
目次
新規事業を成功させる鍵は、「狙い目」を感覚や流行で決めるのではなく、論理とデータに基づいて戦略的に設計することにあります。
本記事では、自社にとって最適な事業領域をどのように見つけ、仮説検証と戦略設計を経て事業化していくのか、その具体的な視点と手順を体系的に解説します。さらに、最新トレンドや政策動向を踏まえた注目分野や、失敗しやすい領域の見極め方も紐解いていきましょう。
新規事業の狙い目選定でよくある失敗パターン

新規事業の成否は、実行力以上にどこを狙うかでほぼ決まります。しかし、狙い目選定の段階で多くの企業が同じような失敗を繰り返しています。ここでは特に陥りやすい代表的なパターンを整理します。
市場トレンドだけで判断してしまう
「今伸びている」「話題になっている」という理由だけで参入分野を決めてしまうケースです。
トレンド自体が悪いわけではありませんが、すでに競争が激化している可能性や、自社が後発になるリスクを十分に考慮できていないことが多く見られます。
重要なのは、「なぜその市場が伸びているのか」、「成長市場の中で自社がどのポジションを取れるのか」までを考えることです。
トレンドは「狙い目の根拠」ではなく、あくまで検討材料の一つに過ぎません。
自社の強みと切り離して考えてしまう
新規事業になると、既存事業とは別物として考え、自社の技術・顧客基盤・組織的な強みを活かせない領域を選んでしまうことがあります。
その結果、価格競争になったり、想定以上の時間やコストがかかり検討が前に進まない、強みと切り離しているため、社内の理解が得られにくいといった問題が起きやすくなります。
狙い目とは「市場として魅力的か」だけでなく、自社は成立させやすいかという視点で設計されるべきものです。
市場規模だけでGO判断する
「市場規模が大きいから」「将来的に◯兆円市場だから」といった理由でGO判断をしてしまうのも典型的な失敗です。
市場規模が大きいことと、初期フェーズで事業として成立するかどうかは別問題です。
特に新規事業では、以下の成立単位の視点か欠かせません。
- 最初に狙う顧客は誰か
- 小さく始めても利益が出る構造か
- 実績ゼロの状態で受注・導入されるか
つまり、市場規模はスケール後の話として捉える必要があります。
生成AIが出したアイデアをそのまま狙い目と判断してしまう
近年増えているのが、「新規事業の狙い目が分からない → 生成AIに聞く → 出てきた案を採用する」という判断です。
生成AIは非常に優れたツールですが、それ自体が狙い目を判断してくれる存在ではありません。
生成AIは、アイデアの発散や視点の洗い出し、既存の事例といった思考の補助は得意です。しかし、市場の温度感や顧客の本当の課題、事業としての成立の可能性は判断できません。
なお生成AIはどこで使うべきか・使わないべきかは以下で整理しています。
| 生成AIを使うべき場面 | 生成AIを使うべきでない場面 |
|---|---|
| 初期アイデアの壁打ち・発想の広げる | 狙い目の最終判断 |
| 論点整理や仮説の言語化 | 事業化のGO・NO判断 |
| 既存市場や事例の俯瞰的な把握 | 顧客ニーズの確定 |
生成AIは、狙い目を「見つけてくれる存在」ではなく、 狙い目を「設計するための補助線」として使うことで初めて価値を発揮します。
新規事業の狙い目を「設計する」という考え方を、生成AIを活用しながら実務に落とし込む方法について、1月に無料ウェビナーで詳しく解説します。
この失敗を避けるためにも、次章で述べる「狙い目は後から説明できる設計物である」という考え方が重要になります。
失敗から見えてくる「狙い目」の正しい捉え方

新規事業の成功確率を左右するのが「どこを狙うか」の判断です。前章で解説したように直感や一過性のトレンドに飛びつくのではなく、論理と構造をもって狙い目を見極める視点が求められます。
ここでは、「狙い目を探す前の前提→設計思考への転換→説明可能性」という3つの段階で“狙い目の本質”を理解していきます。これにより、感覚論ではなく論理に基づいた狙い目の捉え方が身に付きます。
狙い目をつける前にやるべき前提条件
どれだけ魅力的な市場に見えても、前提条件が整っていなければ、事業は成立しません。
狙い目を探る前に、まず以下の3点を明確にしておく必要があります。
| 前提条件 | 内容 |
|---|---|
| 自社のコア資源 | 技術・人材・ブランド・顧客基盤など、再現性のある優位性を棚卸しする |
| 事業にかけられるリソース | 投下できる予算、チーム体制、検証期間などを現実的に見積もる |
| 目的とKGIの明確化 | 収益性重視か、シェア獲得か、既存事業との相乗効果かを定める |
この土台が曖昧なままでは、どれだけ狙い目を分析しても空回りします。「狙い目を探す前に、自分たちは何者かを定義する」ことは事業設計の出発点として、極めて重要なプロセスです。
狙い目は偶然見つかるものではない
多くの人が誤解しがちですが、狙い目は偶然出会うものではありません。市場や業界を分析し、自社の強みや戦略と重ね合わせながら「意図的に設計する」ものです。
狙い目を設計するには、以下のような視点が欠かせません。
- 自社の戦える領域を明確にする
→既存事業の延長や、活用できる資源から考える。 - 顧客ニーズと市場構造を読み解く
→定量・定性両面の情報から、需要の有無とその背景を探る。 - 環境要因(政策・技術・社会変化)を見据える
→外部環境の追い風があるかをチェックする。
狙い目とは、偶発的に見つかるチャンスではなく、論理と情報を積み重ねて「設計」していくものです。その認識があるかどうかで、事業開発の精度は大きく変わるでしょう。
狙い目は後から“説明できる構造”である
本当に良い狙い目は、後から第三者に説明できる構造を持っています。
たとえば、
- なぜこの市場なのか
- なぜこの顧客なのか
- なぜ今なのか
- なぜ自社がやる意味があるのか
これらに対して、感覚ではなく論理で答えられる状態が重要です。
この意味で狙い目とは、ひらめきの産物ではなく、複数の要素を意図的に組み合わせた「設計物」です。
生成AIやフレームワークは、この設計を補助するための道具としては有効ですが、設計そのものを代替してくれるわけではありません。
次章で紹介する「6つの基本指針」は、この設計を属人的な勘に頼らず、再現性を持って行うための判断軸です。
新規事業の狙い目を見つけるための6つの基本指針

狙い目の市場や分野を論理的に見極めるには、複数の視点から事業性を判断する必要があります。特定のトレンドや話題性だけで意思決定してしまうと、実態が伴わないまま方向性を誤るリスクが高まるでしょう。
ここでは、新規事業の狙い目を選定するうえで重要な6つの判断軸を紹介します。
ユーザーニーズが顕在化しているか
どれだけ革新的なアイデアでも、ユーザー自身が課題や欲求を自覚していなければ、購買行動には結びつきません。つまり、事業が成立するには、ニーズが明確に「存在している」だけでなく、それが「顕在化」していることが必要です。
例えば、待ち時間の短縮や面倒の解消といったニーズは、言葉にはされなくても行動に現れやすく、検証しやすい特徴があります。逆に「なんとなく便利そう」というレベルのニーズでは、初動での成果が見えにくくなります。
市場調査やヒアリングを通じて、顧客がすでに不満や不便を感じている領域を見つけられるかどうかが、狙い目の見極めにおける出発点となるでしょう。
競合が少なく独自性を打ち出せるか
参入市場を検討する際には、競合の数や構造を必ず確認すべきです。特に資本力やブランド力で劣るスタート段階では、レッドオーシャンに飛び込むのはあまりに危険な選択です。
狙うべきは、競合が少ないか、競合がいても自社ならではの独自性を明確に出せる市場です。例えば、同じ業界内でも提供価値やターゲット層をズラすだけで、競合性は大きく変わってくるでしょう。
既存企業との比較ではなく、「自社の打ち出し方次第で、差別化できるか」という視点で、参入余地を見極めることが重要です。
模倣されにくいビジネスモデルかどうか
事業のスケールを考えるうえで避けて通れないのが、「真似されやすいかどうか」の問題です。模倣が容易なビジネスモデルは、短期的には成功しても長期的には価格競争に巻き込まれやすく、収益性を確保しづらくなります。
模倣を防ぐには、以下のような構造的な工夫をしてみましょう。
- 自社固有の技術やデータに依存したモデル
- コミュニティ型やプラットフォーム型の構築
- 顧客との継続的な関係性(サブスクリプションなど)
仮にアイデア自体がシンプルであっても、実行のプロセスや組み立て方で独自性を出せるよう設計することが大切です。
自社の強みを活かせる領域か
新規事業というと「まったく新しいこと」に目が行きがちですが、既存の経営資源をいかに活用できるかが成功の確率を大きく左右します。
ここでいう強みとは、単に技術力や人材といった資産だけではありません。顧客との信頼関係、業界内のネットワーク、特定領域での知見など、暗黙的な資源も含みます。
ゼロからすべてを立ち上げるのではなく、既存の強みをレバレッジできる領域に絞ることが、早期の立ち上がりや費用対効果の面でも極めて重要です。
市場の成長性とタイミングを見極めているか
事業アイデアそのものが優れていても、市場のタイミングを誤れば成果には結びつきません。市場が成長フェーズにあるか、衰退局面に入っていないかを正しく見極めることが必要です。
また、参入タイミングも重要です。成長市場であっても、すでに寡占化が進んでいれば後発組は不利になります。一方で、まだ成熟していない段階で入れば、初期コストがかさむリスクもあるでしょう。
その分野における政策動向、投資マネーの流れ、ユーザー行動の変化などを読み解きながら、「今」動くべきかどうかを判断する目を持つことが求められます。
スケール前に「小さく成立」させられるか
大きく育てることを前提にしながらも、まずは小さく実現できるかどうかは事業化の成否を左右する視点です。いわゆるリーンスタートアップの考え方で、初期段階では「小さく・早く・安く」検証する必要があります。
ここで重要なのは、以下の2点です。
- 限られたターゲット層に、明確な価値提供ができるか
- 仮説検証が回る最低限のプロダクト・サービスを構築できるか
小さく始めて反応を見ながら軌道修正できるかどうかは、リスクを最小化しながら事業を育てていくための大きな鍵となります。
狙い目を逃さない情報収集とインプットの方法

狙い目を設計するうえで欠かせないのが、日々の情報収集とインプットの習慣です。良質な事業アイデアの多くは、特別なひらめきではなく、蓄積された情報の掛け合わせから生まれます。しかし、目の前の業務に追われるなかで、自分の外にある変化や兆しを捉えるのは簡単ではありません。
ここでは、新規事業のヒントとなる情報を見逃さず、適切に取り入れるための4つの視点と実践方法を紹介します。
情報のアンテナを日常的に広げる
情報収集は特別な行為ではなく、日々の習慣として取り入れてこそ効果を発揮します。新聞や専門誌を読むことに加え、SNSや動画メディアからも業界外の動向を知ることが可能です。
以下のような情報源を組み合わせておくと、偏りのないインプットが得られます。
| 情報源 | 特徴と活用方法 |
|---|---|
| 日経・朝日などの経済紙 | 政策・マクロトレンドの把握に有効 |
| 業界専門メディア | 特定分野の深掘りに適している |
| Twitter、note、Voicy | 実務者のリアルな声や最新の動向を拾える |
| 海外ニュースサイト | 先行事例の発掘やグローバルな視点の獲得 |
常に情報に触れていると、業界やテーマを問わず、「これは事業に活かせるかもしれない」という発想が自然と生まれるようになるでしょう。
異業種や隣接領域からの着想法
事業の着想は、同じ業界の中からだけでは限界があります。むしろ異業種や隣接領域に目を向けることで、既存の常識を打ち破るヒントが得られることが多いです。
効果的なアプローチ方法例
- 製造業が小売業のサブスクモデルを応用する
- 医療業界がホテル業の顧客体験設計を取り入れる
- 教育業がエンタメ業界のゲーム要素を参考にする
異業種のビジネスモデルやサービス構造を分析し、自社の文脈に落とし込むことで、他社とは異なる「勝ち筋」を設計できるようになります。
国の支援策や規制緩和に着目する
新規事業の狙い目を探すうえで、政策や制度の動きにアンテナを張ることは極めて重要です。国や自治体の支援策、規制緩和の動きは、新たな市場やサービスの創出に直結するからです。
特に注目すべき情報は以下の通りです。
| 政策動向 | 期待できる狙い目 |
|---|---|
| 人的資本経営、働き方改革 | HRテック、リスキリング支援サービス |
| GX(グリーントランスフォーメーション) | 再生可能エネルギー、省エネ関連ビジネス |
| 医療・介護のデジタル化 | 遠隔診療、地域包括ケア連携ツール |
| 地方創生関連施策 | 観光×デジタル、地場産業支援事業 |
助成金や補助金を活用することで、初期リスクを抑えて検証に踏み出すことも可能です。政策の「風向き」を読む力は、狙い目の選定における大きなアドバンテージとなるでしょう。
一次情報に触れることの価値と実践方法
ネット検索やメディアから得られる情報は便利ですが、最も価値があるのは現場の一次情報です。リアルな顧客の声、取引先の課題、現場スタッフの肌感覚などは、表層的なデータからは見えてきません。
一次情報に触れる方法
- 顧客やユーザーへのインタビューやアンケート
- 展示会や業界イベントへの参加
- フィールドワークによる現場観察
- 営業部門やカスタマーサポートとの定期的な対話
自社の内と外にある「声」を丁寧に拾い上げることで、他社では気づきにくいニーズや違和感を見出せるようになります。その積み重ねが、真に価値ある狙い目の発見へとつながるでしょう。
事業アイデアの精度を高める仮説検証の進め方

どれだけ魅力的に思える事業アイデアも、それが本当に顧客に受け入れられるかどうかは、実際に動かしてみなければわかりません。仮説を立てて、検証し、改善を重ねるという一連のプロセスこそが、新規事業を形にするための基本動作です。
ここでは、狙い目を実際の事業へと落とし込んでいく際に必要となる、仮説検証の考え方と進め方を4つの視点から解説します。小さく、早く、正確に確かめていくことで、リスクを抑えながら意思決定の精度を高めていく方法論です。
アイデアは「試してみる前提」で考える
最初の事業アイデアは、あくまで仮説に過ぎません。頭の中だけで完結させず、「試して確かめる」ことを前提に設計する姿勢が重要です。
特に、新規事業においては以下のような前提に立つべきでしょう。
- 完成度よりも検証可能性を優先する
- 失敗することを前提に検証を設計する
- 市場の反応をもとにアイデアを育てる
思いついた時点ではどれも正しく見えるものです。だからこそ、最初から正解を探そうとするのではなく、試行を繰り返す中で正しさを見極める視点が必要になるのです。
小さく検証するためのMVP設計とは
仮説検証を効率よく進めるためには、最小限の機能で顧客の反応を確かめる「MVP(Minimum Viable Product)」の設計が鍵となります。最初から完成品をつくるのではなく、「これで価値を伝えられる最低限の形」をつくることが目的です。
関連記事:MVP開発とは?開発にかかる期間やコスト、PoCやプロトタイプとの違いについて解説
MVPの例
| MVPのタイプ | 特徴と活用例 |
|---|---|
| ランディングページ | コンセプトを伝えて資料請求や予約受付などの反応を見る |
| プロトタイプ | UIや機能の一部だけを試作し、利用シーンを体験してもらう |
| 手動対応サービス | 裏側は手作業でもよいので、サービスとして体験してもらう |
| 有償テスト販売 | 少量・限定条件で販売し、実際の購買行動を確認する |
MVPはコストを抑えながら、本当にニーズがあるかどうかを確認するための「現実に近い仮説検証ツール」です。完璧さではなく、検証のしやすさを最優先に設計することが成功のポイントです。
顧客の声をどう検証に活かすか
顧客の反応は仮説を修正するうえで非常に重要ですが、表面的な声だけを鵜呑みにしても正しい判断にはつながりません。必要なのは、反応の「奥」にある背景や動機を読み解く力です。
有効な検証の進め方
- 質問ではなく、行動を観察する(例:申し込み完了率、途中離脱率)
- 質問する場合は「なぜそう思ったか」を深掘りする
- 事前期待と事後満足のギャップを定量・定性で分析する
顧客が語ることと、本音や行動の間にはギャップがあるのが普通です。だからこそ、「聞く」だけでなく「試す」「測る」「比べる」を組み合わせて、実態に迫る工夫が欠かせません。
データから導く狙い目の具体化手順
仮説を精緻化していくうえで、定性的な情報だけでなく、客観的なデータによる裏付けが欠かせません。市場規模、検索数、トレンド推移、競合の動向など、様々な情報を組み合わせることで、狙い目の精度が高まります。
狙い目をデータから絞り込むための手順
- 仮説となるニーズや市場をリストアップする
- GoogleトレンドやSNSで関心度を調べる
- 競合の有無や類似サービスの成功・失敗事例を確認する
- 想定顧客のボリューム感(BtoBなら業種・企業規模)を推計する
- 必要なリソースと実現可能性を初期段階で見積もる
このように、感覚に頼らず、情報とデータで絞り込みを行うことで、「狙い目」が再現性ある設計に変わります。
今注目されている新規事業の狙い目トレンド5選

新規事業を構想する際、将来性のある成長分野を視野に入れることは不可欠です。ただし、話題性だけに飛びつくのではなく、政策・産業構造・技術進化・社会課題といった背景を読み解いたうえでの判断が求められるでしょう。
ここでは、実際に動きが加速している市場領域から、今、狙い目として注目される5つのトレンドテーマをピックアップしました。単なる流行ではなく、制度・課題・ユーザーニーズに根差した「本質的に伸びる」分野に絞って解説します。
働き方改革・人的資本経営に関連したサービス
企業の人材マネジメントは今、大きな転換期を迎えています。人的資本の情報開示義務化や、リスキリング支援の強化など、国を挙げた「人への投資」推進が事業機会を生み出しています。
注目されるサービス領域
| 分野 | 狙い目のサービス例 |
|---|---|
| リスキリング・教育支援 | オンライン研修、学習管理SaaS、eラーニング講座制作 |
| 組織診断・エンゲージメント測定 | ピープルアナリティクス、1on1支援ツール |
| 健康経営・メンタルヘルス | ウェルビーイング支援SaaS、産業医とのマッチング |
企業は「人材を守る・育てる・活かす」ための新たな手段を求めており、BtoB型の新規事業を構想するうえで、非常に狙いやすいテーマです。
BtoB SaaS市場の再成長領域
一時期は飽和感もあったBtoB SaaSですが、特定業界・特定業務に特化した「ドメインSaaS」や、AI活用を前提に再設計されたプロダクト群が新たな波を生みつつあります。
狙いやすい再成長テーマ
- 業界特化型(建設、物流、介護など)× 業務改善SaaS
- ノーコード・ローコードによる業務フロー最適化
- インボイス制度・電子帳簿保存法など法改正に対応した業務支援
特定ニーズに深く入り込み、「顧客の面倒を減らす」SaaSは今なお高い成長余地を持っています。また、既存ソリューションの不満点を吸収しやすく、参入障壁も比較的低めです。
地方創生と観光DXを掛け合わせた事業
人口減少と高齢化が進む中、地域経済を支える新しい仕組みづくりが求められています。その中核として注目されているのが、観光資源とデジタル技術を掛け合わせた「観光DX」領域です。
代表的な狙い目
| テーマ | 具体的な取り組み例 |
|---|---|
| 地域体験のデジタル販売 | マイクロツーリズムのEC化、オンライン予約連携 |
| 多言語対応・インバウンド施策 | 自動翻訳機能つきガイドアプリ、AIチャット受付 |
| 空き施設の活用 | 地域施設を活かしたワーケーション支援、マッチングサービス |
観光という流動的な価値と、デジタルによる効率化は相性が良く、地方自治体との連携も含め、補助金やパートナー支援を得やすい点も魅力的です。
環境・サステナブル領域のブルーオーシャン
脱炭素社会への移行はもはやスローガンではなく、企業の経営判断を左右する現実的な制約要因になりつつあります。この変化は、新規事業にとって大きなビジネスチャンスでもあります。
有望な事業テーマ
- サーキュラーエコノミー(循環型経済)支援サービス
- ESGデータの可視化・レポーティング支援ツール
- 中小企業向けカーボンオフセット支援
大企業に限らず、中堅・中小企業でも環境対応は無視できない経営課題となっており、「環境対応の内製化が難しい層」にサービスを提供する視点が重要です。
生成AI・大規模言語モデルを活用した業務支援
ChatGPTをはじめとした生成AIの活用は、もはや一過性のブームではなく、業務設計そのものを変えるテクノロジーとして定着し始めています。単なる業務効率化にとどまらず、顧客対応、文章作成、分析業務などへの応用が進んでいます。
今後狙いやすい活用領域の例
- 営業支援(トークスクリプト生成、CRM連携)
- カスタマーサポートの自動応答・ナレッジ検索
- 社内ドキュメント整理・社内問い合わせ対応
特に、業界特化×生成AIという切り口は、具体的なニーズと結びつきやすく、小規模から始めやすいテーマです。既存業務の延長線上に構築できるため、初期導入ハードルも低く、再現性のある事業化が可能でしょう。
狙い目を事業に昇華させるための戦略設計

狙い目の市場やアイデアが見つかったとしても、それをそのまま事業化できるわけではありません。重要なのは、狙い目を戦略に変換し、事業として機能させるための設計図を描くことです。
誰に何をどのように届けるか、どの段階で勝負を仕掛け、どのようにスケールさせるのか。これらを言語化し、現実的な打ち手に落とし込めて初めて、新規事業としての価値が生まれます。
この章では、狙い目を絵に描いた餅で終わらせないための4つの戦略設計の視点について見ていきましょう。
ターゲットの絞り込みと最小市場の見極め
事業を立ち上げる初期段階では、広い市場を狙うよりも、最小限の顧客層に深く刺さるかどうかを重視する必要があります。市場全体をとらえる前に、「最初に確実に価値を届けられる相手」は誰かを明確にすることが重要です。
ターゲットを絞り込む際のポイント
- 顧客像をペルソナではなく「実在の個人や法人」で設定する
- 現時点で顕在ニーズを持つ層を優先する
- 決裁者・利用者・影響者を分けて考える(BtoBの場合)
また、「最小市場(Smallest Viable Market)」を定義できるかどうかが、立ち上がりの速さに直結します。ニーズの強さと密度の高いゾーンから着手することで、初期の成果を早期に可視化しやすくなります。
スケール可能性と資金計画の初期検証
新規事業はスタートできるかだけでなく、どこまで伸ばせるか、伸ばすために何が必要かの見通しがなければ、途中で止まるリスクが高くなります。
スケールを前提に考えるべき項目
| 検証項目 | チェックすべき視点 |
|---|---|
| 顧客獲得コスト | 顧客1人あたりの獲得単価は、想定売上に見合っているか |
| オペレーション負荷 | 拡大後も品質を維持できる運用設計になっているか |
| 資金繰りと成長速度 | 赤字フェーズをどう乗り切るか、外部資金は必要か |
特に、資金調達やキャッシュフローの仮説は初期段階で粗くても設計しておくべきです。スケールの見通しが描けないまま進めてしまうと、初期検証がうまくいっても、次のステージに進めなくなる恐れがあるでしょう。
短期で撤退判断を下せるKPI設計
事業の立ち上げでは、うまくいかないケースのほうが多くなります。だからこそ、「続けるか、止めるか」の判断軸を最初から持っておくことが不可欠です。そのために必要なのが、KPIの設計です。
撤退判断につながるKPIの設計ポイント
- 初期段階では売上よりも「行動指標」(申込み率、利用継続率など)を重視する
- 設定KPIには「最低達成ライン」と「撤退基準」をセットで定める
- 定性フィードバックも併用し、定量だけに依存しない評価体制を整える
KPIを曖昧なままにしてしまうと、判断の先送りが続き、リソースだけが消費される状況に陥ります。短期間で明確な意思決定ができる設計こそ、スピードの求められる新規事業では必須の戦略です。
狙い目の継続性と出口戦略の重要性
新規事業は立ち上げがゴールではありません。狙い目に選んだ市場が、3年後・5年後にも持続的に価値を生み出せるか、あらかじめ視野に入れておく必要があります。
また、成長したあとの選択肢(売却、事業部化、JV化など)を含めた出口戦略も、初期段階から設計しておくことで意思決定がしやすくなります。
検討しておくべきポイント
- 市場やニーズの持続性、技術的な陳腐化リスクはあるか
- 競合の参入障壁をどこに設計するか(契約構造、技術、ブランドなど)
- 成長後の選択肢と、自社にとっての「成功」の定義を言語化しておく
特にスタートアップ型の新規事業では、事業売却や提携によって出口を設計するケースも多く、初期段階から「終わり方」までを含めた戦略設計が必要です。
まとめ:狙い目を探すのではなく自社にとっての勝ち筋を設計しよう

新規事業において重要なのは、流行のテーマを探すことではなく、自社にとっての勝ち筋を設計することです。
市場の大きさや話題性に頼るのではなく、自社の強みや経営資源を活かせる領域を、論理と検証を通じて見極める姿勢が求められます。ユーザーニーズの明確さ、競合状況、模倣のされにくさ、スモールスタートの可能性など、多角的な視点から狙い目を設計することが不可欠です。
また、KPIや資金計画、将来的なスケールと出口までを踏まえた戦略を初期段階から描いておくことで、事業の実現性と持続性が高まります。狙い目はどこかにあるものではなく、自らの手で構築するものです。
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慶應義塾大学卒業後、日系シンクタンクにてクラウドエンジニアとしてシステム開発に従事。その後、金融市場のデータ分析や地方銀行向けITコンサルティングを経験。さらに、EコマースではグローバルECを運用する大企業の企画部門に所属し、ECプラットフォームの戦略立案等を経験。現在は、IT・DX・クラウド・AI・データ活用・サイバーセキュリティなど、幅広いテーマでテック系の記事執筆・監修者として活躍している。
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