Vue.js(ビュージェイエス)は、世界的に人気が高いJavaScriptフレームワークです。多くのWebアプリケーションがVue.jsを使って開発されています。本記事では、そんなVue.jsの特徴やメリット・デメリット、活用事例をわかりやすく解説します。また、Vue.jsと比較されることが多いReact(リアクト)との違いも紹介します。
Vue.jsとは
Vue.jsとは、Webアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)を構築するためのJavaScriptフレームワークで、元Googleの開発者Evan You氏によって開発されました。
JavaScriptとは、WebサイトやWebアプリにアニメーションなどの動きを付けるためのプログラミング言語です。JavaScriptで開発する場合、フレームワークと呼ばれる開発基盤を使うことで、開発工数を抑えて品質を高めることができます。
フレームワークとは、アプリの土台となる構造やアーキテクチャ、基本的な機能の実装を含んだ開発支援ツールのことです。フレームワークが提供する土台の上に、個々のプロジェクトで必要な機能を構築していくことで、効率良くWebアプリを開発することが可能となります。
数あるJavaScriptフレームワークの中でもVue.jsは世界的に人気が高いフレームワークであり、多くのWebアプリケーションのUIが、Vue.jsを使って構築されています。Vue.jsは2020年にメジャーアップデートが行われており、現在(2023年7月時点)の最新バージョンはVue3です。Vue3では再利用性やパフォーマンスなどが進化し、アプリ開発に導入するメリットが大幅に向上しています。
Vue.jsの特徴
Vue.jsは次の特徴を持っています。
- ・柔軟性が高い
- ・高パフォーマンスかつリアクティブな表示更新
- ・コンポーネントを組み合わせたUI構築
- ・コンポーネントのコード管理がしやすい
柔軟性が高い
Vue.jsは非常に柔軟性が高いのが特徴で、他のJavaScriptライブラリと組み合わせて使うことができます。部分的にVue.jsを取り入れてアプリを開発したり、既存のアプリケーションの一部分をVue.jsで再構築したりといったことが可能なため、新規開発や既存アプリの拡張などさまざまな場面で導入できます。
高パフォーマンスかつリアクティブな表示更新
Vue.jsは、データの変更を検出して画面表示を自動的に更新するリアクティブ機能を備えています。このリアクティブ機能により、内部データの更新がリアルタイムに画面表示に反映されたり、画面上でのユーザー操作(クリックや入力など)がリアルタイムにデータに反映されたりといったことが自動で行われます。
さらに、データの変更を検出して画面表示を更新する際には、仮想DOMを使って関連するUIのみを再レンダリングする仕組みを採用しています。仮想DOMとは画面の表示状態のデータのコピーをメモリ上に展開したものです。Vue.jsでは、データが変更された場合にまず仮想DOMを更新し、更新後の仮想DOMと現在の画面表示の差分を計算して、差分のみを実際の画面表示に反映させます。データ更新のたびに画面全体を再レンダリングする必要がなく、画面更新がスムーズに行えます。
この仮想DOMとリアクティブ機能により、高パフォーマンスでリアクティブな画面更新が可能です。
コンポーネントを組み合わせたUI構築
Vue.jsでは、コンポーネントベースのアーキテクチャを採用しており、WebアプリケーションのUIをコンポーネント単位で開発することが可能です。コンポーネントとは、UIを機能レベルで分割した部品のことで、それ単独で機能し再利用することもできます。そのため、必要な機能のコンポーネントを組み合わせて効率良くUIを構築することが可能です。
コンポーネントのコード管理がしやすい
Vue.jsはSFC(Single File Component)と呼ばれるコード記述方式を採用しています。SFCとは、コンポーネントの関連コード(HTMLやCSS、JavaScript)を1つのファイルにまとめて記述する方式のことです。このファイルには.vueという拡張子がつくため、Vueファイルとも呼ばれます。コンポーネントの関連コードを一つのVueファイルにまとめることで、コード管理がシンプルになり、開発効率や保守性が向上します。
Vue.jsで開発するメリット
Vue.jsで開発するメリットとして次の点が挙げられます。
- ・開発コストの削減ができる
- ・既存アプリの拡張が容易
- ・パフォーマンスが高いWebアプリの開発が可能
開発コストの削減ができる
Vue.jsをアプリ開発に導入することで、開発にかかる工数を大幅に短縮できます。なぜなら、フレームワーク自体にアーキテクチャや基本機能の実装が備わっているため、その上にプロジェクト固有の機能を実装するだけでWebアプリが開発できるからです。また、プロジェクト固有の機能の実装においても、コンポーネントを再利用することで、短時間で実装することが可能です。さらに、Vue3ではコンポジションAPIという新しいAPIがサポートされ、関数単位で機能をまとめられるようになりました。このコンポジションAPIにより再利用性がますます向上しており、コード実装の手間をさらに削減できます。
保守の面においても、SFCによってコンポーネント単位でのコード管理がしやすくなるため、保守工数を削減できます。
既存アプリの拡張が容易
Vue.jsは柔軟性が高いため、既存アプリの拡張などで部分的に導入できるという特徴があります。そのため、既存機能の実装に大幅な変更を加えることなく拡張部分をVue.jsで構築することができます。例えば、従来採用していたフレームワークでは対応が難しいような機能拡張でも、その部分だけVue.jsで対応するといったことも可能です。
パフォーマンスが高いWebアプリの開発が可能
Vue.jsが持つリアクティブ機能によって、データの変更と表示の更新が自動的に連動するため、Vue.jsで開発したWebアプリケーションでは、常に最新のデータを表示に反映させられます。また、画面更新は仮想DOMの仕組みによって高速に行えるため、画面表示がもたつくこともありません。Vue.jsのリアクティブと仮想DOMの仕組みを生かして、パフォーマンスが高く使い勝手の良いアプリを開発できます。
Vue.jsのデメリット
多くのメリットがあるVue.jsですが、次のようなデメリットもあります。
- ・大規模開発には向いていない
- ・利用率は停滞ぎみ
- ・ネイティブアプリ開発には向いていない
大規模アプリの開発には向いていない
Vue.jsは小・中規模アプリ向き、React(リアクト)は大規模アプリ向きと言われています(Reactとは、JavaScriptのライブラリの一つです)。その理由は、コンポーネント間のデータフローの仕組みにあります。
Reactのデータフローは、親コンポーネントから子コンポーネントへの単方向のデータフローです。単方向データフローには、アプリの規模が大きくなってもデータの流れがシンプルで管理しやすい特徴があります。
一方、Vue.jsは親コンポーネントと子コンポーネントの間で相互にデータをやりとりできる双方向のデータフローです。双方向データフローは、設計の自由度が高く素直に設計できる反面、アプリの規模が大きくなるとデータの流れが複雑になり管理が大変になってしまいます。そのため、Vue.jsはReactに比べると大規模アプリ開発には向いていません。
利用率は停滞ぎみ
Vue.jsは世界的に人気でJavaScriptフレームワークの主流になっています。しかし、最近(2023年7月現在)ではReactの人気に押されている傾向にあります。日本国内ではVue.jsとReactの利用率は半々といった印象ですが、Googleの検索数を示すGoogleトレンドで比較すると、Reactの方が良く検索されています。また、GitHubのスター数やState of JS(JavaScript関連ツールのトレンドをエンジニアの投票で測るサービス)でもReactが上回っており、世界的にはVue.jsよりReactの方が人気や利用率が伸びている傾向にあります。利用率が高いほどエンジニアが豊富なため、将来的にはReactを利用した方が開発しやすくなるかもしれません。
ネイティブアプリ開発には向いていない
Vue.jsは、他のJavaScriptフレームワークと比べるとネイティブアプリ(iOSアプリ/Androidアプリ)開発用のライブラリやツールの提供が後れている傾向があります。これは、Webアプリの開発が目的のプロジェクトであればまったく問題ありません。しかし、ネイティブアプリ開発が目的の場合は、その方面のツールやライブラリが豊富な他のフレームワークを選択した方が、開発効率が上がる可能性があります。
Vue.jsの活用事例
ここからは、Vue.jsの活用事例を紹介します。
SPA開発
Vue.jsはSPA(Single Page Application)の開発に適しています。SPAとは、他のページに画面遷移せず1ページで機能が完結しているWebアプリのことで、GitHubやTrelloといった有名なWebアプリもSPAの一つです。SPAは画面遷移がないかわりに1ページ内でさまざまな機能を実現しているため、画面の表示や更新に時間がかかりがちです。
Vue.jsでUIを構築すれば、仮想DOMの仕組みにより画面更新がスムーズに行えます。さらに、内部データの変更もリアクティブ機能により即時に画面表示に反映されるため、ユーザービリティが高いSPAを開発できます。そのため、Vue.jsは多くのSPA開発で活用されています。
既存アプリの拡張や変更設計
Vue.jsが持つ柔軟性の高さを生かして、既存アプリの仕様変更や機能拡張の場面でVue.jsを活用する事例も多く見られます。Vue.jsは現在主流のJavaScriptフレームワークの一つであり、エンジニアの数も多いのが特徴です。そのため、もともと採用していたフレームワークをそのまま使ってアプリを拡張するより、拡張部分だけVue.jsを使う方が、開発効率が上がるケースも多くあります。
Reactとの相違点
ReactはJavaScriptのライブラリの一つで、Vue.jsと同じく非常に人気があるため、Vue.jsとReactはよく比較されます。
Vue.jsとReactの主な違いとして、次の点があげられます。
- ・最適な開発規模
- ・リアクティブ性
- ・ネイティブアプリ開発のしやすさ
最適な開発規模
デメリットの章でも述べた通り、Vue.jsとReactでは適した開発規模が異なります。Vue.jsはその柔軟性の高さから、既存アプリの拡張に部分的に導入すると言った活用が可能です。また、コンポーネント間で双方向のデータのやりとりが可能で設計の自由度が高いこともあり、小・中規模開発に適しています。
Reactは、Vue.jsと違いデータフローが親コンポーネントから子コンポーネントへの単方向です。そのため、開発規模が大きくなってもデータフローの管理が容易であり、大規模開発に向いています。
リアクティブ性
Vue.jsの特徴の一つであるリアクティブ機能は、Reactには備わっていません。Vue.jsは、データの変更を自動的に検出し即座に画面表示に反映できますが、Reactでは、データの変更を検出したら、関連するUIの更新を手動で行う処理をプログラミングする必要があります。そのため、リアルタイム性が求められるWebアプリはVue.jsの方が開発しやすいと言えます。
ネイティブアプリの開発のしやすさ
Vue.jsは、ネイティブアプリ開発に特化したツールやライブラリの成熟が遅れており、ネイティブアプリ開発にはあまり向いていません。
一方、Reactは、React Nativeというフレームワークにより、効率良くネイティブアプリを開発できます。そのため、ネイティブアプリを開発するのであればReactの方が適しています。
まとめ
Vue.jsは世界的に人気が高いJavaScriptフレームワークです。柔軟性や再利用性が高く、パフォーマンスに優れたWebアプリケーションを効率良く開発出来るといった特徴を持っています。特にSPA開発に向いており、多くのSPAのUI構築にVue.jsが活用されています。また、他のライブラリと組み合わせて使える柔軟性の高さから、既存アプリの拡張で活用されるケースも多くあります。
その一方で、大規模なWebアプリ開発には向いていないといった側面や、Reactの人気に押されて利用率の伸びが停滞ぎみといったデメリットもあります。
もちろん、アプリ開発にどのフレームワークを採用するかは、人気や利用率だけでは判断できません。開発するアプリケーションの特性や規模、環境によって適切なフレームワークやライブラリを選択することが成功の鍵となります。システム開発やスマホアプリ開発のご要望がございましたら、ぜひGeNEEまでご相談ください。お客様のニーズや将来的な事業方針をヒアリングした上で最適な開発手法をご提案いたします。
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