「MVP開発」は、Minimum Viable Productの頭文字をとった言葉で、必要最小限の機能を実装したプロダクト(アプリサービスやWebサービス、SaaS型サービスなど)の開発を意味します。今回の記事では、新規事業や新規サービス開発の立ち上げを効率的に行うMVP開発に注目し、そのメリットやデメリット、開発のポイントについて解説していきます。
MVP開発とは?
先述の通り、MVP開発はユーザや市場が価値を感じる必要最小限の機能を持ち合わせたプロダクトを意味します。
MVP開発は、時間や資金といった経営資源が限られたスタートアップ企業によく採用されます。期間を定め、その中でMVPをユーザや市場に向けて上市し、得られたフィードバック情報をもとにPDCAサイクルを繰り返すことで、そのプロダクトを本開発すべきか否か、顧客や市場の潜在的需要を検証します。
MVPと類似する言葉にプロトタイプ(試作品)という言葉が存在します。このプロトタイプは大量生産する前段階として問題点の最終確認を目的として制作されるプロダクトを意味しています。従いまして、MVPのように必要最小限の機能を兼ね備えたプロダクトとは別の意味で使用されます。
MVP開発のメリット
MVP開発を採用するメリットは大きく3つ存在します。以下ではそれぞれについて解説します。
MVP開発のメリット1:開発の初期投資を抑えることができる
最も大きなメリットは、開発の初期投資を抑制できることです。MVP開発を取り入れる場合、開発する機能や画面は最小限に留めることになります。もちろん多機能にした方がユーザにとっての利便性や使い勝手は向上しますが、MVP開発ではそれをあえて行いません。機能性以上にコスト感や開発速度を重視するのです。立てた仮説が「競合他社のアプリサービスにはAという機能が存在しないが、〇〇の市場調査を踏まえると、A機能には潜在的かつ大きなニーズが存在する。」というような話であればA機能を備えたモバイルアプリを開発し、特定の市場もしくは特定の顧客を対象にサービスを提供し、その反応を見るのです。A機能の他、B機能、C機能、D機能と機能数が増えるとその分開発にかかるコストを増大します。MVP開発では、コストとスピードを重視し、立てた仮説のみを検証するのです。
MVP開発のメリット2:プロダクトの開発速度が上がる
MVP開発のメリット1でも少し触れましたが、開発する機能対象を絞り込むことで開発速度は上がります。初期段階から「手厚く設計・開発し、ユーザに受け入れられるプロダクトを提供したい。」という気持ちも分かりますが、完璧に設計・開発しても外的環境要因(競合他社や市場動向、法規制・法事情など)の影響を受けて撤退という結果に陥ったプロダクトが多数存在するのも事実です。MVP開発では、ユーザや市場の反応を確かめながら改善活動を繰り返します。そのため、開発速度も非常に重要な要素の一つであり、メリットの一つでもあるのです。
MVP開発のメリット3:ユーザや市場から貴重なフィードバックが得られる
MVP開発のメリットの3つ目はユーザや市場からのフィードバックが得られることです。例えば、美容整形の口コミアプリサービスを開発するとしましょう。流行る流行らないは置いておき、MVPとして必要となる機能はどのようなものが上げられるでしょうか。それは、口コミの情報量かもしれませんし、どのような人が口コミを書いているか(実名制か匿名性か)かもしれません。もしかすると、口コミ対象(クリニックに対する口コミか医師に対する口コミか)や口コミから予約までの導線が重要になるかもしれません。仮説を構築した後、実際にMVPを開発し、特定の顧客や市場にリリースすることでそれらの仮説検証が妥当であったかが検証できるのです。そこから得られるフィードバック情報は非常に価値のあるものになるでしょう。
MVP開発のデメリット
前章ではMVP開発のメリットについて解説しました。メリットを見ていただくと「MVP開発のデメリットは存在しないのでは?」と思われるかもしれません。しかしながらMVP開発にもデメリットはいくつか存在します。本章ではMVP開発のデメリットについて説明したいと思います。
MVP開発のデメリット1:仮説次第ではコスト高になる可能性を秘めている
立案した仮説の質が高いと、MVP開発後の本開発もスムーズにいく可能性が高いですが、仮説の質が低い場合、検証段階で軌道修正が必要となることも想定されます。その場合、MVP開発が一度では終わらないことになるでしょう。新規事業や新規サービスの成功確率は非常に低いものなので、MVP開発を行う回数によってはコストが高くつく可能性を秘めています。
MVP開発のデメリット2:本開発移行への見極めが難しい
MVP開発という言葉は登場してからまだ十年も経過していません。そのため学術的にも実務的にもまだ情報量は十分に存在していません。そのため、MVP開発から本開発へ移行するか否かは企業の中で判断しなければなりません。その判断には、ビジネス的な判断だけでなく、技術的・デザイン的・マーケティング的な複合的要素が絡み合います。そのため、MVPの知見やノウハウがあり、専門スキルを持ち合わせた開発会社やマーケティング会社との連携が必要不可欠になってきます。
MVP開発のデメリット3:関係組織の理解獲得、根回しが大変
こちらは大手企業がMVP開発を行う場合のデメリットになります。内部統制機関が働き、かつブランディング維持を目的とした対外活動(広報等を含む。)を行う大企業ではMVP開発時点のプロダクトをリリースすることはなかなか難しいことです。新規事業や新規サービスを開始するとなった場合、関係組織の責任者への説明回りや根回しは手厚く行う必要があり、これも一つのデメリットになり得るでしょう。
MVP開発のポイント
前章ではMVP開発のメリットとデメリットについて解説しました。本章ではMVP開発を進めるにあたり、重要となるポイントについて説明します。
開発ポイント1:常時、「最小限の機能実装」を意識すること
プロジェクト開始前は「MVP」の意味を理解していてもプロジェクトが進行する過程の中で、関係組織へのヒアリングやアンケートを通じて、色々な意見や指摘が飛び交い、結果的に「あれもこれも機能追加したい。」と考えるプロジェクトマネージャーは多数いらっしゃいます。しかしながらそれではMVP開発と行う意味がありません。エンドユーザの視点から見ると、MVPとして完成したプロダクトは不格好に見えます。しかしながらあくまでMVPは試験段階であって試作品のようなものです。まだ最終完成品ではありません。不格好に見えて仕方がないのです。その代わりとして開発コストや時間を抑制して顧客や市場のフィードバックを獲得し、そこからサービスの方向性を逐次決定していくのです。
開発ポイント2:要所要所のゴールを明確にすること
先述の通り、MVP開発を採用した場合にはPDCAサイクルを高速で回転させる必要があります。PDCAサイクルは、Plan:計画、Do:実行、C:確認、A:対策・改善であり、計画時には明確なゴールを定めることが大切です。例えば、アンケートアプリであれば、何人のユーザに利用してもらい、どのような回答結果を得られる必要があるのか、離脱率は何パーセント以内に抑える必要があるのか、など具体的な数値目標(KPI)を定めるのです。立てた計画がActの工程で達成されているのであれば問題ありませんが、仮に未達の場合には次なる改善策を立案する、もしくは撤退等を検討しなければなりません。多くの会社様ではこの数値目標の設定が曖昧だったりします。
開発ポイント3:適切なプロジェクト体制の構築
MVP開発の成功は、エンジニアの力だけでは成し遂げられません。技術を扱うエンジニアの他、UI/UXの細部を調整するデザイナー、対象の業界知識・ノウハウを兼ね備えたビジネス・ディレクターもしくはコンサルタント、MVPの内容、スケール性の有無によっては負荷試験や性能試験を取り扱うQAテスターの存在が必要不可欠です。正しいプロジェクト体制を構築することでMVP開発の成功確度もグッと上がります。
おわりに
本記事では、MVP開発のメリット、デメリット、開発のポイントについて解説しました。MVP開発を採用することで、開発投資を最小限に抑えながら市場変化に合わせたビジネスモデルの構築が可能になります。今後モバイルアプリサービスやSaaS系のサービス構築を思案されている方は、繋がりのある開発会社やコンサルティング会社に相談をしてみてはいかがでしょうか。勿論、弊社・GeNEEも下記の問い合わせフォームからご相談を受付しておりますので、お気軽にご相談・ご連絡いただけたらと思います。
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