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公開日:2026.01.26 更新日:2026.02.04

新規事業が失敗する理由とは?よくある原因とフェーズ別の対策を解説

監修者
代表取締役 日向野卓也

目次

新規事業は企業の成長に不可欠な一方で、その9割以上が失敗に終わるとも言われています。なぜ多くの企業が挑戦し、そしてつまずくのでしょうか。

本記事では、失敗の構造と原因をフェーズごとに整理し、実際の失敗事例から学べる教訓や再現性ある対策を解説します。

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なぜ新規事業は高確率で失敗するのか

なぜ新規事業は高確率で失敗するのか

新規事業への挑戦は、多くの企業にとって希望であり、同時に試練でもあります。経営資源を投じたにもかかわらず、ほとんどが実を結ばないという現実があるからです。期待を背負った新プロジェクトが、数年後には静かに姿を消している——そんなケースを業界問わず見かけるようになりました。

では、なぜ新規事業はこれほどまでに高確率で失敗してしまうのでしょうか。単に運が悪かった、やり方がまずかった、という一言では片づけられません。

ここでは、失敗を生み出す構造的な背景と、そこに潜む見落とされがちな本質的な課題を掘り下げていきましょう。

成功確率は10%未満と言われる背景

多くの調査やコンサルティングファームのレポートが指摘するように、新規事業の成功確率は「10%未満」とされることが珍しくありません

背新規事業の成功率の目安

調査元・出典成功率の目安解説
アビームコンサルティング(2024年)7.1%年商200億円以上の企業780社を対象とした調査。累損解消まで至った割合
PwCコンサルティング
(2025年展望)
10〜20%(黒字化)「主力事業化」まで至った企業はさらに少ない。中長期視点での成功定義を採用
現場感(複数の実務家インタビュー・業界記事より)「千三つ(約0.3%)」という声も実際に継続的な収益を生む事業は極めて少ないという実務家の見解

関連記事:新規事業の成功率は10%未満?新規事業の成功率を上げるための原則と設計方法

背景と要因

要因内容
市場の複雑化変化のスピードが速く、ニーズが読みづらくなっている
社内リソースの制約優秀な人材や十分な予算が確保できない
経営陣の理解不足既存事業と同じ尺度で評価されることで育成が困難に
撤退判断の遅れ感情や社内政治が影響し、引き際を見失う

数字だけを見るとあまりにも厳しい現実ですが、これは異常ではなく、むしろ一般的な傾向です。裏を返せば、最初から「失敗する前提」で設計しておくことが、現代の新規事業には求められています。

「いいアイデア=成功」ではない現実

新規事業に取り組む企業でありがちなのが「画期的なアイデアさえあれば勝てる」という誤解です。しかし実際には、アイデアの良し悪しと事業の成否には、直接的な相関はありません

良いアイデアが失敗に終わる典型的なパターン

  • 顧客ニーズとのズレ:企業の都合で生まれたアイデアは市場に響かない
  • 実行計画の弱さ:誰が・いつ・どのように進めるのかが曖昧
  • 再現性のない仕組み:特定の担当者の熱意に依存して持続できない

つまり、新規事業の成否は「何をするか」よりも「どう進めるか」にかかっていると言えます。優れたアイデアでも、戦略や組織、タイミングを誤れば簡単に失敗に転じてしまうでしょう。

失敗に至る構造的な問題とは

新規事業の失敗には、個別の原因だけでなく、構造的な欠陥が根底に存在することが多くあります。
この構造を理解しないまま「場当たり的な対策」を打っても、根本解決にはつながりません。

主な構造的問題

  • 組織内の断絶
    新規事業部門と既存事業部門の間で、協力関係が築けず孤立する
  • 評価制度の不整備
    新規事業が既存のKPIで測られることで、育つ前に潰されてしまう
  • スピード感の欠如
    意思決定に時間がかかり、検証→改善のサイクルが回らない
  • リスク設計の甘さ
    「やめ時」を明確にしないままズルズルと続けてしまう

こうした構造的課題を放置すれば、どれほど優秀なメンバーを集めても、失敗は必然となってしまいます。むしろ「なぜその構造を放置しているのか」を問い直す姿勢が求められるでしょう。

失敗の多くは能力不足ではなく「設計ミス」

「うまくいかなかったのは担当者の力不足だった」——新規事業が失敗したあと、よく聞かれる言葉です。しかし、多くのケースでは人材の問題ではなく「設計そのもの」に根本原因があります。

特に次のような設計ミスが繰り返されています。

設計ミスの例問題点
KPIが曖昧成功か失敗かの判断基準が不明確で、適切な意思決定ができない
仮説が弱い顧客の課題や市場の反応に対する検証が不十分
撤退基準がないどこでやめるべきかを決めていないため、損失が拡大
社内調整設計がない評価者・稟議ルート・承認タイミングが不明確で進まない

重要なのは、「熱意」や「努力」ではなく、事業の設計に再現性と現実性があるかどうかです。個人の能力のせいにする前に、「そもそも勝てる設計だったのか?」を見直す視点が必要です。

よくある新規事業の失敗パターン7選

よくある新規事業の失敗パターン7選

新規事業の失敗には、いくつかの典型的なパターンが存在します。業種や企業規模に関わらず繰り返し起きており、裏を返せば、事前に認識し対策しておけば防げる可能性もあるということです。

ここでは、新規事業にありがちな7つの失敗パターンを取り上げ、なぜそれが起きるのか、どのような構造的な背景があるのかを見ていきましょう。

顧客ニーズの見誤りと市場理解の不足

新規事業が失敗する最も典型的な要因のひとつが、顧客ニーズを正確に捉えきれていないことです。

企業の内側で「これは売れるはずだ」と盛り上がったプロダクトが、いざ市場に出てみると全く響かない。このような事態は、現場の顧客インサイトや購買行動の実態を丁寧に掘り下げず、仮説が浅いまま突き進んでしまうことで起こります。

また、ユーザー視点ではなく、技術やアイデア主導で企画がスタートすると、プロダクトアウト型になりやすく、結果として市場とのミスマッチが生まれるでしょう。

ノウハウ・リソース不足に起因する実行力の欠如

事業構想自体は魅力的であっても、実行段階でつまずくケースは非常に多くあります。

必要なノウハウや専門性を持った人材が不足していたり、社内で活用できるリソースが限られていたりすることで、計画倒れに終わるパターンです。特に、既存事業とは異なる領域に進出する場合には、新たな知識や経験が不可欠ですが、それが十分に補えていないと、机上のプランは絵に描いた餅になってしまうでしょう。

実行力の欠如は、時間と予算のロスにつながり、次第に組織全体のモチベーションも失われていきます。

資金枯渇と収益化の遅れ

新規事業は、当初の想定よりも遥かに多くのコストがかかる場合があります。

開発費用、マーケティング費、採用や外注のコストなど、次々に予期せぬ出費が発生します。こうした中で、収益化の目処が立たないままに資金が尽きてしまうのが、この失敗パターンの特徴です。多くの企業が資金計画を「楽観的なシナリオ」に基づいて立てがちですが、実際には売上が立つまでに想像以上の時間がかかります。

資金が枯渇すれば、その時点でプロジェクトは止まり、成果が出る前に終焉を迎えてしまうでしょう。

参入タイミングのミスと競争環境の誤認

新規事業の成否において、参入のタイミングは極めて重要です。

早すぎれば市場が成熟しておらず、顧客の認知もニーズも形成されていない状態。逆に遅すぎれば競合がすでに市場を押さえており、後発では差別化が難しくなります。また、業界の競争環境を正しく捉えていないと、想定以上に強いプレイヤーと正面からぶつかってしまい、事業として成立しなくなることもあります。

市場の成熟度や競合の動き、自社の立ち位置を冷静に見極める力が欠けていると、タイミングの判断を誤ってしまいます。

チーム編成の失敗と社内の温度差

新規事業の推進には、スピード感と柔軟性を兼ね備えたチームが不可欠です。

しかし、実際にはプロジェクトに適した人材が配置されなかったり、事業に対するコミットメントの温度差がチーム内や他部署との間で生じていたりといった、組織的な不整合が失敗を招くケースがあります。特に問題なのが、兼務体制や片手間で進めるスタイルです。責任の所在が曖昧になるだけでなく、意思決定も鈍り、結局は形骸化してしまうのです。

適切なリーダーシップと、ミッションに対する本気度がチームに共有されていなければ、プロジェクトは立ち上がっただけで終わってしまいます。

事業責任者の過信・過干渉

新規事業を率いるリーダーのスタンスも成否を大きく左右します。

ありがちなのが、事業責任者が自らの経験や過去の成功体験を過信しすぎて、他の意見に耳を貸さなくなるパターンです。あるいは、逆に細部にまで過干渉し、現場が自由に動けなくなるケースもあります。

いずれにしても、リーダーシップのあり方に問題があると、チームの創造性やスピード感は失われてしまいます。新規事業は予測不能な変化への対応力が問われる場であり、柔軟な意思決定や適切な任せ方が求められるでしょう。

ブルーオーシャン幻想に振り回される戦略ミス

競合のいない「ブルーオーシャン市場」は魅力的に映りますが、成功を保証するわけではありません

むしろ、競争が存在しないということは、そもそもニーズが存在していない可能性すらあるのです。安易に「他社がやっていないからチャンスだ」と飛びついた結果、市場が育っていなかった、採算が合わなかったという失敗例は後を絶ちません。

ブルーオーシャンを目指す戦略には、事業構造や顧客価値をゼロから作る労力が必要になります。その覚悟がないままに進めると、現実とのギャップに耐えられず早期に頓挫してしまうことになります。

失敗事例に学ぶ具体的な教訓

失敗事例に学ぶ具体的な教訓

新規事業の失敗には、個別に見ればそれぞれ異なる要因があるように思えるかもしれません。しかし、実際にはいくつかの共通した構造的な落とし穴が存在しており、業界や企業規模を問わず多くの企業が同じ轍を踏んでいます

ここでは、実際に大手企業が経験した象徴的な失敗事例を元に、そこから得られる教訓を抽出しましょう。成功企業だからといって新規事業がうまくいくとは限らない。そのリアルを知ることこそが、次の挑戦の糧になるはずです。

ファーストリテイリング|既存ノウハウが通用しない領域の誤算

アパレルで成功を収めたユニクロを展開するファーストリテイリングは、2002年に生鮮野菜の販売事業「SKIP」に参入しました。既存事業の「SPAモデル(製造小売業)」を横展開すれば、流通の無駄を省いて鮮度の高い野菜を低価格で提供できると見込んでの試みでした。しかし、結果はわずか1年半で30億円の赤字を出し、全店舗閉鎖という結末に終わります。

この失敗の背景には、アパレルと農産物では需給の構造も物流も顧客の購買動機もまったく異なるという基本的な業界特性の理解不足がありました。成功体験が過信を生み、それが市場やユーザーのリアルなニーズから目を逸らす要因になったことは否定できません。既存の成功モデルが「通用しない前提」で新領域に挑む設計思想が求められていたと言えます。

セブンイレブン|社会的インパクトとリスクの見落とし

2018年、セブンイレブンは店舗で生ビールを100円で提供する「ちょい生」サービスを発表しました。SNSでも話題を呼びましたが、想定を上回る反響と社会的リスクの指摘により、販売直前で提供中止を決定。結果的に「幻のサービス」となりました。

このケースでは、サービスそのもののニーズはあったものの、未成年飲酒や飲酒運転の助長といった社会的懸念、急激な需要増に耐えうるオペレーション体制の欠如が問題となりました。事業の目新しさに注目が集まるほど、企業としての社会的責任も問われるという基本を見落としていた点が、最も大きな反省点だと言えます。

Google Glass|技術革新とユーザー体験のギャップ

Googleが展開した「Google Glass」は、AR(拡張現実)技術を搭載した先進的なウェアラブル端末として注目を集めました。ところが、市場投入後はプライバシー問題や使い勝手の悪さ、実用性の乏しさなどが指摘され、一般向けの販売は短期間で打ち切られました

技術的には革新的であっても、ユーザーが日常的に使うことを想定したプロダクト体験の設計が不十分だったことが敗因とされています。さらに、スマートフォンで代替できる用途ばかりだったため、存在意義そのものが曖昧でした。イノベーションと市場のリアリティとの乖離は、技術志向の企業ほど陥りやすい落とし穴です。

セブン・ドリマーズ|プロダクト完成度の過信と市場投入の失敗

「世界初の全自動衣類折りたたみ機」というキャッチーな製品「ランドロイド」を開発したセブン・ドリマーズ・ラボラトリーズ。2016年にはパナソニックや大和ハウスとの合弁会社まで設立し、注目を集めましたが、発売延期を繰り返した末、製品化には至らず、2019年には自己破産となります。

技術的な難易度の高さに加え、プロダクトの完成度と量産・販売戦略とのバランスが取れていなかったことが大きな課題でした。特に、滑りやすい素材の衣類が対応できないなどの根本的な欠陥を解決できないまま、大きな資金と期待だけが先行してしまった点は、過信による典型例といえるでしょう。「完成してから売る」ではなく、「売りながら磨く」設計が求められる時代において、技術主導の進め方が裏目に出た事例です。

リモノ|法規制と社会実装の落とし穴

2014年に設立されたリモノは、布製の2人乗り超小型EVを開発し、高齢者向けの安全な移動手段として注目を集めました。しかし、法整備が追いつかず、自治体ごとに走行許可が必要になるなどの制度的ハードルが大きく立ちはだかります。結果として、量産化・普及の見込みが立たず、事業は休止に追い込まれました。

技術的には十分にユニークな取り組みだったにもかかわらず、制度・規制・社会受容性といった外部環境を事前に読み切れなかったことが致命的でした。特に新しい領域の製品ほど、法的・制度的な側面の確認と調整は避けて通れません。社会に実装するという視点の弱さが、新規事業の成否を分けた象徴的な事例といえるでしょう。

フェーズ別に見る新規事業の失敗要因

フェーズ別に見る新規事業の失敗要因

新規事業は「やるべきことが多すぎて、何から手をつければよいかわからない」と感じやすい領域です。特に問題なのは、失敗がどのフェーズで起きているかを正確に認識できていないことです。結果として、原因があいまいなまま対症療法に終始し、同じ失敗を繰り返すという悪循環に陥ります。

ここでは、新規事業のプロセスを大きく4つのフェーズに分け、それぞれの段階でよく起こる失敗の特徴を整理しましょう。

アイデア検討段階での失敗:仮説が弱い・市場が曖昧

新規事業の出発点であるアイデア検討フェーズは、最も創造的でありながら、最も見落としが多い段階でもあります。

ありがちなのは、「社内の課題解決」や「技術の活用ありき」でスタートし、誰のどんな課題をどう解決するのかという仮説が不明確なまま企画を進めてしまうことです。

主な失敗要因内容
顧客像が曖昧ターゲットが抽象的すぎて、ニーズ検証が進まない
課題仮説が浅い表面的な課題設定で、解決の本質からズレる
市場規模が不明確数字の裏付けがなく、投資判断ができない
思いつきベーストレンドやアイデア先行で、本質的な価値提案がない

この段階での失敗は、後工程のすべてに悪影響を及ぼします。仮説が弱ければ検証の軸もブレ、結果として市場への適応性も不十分になるでしょう。

事業の土台は、この初期フェーズでどれだけ顧客と市場を深掘りできるかにかかっていると言っても過言ではありません。

企画・立案段階での失敗:リサーチ不足と承認フローの弱さ

アイデアを事業として具体化していく段階では、社内稟議や関係部門との調整が重要になります。

しかし、多くの企業ではこのフェーズで社内調整にばかり時間を取られ、スピード感が失われてしまうことがよくあります。また、定性的な感覚だけで企画書をつくり、市場調査や競合分析が不足しているまま承認プロセスに進むケースも目立ちます。

主な失敗要因内容
市場リサーチが不十分顧客ニーズや競合動向を深掘りできていない
社内説得材料が弱い数値的根拠が乏しく、関係部署の理解が得られない
稟議・承認フローが曖昧誰が判断し、誰が責任を持つかが不明確
関係部門の巻き込み不足既存事業との調整が不十分で、協力が得られない

このフェーズでの失敗は、「やるべきかどうか」の判断が甘くなるだけでなく、推進体制の弱さや社内での孤立を招くリスクも高めます。事業化を目指すなら、説得力ある企画構成と社内合意形成の仕組みづくりが欠かせません。

実行フェーズの失敗:チーム運営とスピードの遅れ

事業が動き出してからのフェーズでは、「誰が、どのように、どのスピードで実行するか」が成果に直結します。

ところが、いざプロジェクトが始まっても、チームの役割分担が曖昧だったり、スピード感が足りず市場の変化に追いつけなかったりするケースが多くあります。実行フェーズに必要なマネジメント設計が不十分なまま、勢いだけで進めてしまったことが原因です。

主な失敗要因内容
役割と責任の曖昧さ誰が何を決めるかが不明確で、意思決定が滞る
スピードの欠如仮説検証のPDCAが遅く、競合に後れを取る
兼務体制による集中力の低下担当者が片手間で関与しており、優先度が低い
進捗管理の甘さKPIやマイルストーンが設定されていない、もしくは形骸化している

この段階では、リーダーシップと実行力の質が試されます。スピードと柔軟性、そして現場レベルでの「自走力」がなければ、どれだけ準備を重ねてきた事業でも崩れてしまうでしょう。

拡大・撤退判断の失敗:感情による意思決定とKPI設計ミス

初期のテストマーケティングやPoCを経て、次のステージに進むべきか、あるいは撤退すべきか。この判断を誤ると、損失の拡大やリソースの無駄遣いにつながります

多くの失敗事例では、明確なKPIや判断基準を事前に設定しておらず、「なんとなく手応えがある」や「ここまでやったのだからもったいない」といった感情的な要素が意思決定に入り込んでしまいます。

主な失敗要因内容
撤退基準が曖昧どの時点でやめるべきかが最初に定められていない
KPIの設定ミス事業の特性に合わない数値指標で判断してしまう
過度な執着心投下した時間・コストへのバイアスが冷静な判断を妨げる
経営層との温度差現場と経営層で成功・失敗の基準が一致していない

拡大すべきか撤退すべきかを冷静に見極めるには、あらかじめ合意された数値と判断フレームを共有しておくことが欠かせません。「情熱」だけでは乗り切れないのが、事業経営の現実です。

新規事業の失敗を防ぐためにやるべき7つのこと

新規事業の失敗を防ぐためにやるべき7つのこと

新規事業は、どれだけ準備を重ねても不確実性から完全に逃れることはできません。しかし、失敗の確率を減らし、次の一手へつなげる土台を築くことはできます。多くの企業は「やってみてから考える」スタイルに傾きがちですが、成功確率を上げる企業には、共通して守られている実践的な原則があります。

ここでは、事業開発の現場で繰り返し語られてきた教訓をもとに、新規事業を前に進めるために意識すべき7つの具体的な行動指針を整理しました。

顧客インサイトに根ざした仮説検証を行う

新規事業の出発点は、優れたアイデアではなく深い顧客理解です。

机上で考えた仮説ではなく、実際の生活者や利用者の「行動・感情・文脈」に根ざしたインサイトが、価値のある仮説を生み出します。

良い仮説の条件内容
顧客の言葉に基づいている直接ヒアリングや観察で得られた一次情報を反映している
なぜ困っているのかが明確表面的な課題ではなく、背景にある構造的な要因を捉えている
実証可能である小さく検証できる方法が設計できている

優れた仮説は、必ず現場での気づきから生まれます。顧客の声を聞く習慣を仕組みにすることが、強い事業の出発点になります。

小さく始めて、早く検証するMVP思考

すべてを完璧に整えてから始めようとすると、手遅れになります。市場の変化は速く、待ってくれないからです。そのため、新規事業では「最小限の製品や仕組み」で早期に顧客反応を検証する、MVP(Minimum Viable Product)思考が重要になります。

MVP実践のメリット内容
仮説のズレを早く修正できる作り込みすぎる前に、方向性を見直せる
コストを抑えられる必要最小限の開発で済み、リスクが低い
市場との対話が早期に始まる想像でなく、実データで判断できる環境が整う

MVPは「雑につくる」という意味ではありません。市場と対話するために必要な最小限を見極める力こそが、経営判断の精度を高めるでしょう。

関連記事:MVP開発とは?開発にかかる期間やコスト、PoCやプロトタイプとの違いについて解説

事業目的と撤退基準を最初に明文化する

新規事業が「終わらせ方がわからない」まま続いてしまうのは、スタート時にゴールや撤退ラインを設定していないからです。これは現場だけの問題ではなく、経営判断の問題でもあります。

明文化すべき項目具体例
事業の目的「3年以内に〇〇領域で新たな収益源を確立」など定量的に示す
検証項目とKPI成功・失敗を判断するための基準となる数字や条件
撤退判断の条件「〇ヶ月以内にA条件を満たさなければ撤退」などの具体的な基準

事業に感情が乗るのは自然なことですが、意思決定は冷静に行えるように設計すべきです。曖昧なまま走り出すと、成功も撤退も判断できなくなります。

チームビルディングに時間と責任をかける

新規事業の成否は「誰と進めるか」に大きく左右されます。

既存の部門から空いている人を集めた「寄せ集めチーム」では、当事者意識やスピード感が生まれにくくなります。プロジェクトに必要なスキルと熱量を持ったメンバー選定が重要です。

チーム構築のポイント内容
専任体制の確保最低1人は専任にすることで、リーダーシップが機能する
役割と責任の明確化誰が何を判断し、どこまで裁量があるのかを明文化
組織との橋渡し役の配置既存事業側との連携を円滑に進めるキーパーソンが必要

良いチームは「自走」します。そのためには最初に、チーム作りに本気で時間と責任をかけるべきです。

既存事業との関係性を明確に保つ

新規事業と既存事業の関係性が曖昧なままだと、社内の軋轢や非協力を招く原因になります

例えば、リソースの取り合いや、顧客・ブランドの重複による混乱などが生じるケースは少なくありません。

注意すべきポイント内容
KPIの違いを説明する既存事業と異なる指標で評価される理由を共有する
役割の重複を避ける顧客やチャネルの重複を事前に調整し、摩擦を防ぐ
経営層が両者の橋渡しをする「どちらかが正しい」という構図を避け、共存を促す

新規事業は社内において異物であり、異物だからこそ明確な線引きが必要です。対立を生まないためには、構造的な関係性の設計が求められます。

社内外の情報網とアドバイザーを活用する

新規事業は、閉じた組織の中だけで完結できるものではありません。特に初期段階では、外部の知見や経験者の視点をどれだけ柔軟に取り入れられるかが重要な差になります

活用すべき情報源内容
業界外の事例他業種の成功・失敗に学ぶことで、視野を広げる
専門家やメンター特定領域の知見を持つ人材に、スポットで相談できる体制をつくる
顧客との対話定量データだけでなく、顧客のリアルな声を聞く仕組みを持つ

すべての答えを自社の中に求める必要はありません。むしろ、外に開いていく姿勢が、事業の可能性を広げてくれます。

想定外のコストやスケジュール変更に備える柔軟性を持つ

新規事業では、どれだけ綿密に計画を立てても必ず「想定外」が発生します。その時に必要なのは、完全な計画ではなく、「変更に耐えられる設計」です。

リスクに備える工夫内容
バッファの確保資金・人員・スケジュールに余白を持たせておく
スモールゴールの設定中長期ではなく短期の達成目標を細かく区切る
方針転換の判断基準を明文化方向転換のルールを先に決めておくことで、混乱を避ける

「計画通り進める」ことよりも、「変化にどう対応するか」の方がはるかに大切です。柔軟性こそが、新規事業における最大のリスク対策になるでしょう。

まとめ:新規事業の失敗は避けられないが再起は設計できる

新規事業の失敗は避けられないが再起は設計できる

新規事業を成功に導くために必要なのは、特別な発想や才能ではなく、失敗しやすい構造を理解し、あらかじめ設計で対処しておくことです。

顧客の本音に根ざした仮説検証、小さく始めて早く学ぶMVP思考、目的と撤退基準の明文化など、実行可能な工夫がいくつも存在します。また、チーム編成や社内との関係性、外部知見の活用、リスクを吸収できる柔軟な体制も欠かせません。

こうした準備ができていれば、たとえ一度失敗しても、次に生かす力が備わるでしょう。失敗を恐れるよりも、失敗を受け止められる設計にすることが、持続的な挑戦を可能にします。

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監修者
日向野卓也
日向野卓也
代表取締役

<略歴>
東京工業大学環境社会理工学院、慶応義塾大学大学院・慶応義塾大学ビジネススクールMBA(経営学修士取得)卒業。
京都大学経営管理教育部博士課程単位取得退学。国内最大手IT企業の株式会社NTTデータなどでエンタープライズ(大手法人)領域の事業開発・事業企画等に従事。
スタンフォード大学への海外研修を経て、株式会社GeNEEの代表取締役に就任。

<資格>
基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、MBA(経営学修士)、MOT(技術経営修士)等

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