出来ていることです。

そのためにはまず、ユーザーにとってコンテンツの体系性や機能の分類・配置が、利用目的に対して最適化されている必要があります。適切なUIデザイン通じて、ユーザーが迷うことなく目的到達できるよう導線を作ることが大切です。

適切なUIデザインには、シンプルで一貫した操作体系の実装が欠かせません。必要以上の機能を削ぎ落とし、シンプルな操作手順でストレスなく目的を達成できることを追求する必要があります。

また、グラフィカルなデザイン性も視覚的な操作性確保に大切です。ユニバーサルデザインの考え方も取り入れ、視認性の高いコントラスト使用や、情報密度の調整、白スペースの活用などを通じ、WEBサイトやアプリを使用する際の、ユーザーの負担を軽減することがポイントです。

他にも、マルチデバイス対応やユーザビリティテストの実施、フィードバックと改善の循環の仕組みづくりも、UXを進化させる重要な要素となります。

何よりもまず、常にユーザー目線を忘れず、ターゲットが直面するであろう課題や不便さを適格に想定し、それらの解消と満足度最大化に注力することこそ、優れたUXを実現するポイントになります。

UXデザインの成功事例3選

それでは、UXデザインの成功事例を、私たちの身近なものから3つ程挙げてみたいと思います。

いずれの事例も共通して、シンプルで直感的な操作性と実用性の高い機能提供を両立することが、UXの成功に結びついた要件といえます。ユーザー体験を最大化するという原点に立ち返ったサービス作りができているかが、成功の鍵といえます。

UX成功事例その1/LINE

ひとつ目は、メッセージアプリとして日本国内において圧倒的なシェアを誇るLINEです。シンプルなUIと直感性の高さが魅力のUXを実現しています。音声通話・メッセージ・スタンプという基本機能に徹底的に注力し、インタフェースもシンプルかつ直感的な操作性を追求しています。

圧倒的なシェアを獲得した後も、段階的に追加機能を充実させながら、アプリのパフォーマンスを最優先させ続けているUXデザインサイクルのお手本のようなアプリです。

UX成功事例その2/CokeON

ふたつ目は、コカ・コーラが提供するCokeONです。このCokeONは、自動販売機とスマートフォンアプリを連動させたサービスです。

スマートフォンと自動販売機を繋げることで、キャンペーン情報取得やドリンク購入時のスタンプを獲得出来ます。

「キャンペーン情報を獲得出来る納得感」「スタンプが貯まる楽しみ」「貯めたスタンプとドリンクを交換できるお得感」など、ユーザー満足に繋がる体験をこれでもかと詰め込んでいます。

これだけの体験を常に経験しているユーザーは、CokeON対応自動販売機があれば他社の自動販売機よりも優先して利用するようになると思われます。ユーザー満足度をそのまま企業利益に還元する、非常に優れたUXデザインの成功例だと言えます。

UX成功事例その3/メルカリ

最後に、フリマサイトのメルカリを例として挙げます。スマホを活用したフリマアプリのメルカリは、かつてイベント参加の労力を支払うことによって実現していたフリマ参加を、オンラインで誰でも簡単に楽しめるように変えました。

それにより、だれでもいつでも簡単にフリマ体験が出来るというUXを提供しています。

出品するユーザー目線では、商品の写真撮影・説明文入力といった一連の出品フローが直感的で、気軽に継続的に利用できることが評価されています。またレビューや評価システムを通じてコミュニティの安全性も担保しており、利用者同士が安心して信頼関係を構築できる工夫もUX向上に貢献していると言えます。

まとめ

以上、UX(ユーザーエクスペリエンス)とはなにか。顧客体験を高めるためのポイントと事例について解説をしてきました。

UXとはユーザーの体験の質そのものであり、それは単に操作性や機能性ではなく、サービス全体を通して獲得出来る満足度こそが重要となります。優れたUXを実現する為には、開発するWebサイトやアプリに触れている間だけでは無く、その前後の行動や得られる結果にまで細心の注意を払い、ユーザーに寄り添った体験のデザインが必要です。

優れたUXデザインの実現は、サービスを利用するユーザーの満足度に直結し、その結果は企業利益に結びつく好循環を生み出します。

これからも加速度的に増えるであろう、Webサイトやアプリですが、ユーザーに選ばれ続けるサービスであり続けるために、UXデザインは重要な役割を果たすでしょう。

Webサービス開発やスマホアプリ開発において重要とされるUXデザイン設計。弊社はただWebサービスやスマホアプリを作るだけでなく、ペルソナ像に対するユーザの直接的な反応等を確かめながら正確にUXデザイン設計を進めていきます。「新規事業としてアプリ開発を検討している。」、「今のシステムの操作性が非常に悪く、従業員から沢山のクレームが届いている。」そのようなお悩みをお持ちのご担当者様は是非GeNEEまでお気軽にご相談いただけたらと思います。お客様のニーズや将来的な事業方針をヒアリングした上で最適な開発手法をご提案いたします。こちらの問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

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