公開日:2023.11.21 更新日:2023.11.21

スクラム開発の特徴と流れ、メンバーの役割について解説

スクラム開発は、急速に変化するビジネスの世界にぴったりのソフトウェア開発方法の一つです。スクラム開発では、スプリントと呼ばれる短い期間の中で一つずつタスクをこなし、適宜フィードバックを受けて改善を重ねながらプロジェクトゴールを目指します。

本記事では、スクラム開発の特徴と流れ、メンバーの役割についてわかりやすく解説します。また、スクラム開発を実践してシステムを開発した企業を2つご紹介します。

スクラム開発とは

スクラム開発は、チームがすばやく柔軟にソフトウェアを作る方法の一つです。この方法では、大きなプロジェクトを小さな部分に分けて、それぞれの部分を短い期間(スプリント)で完成させます。たとえば、スマホアプリを作っているチームは、最初の2週間で新しい大まかなデザインを考え、次の2週間でそのデザインをブラッシュアップし、次の2週間でデザインに関連する機能を小規模単位に区切って開発します。スクラムを組むチームは毎日数十分のショートミーティング(デイリースクラム)を行い、進捗状況や課題に感じていることを話し合います。このようなやり方で、チームはすばやく作業を進め、あらゆる問題を迅速に解決しながらプロジェクトを進めていきます。スクラム開発は、変化の激しいプロダクトにも迅速に対応できるので、多くの企業で採用されている開発手法の一つと言えます。

スクラム開発とアジャイル開発の違い

スクラム開発とアジャイル開発は似ていますが、いくつか大きな違いがあります。アジャイル開発は、柔軟に素早く対応するという広範なアプローチです。これは、さまざまな開発手法を含む大きな枠組みで、変化に対応しながら進める方法を指します。一方、スクラム開発はアジャイルの原則に基づいた、より具体的な手法の一つです。スクラムでは、短い期間(スプリント)ごとに目標を設定し、チーム全員でその目標達成に向けて協力します。毎日の短いミーティング(デイリースクラム)で進捗を共有し、計画の調整が行えます。このアプローチにより、チームは小さなステップでプロジェクトを効果的に進めることができます。

スクラム開発とウォーターフォール開発の違い

スクラム開発とウォーターフォール開発は、プロジェクトを進める方法が異なります。ウォーターフォールモデルは、一連の段階を順番に進める方法です。最初に全部の計画を立て、その後一つひとつの段階(設計、実装、テストなど)を順に進めていきます。一方、スクラム開発はもっと柔軟です。プロジェクトをスプリントに分け、各スプリントの終わりに今の成果を見て、次に何をするかを決めます。この方法では、途中で要望が変わっても、すぐに対応することができるのが大きな利点です。

スクラム開発の特徴

スクラム開発には主に以下のような特徴があります。

  • ・コミュニケーション:チームの生命線
  • ・イテレーション:効率的な開発サイクル
  • ・チームダイナミクス:少数精鋭の共同作業

コミュニケーション:チームの生命線

スクラム開発において、コミュニケーションは非常に重要です。この方法では、チームメンバーが頻繁に話し合い、進捗を共有し、課題を解決します。毎日行われる短いミーティング(デイリースクラム)は、チームの連携を強化し、プロジェクトの方向性を正確に保つために不可欠です。効果的なコミュニケーションは、スクラムの成功の大きな要因に繋がります。

イテレーション:反復的な開発サイクル

イテレーション、すなわち反復的な開発サイクルは、スクラムの最も重量な要素です。プロジェクトは短い期間(スプリント)に分割され、各スプリントでは特定の目標を達成します。このアプローチにより、プロジェクトは段階的に進み、定期的に成果物を生み出すことができます。これにより、途中での変更や改善がしやすくなります。

チームダイナミクス:少数精鋭の共同作業

スクラムでは、小さなチームが協力して作業を進めます。この「少数精鋭」のアプローチは、チームメンバーがお互いの強みを活かしながら、効率的に作業を進めることができます。各メンバーはそれぞれ担当範囲を持ち、それらを進めながらシステム開発に取り組みます。このようにして、スクラムチームは機動的かつ効率的に目標に向かって進むことができます。

スクラム開発の流れ

スクラム開発は以下の流れで進めていきます。

  • ・プロダクトビジョンの策定:バックログの作成
  • ・スプリント計画:目標へのロードマップ
  • ・デイリースクラム:連携と進捗の同期
  • ・スプリントレビュー:成果の検証と調整
  • ・レトロスペクティブ:反省と進化の瞬間

プロダクトビジョンの策定:バックログの作成

スクラム開発はまず、プロジェクトの目標と全体像を描くプロダクトビジョンの策定から始めます。この段階では、製品やサービスが達成するべき主な目標を決めていきます。たとえば、新しいモバイルアプリを開発する場合、「ユーザーが日常のタスクを効率的に管理する」というビジョンを設定することがあります。ビジョンが明確になると、プロダクトバックログの作成に進みます。プロダクトバックログは、実行すべきタスクや機能のリストで、具体的な機能、改善点、修正すべきバグなどを含みます。このリストにより、プロジェクトに必要な作業が整理され、何を優先すべきかが明確になります。

スプリント計画:目標へのロードマップ

スプリント計画はスクラム開発の初期段階で行われる重要なプロセスです。ここでは、チームが集まり、次のスプリント(通常は2週間から4週間の作業期間)で達成する目標を決めます。プロダクトバックログから優先度の高いタスクを選び出し、それらを達成するための具体的な計画を立てます。この計画作成には全チームメンバーが参加し、それぞれのタスクに対する理解を深め、誰が何をするかを決定します。この段階で明確な目標と計画を立てることは、スプリントの成功に直結します。

デイリースクラム:連携と進捗の同期

デイリースクラムは、毎日短時間(通常15分以内)行われるチームのミーティングです。この会議の主な目的は、メンバーが互いに前日の仕事の進み具合やその日の予定、そして仕事の邪魔になっている問題点を話し合うことです。この毎日のやりとりによって、チーム全員がプロジェクトの最新状況を共有し、同じ理解を持つことができます。問題が起きたときには、みんなで速やかに解決策を見つけることができます。デイリースクラムは、お互いの活動を透明にし、協力しやすい環境を作るのに役立ちます。

スプリントレビュー:成果の検証と調整

スプリントレビューは、スプリントの終わりに行われる重要なミーティングです。この会議で、チームはスプリント中に行った作業を振り返ります。ここでの主な目的は、その期間に完成したタスクや機能を確認し、それらに対するフィードバックを集めることです。メンバー同士で成果を共有し、何がうまくいったか、どのように改善できるかを話し合います。このレビューを通じて、チームは次のスプリントの計画をより良くするための調整を行い、製品の品質を継続的に向上させることができます。

レトロスペクティブ:反省と進化の瞬間

レトロスペクティブは、スプリントの終わりに行われるもう一つの重要なミーティングです。この会議の目的は、スプリントの過程で学んだことを振り返り、今後の改善点を見つけ出すことにあります。チームは、何がうまくいったか、何が課題であったかを共有し、改善策を出し合います。このプロセスを通じて、チームは継続的な自己評価と成長を促進し、より優れたスクラムチームになっていきます。

スクラム開発のメンバーの役割

スクラム開発に参加するメンバーの役割には以下があります。

  • ・プロダクトオーナー(PO)
  • ・スクラムマスター(SM)
  • ・ステークホルダー
  • ・開発エンジニア

プロダクトオーナー(PO)

プロダクトオーナー(PO)は、スクラムチームにおいて製品のビジョンと方向性を決定する重要な役です。POは製品に追加される機能や改善点のリストを管理し、それを優先順位に応じて整理します。例えば、あるウェブアプリケーションのPOは、ユーザーからのフィードバックや市場分析を基に、どの新機能を次に追加するかを決める責任があります。POは、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、チームが顧客のニーズに対応できるようにする役割も担います。

スクラムマスター(SM)

スクラムマスター(SM)は、スクラムプロセスが適切に実行されていることをマネージメントする役割です。SMはチームがスクラムの原則に従って作業を進められるようにし、障害の除去やプロセスの改善を行います。例えば、スクラムマスターは毎日のデイリースクラムミーティングを上手に進行させ、チームメンバーがお互いの進捗を共有しやすい環境を作ります。また、プロジェクトに不必要な干渉や中断がないよう、外部の問題を解決することもあります。スクラムマスターはチームの指導者として、メンバー一人ひとりの成長を促し、チーム全体をスキルアップさせます。

ステークホルダー

ステークホルダーとは、プロジェクトに関わる人たちで、その成果に直接的な関心を持っています。顧客、投資家、会社の上層部などがこれに該当し、彼らはプロジェクトの成否によって影響を受けることになります。ステークホルダーは、プロジェクトに何を期待しているかを明らかにし、それを基にプロジェクトの目標を定める手助けをします。彼らはプロジェクトの進行についての重要な意見を提供し、プロジェクトが順調に進むためのフィードバックを与えます。それにより、プロジェクトは効果的に前進し、より良い製品の開発に繋がります。

開発エンジニア

開発エンジニアは、スクラムチームの中核を成すメンバーであり、実際の製品開発を担当します。彼らはプロダクトバックログの項目を踏まえて開発を進め、品質の高い製品を作り出すために協力します。例えば、ウェブアプリケーションの機能開発、バグの修正、ユーザーインターフェースの改善などが含まれます。開発エンジニアは技術的な専門知識を持ち、チーム内でアイデアを共有し、最適なソリューションを見つけるために協力します。彼らはプロダクトオーナーやスクラムマスターと連携し、システム開発に不可欠な存在です。

スクラム開発の開発事例

スクラム開発の事例として以下の企業を紹介します。

  • ・メルカリ
  • ・SmartHR

メルカリ

メルカリは、かなり前からスクラム開発を採用しており、日本最大のフリーマーケットアプリを成功させました。開発/UIUXデザインチームはスプリントごとに短期的な目標を設定し、迅速な機能実装や改善を行いました。例えば、ユーザーからの直接的なフィードバックに基づき、商品検索機能の改善や決済プロセスの最適化が実施されました。また、アプリの安全性を高めるための新たな認証システムの導入なども、スクラムの柔軟なフレームワークを活用して行われました。メルカリの成功は、スクラムを採用して迅速に市場の要求に反応し、ユーザー体験を継続的に向上させたことによりもたらされたといっても過言ではないでしょう。

SmartHR

SmartHRは、スクラム開発を取り入れて、SaaS型の人事・労務管理プラットフォームの開発を行いました。スクラムの原則に従い、開発チームは短いスプリントを用いて、顧客からのフィードバックや市場の要求に応じた製品の改善を行いました。例えば、労働法の変更に対応するための機能更新や、ユーザーインターフェースの使いやすさの向上が実施されました。また、顧客からの要望に基づいて新しい報告機能の追加やデータ管理の改善なども随時行われています。スプリントの各段階で、チームは製品の進捗を評価し、必要に応じて計画の見直しを行いました。SmartHRの開発プロセスは、スクラムを用いることで柔軟かつ効果的なプロダクト開発が可能になることを示した良い例と言えるでしょう。

まとめ

本記事では、スクラム開発の特徴、その流れ、そしてチームメンバーの役割について解説しました。またスクラム開発を取り入れた成功事例として、メルカリとSmartHRを取り上げています。スクラム開発は、メンバー間の効果的なコミュニケーション、短いサイクルでの目標達成を目指すイテレーション、そして協力的なチームワークを通じて、迅速かつ柔軟なソフトウェア開発を実現しています。さらに、プロダクトオーナー、スクラムマスター、ステークホルダー、開発エンジニアの各役割が担う立場をしっかりと理解により、プロジェクトの円滑な進行が可能になります。

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