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昨今、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が日本企業にとって重要な経営課題となっています。
しかし、DXを効果的に推進し、成果を挙げられている企業はまだ一握りです。多くの企業が、IT人材の不足、経営戦略の曖昧さ、既存システムの老朽化など、多様な課題に直面しています。
この記事では、日本企業が抱える具体的なDX化への課題を整理し、今後どのような取り組みが必要かを明確に解説します。DXを推進する上でのヒントとしてぜひご活用ください。
※企業のDX化についてはこちらの記事をご覧ください。
日本におけるDXの現状とは
経済産業省は「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」で、DXを「組織横断的な業務プロセスや製造プロセスのデジタル化、顧客起点の価値創出を目的としたビジネスモデル変革」と定義しています。
しかし、IPA(情報処理推進機構)が2020年10月に実施した調査によると、日本企業の9割以上がDX推進が十分に進んでいない、または一部分のみの実施にとどまっていました。
2025年現在も状況に大きな改善はなく、コロナ禍でリモートワークやクラウドサービスの導入をスムーズに行えた企業とそうでない企業間の格差は拡大しつつあります。
DXの必要性はますます高まり、企業間競争の重要な要素となっています。
参照:DXレポート2 中間とりまとめ(概要)
参照:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」
DXを実現するための課題とは
ここで実際に日本のDX化における課題を検証していきましょう。主に以下の6つの課題が考えられます。
- DX推進のための人材の不足
- DXを進めるための経営戦略の不足
- IT投資への意識
- ブラックボックス化したシステム
- 社内のITリテラシー不足
- セキュリティリスクへの対応不足
DX推進のための人材の不足
そもそも多くの日本企業では、システムの運用や開発を外部ベンダーに依存しています。そのため、自社内でのITスキルの蓄積や人材の育成が難しく、DXを推進できる人材が慢性的に不足している状況です。
また、具体的な人材育成方法が分からない企業も少なくありません。DXを推進するためには、外注に頼るだけでなく、自社内で企画や設計から運用管理まで一貫して担える人材を育てることが不可欠です。
特に、単なる技術者だけでなく、経営戦略やビジネス理解力も備えた人材を社内で計画的に育成する仕組みが求められます。
DXを進めるための経営戦略の不足
DX化を進める上で明確な経営戦略が不足していることも、日本企業が直面する課題の一つです。
多くの企業では「AIやデジタル技術で何か新しいことをしたい」といった漠然とした希望が先行しています。しかし、具体的に自社のどの業務課題を解決し、どのような新価値を提供したいのかが曖昧なままでは、DXは成果を生みません。
今後DXを推進していくためには、経営層が主導して全社的な視点で企業の課題や市場ニーズを分析し、DXによって実現したい明確なビジョンや戦略を策定・共有することが重要です。それを現場レベルまで落とし込むことで、具体的な行動計画が立てやすくなります。
IT投資への意識
DX推進において重要なのが、「攻めのIT投資」と「守りのIT投資」のバランスです。
「攻めのIT投資」とは、新規顧客の獲得や収益アップを目的とした積極的なデジタル投資のことを指します。一方、「守りのIT投資」は、業務効率化やコスト削減、既存システムの維持管理など消極的な投資を指します。
日本企業では「守りのIT投資」が圧倒的に多く、結果として古いシステムの老朽化が深刻な問題となっています。企業の約8割がこの課題を抱えており、DXの推進を阻害しています。
DX化を本格的に進めるには、IT投資の戦略を見直し、守りに偏った現状から攻守バランスのとれた投資計画への転換が不可欠です。
ブラックボックス化したシステム
日本企業の多くは、終身雇用制度が根付いていたためIT技術者の流動性が低く、企業間でのノウハウの共有や刷新が進まないまま独自のシステム仕様が発展しました。
これが原因で、多くの企業のシステムは複雑化し、特定の担当者以外が管理や理解をできない状況、いわゆる「ブラックボックス化」が進んでいます。さらに、この状態は担当者の異動や退職によって一層深刻化します。また、外部企業への管理委託が増えると自社内の理解者がさらに減り、ブラックボックス化が加速します。
この課題を解決するには、システムの標準化やマニュアル化を推進し、属人化を避け、組織全体で透明性を高める取り組みが必要です。
※企業のDX推進が失敗に終わる理由について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
社内のITリテラシー不足
DX推進には、社員全員が新しいデジタルツールやシステムを積極的に受け入れ、活用する能力が求められます。しかし、多くの日本企業においては、社員のITリテラシーが十分に育成されていないため、新しく導入したシステムやデジタルツールが効果的に活用されず、期待した成果が得られないことが多くあります。
実際、パーソルホールディングス株式会社の「DX推進に関する最新動向調査レポート」によると、DX推進の障壁として「社内のITリテラシーが不十分」と回答した企業は19.3%に上っています。

(出典:パーソルホールディングス株式会社「DX推進に関する最新動向調査レポート」)
社員が新たな技術に対して抵抗感を持つ場合や、使い方を理解できずに業務効率が低下するケースも見受けられます。
この課題を解決するためには、ITリテラシーを高める継続的な教育プログラムや研修制度を設け、現場レベルでの定期的なサポート体制の整備が不可欠です。
DXの課題解決に向けて必要なこととは
DXの上記の課題解決に向けて必要な3点を以下に掲げて解説していきます。
- DX化における人材の育成及び確保
- 自社の現状把握からDXで何を実現したいか具体的な経営戦略を
- レガシーシステムの刷新
DX化における人材の育成及び確保
DX化を推進するには、自社内で企画や設計、運用・管理までを一貫して担えるIT人材の確保と育成が不可欠です。
業務プロセスをデジタル化する中で、最新技術や自社に適したアプリケーションを選定・運用できるスキルを持つ人材が求められます。また、単にITスキルを持つだけではなく、経営戦略やビジネスモデルの理解、そして企業の中長期的なビジョンを見据えた提案ができる人材も必要です。
しかし、日本企業の多くが外部からの人材確保に苦戦しているのが現状です。そのため、まずは既存社員への研修やOJTなどを通じて、自社内で計画的かつ継続的な人材育成に取り組むことが重要となります。
明確なビジョンと戦略策定
DXは単なる業務のデジタル化だけでなく、企業全体の改革を通じて新たな市場や収益モデルを創出することが目的です。
デジタル技術の導入自体が目的化してしまうと、真のDX効果を得ることはできません。DXを成功させるためには、まず企業がデジタル技術を使って何を具体的に達成したいのか、明確なビジョンと経営戦略を立案し、企業全体で共有する必要があります。
経営層が率先して将来的なビジョンや具体的な目標を打ち出し、従業員一人ひとりが自分の業務とDXの関連性を理解できる環境を整えることが重要です。これにより、企業はデジタル技術を戦略的に活用し、競争力を高めることができます。
レガシーシステムの刷新
レガシーシステムの問題点は、企業内で問題だと気づかれにくいため、知らず知らずのうちに業務効率を下げていることです。
まずは、企業が既存システムを正確に把握し直すことで課題が明らかになり、システム刷新の必要性が理解されやすくなります。その後、新しいITシステム導入後の具体的なゴールイメージを明確に設定し、自社のビジネスモデルとの適合性や既存システムとの連携性を十分検討しましょう。
こうした戦略的な刷新計画を進めることで、少ない予算でも段階的かつ効率的な刷新が可能になり、システムの運用管理費の削減や新技術導入も実現できます。常に自社のIT環境の現状把握を徹底し、段階的な改善を進めていくことが重要です。
社内のITリテラシー向上施策
DXを成功させるためには、社員全員が新しいITツールやシステムを積極的に受け入れ、それらを十分に活用できるようになることが重要です。
しかし、現状として日本企業の多くでは、一般社員のITリテラシーが十分でないため、新規システムやツールが導入されても定着せず、業務効率が低下したり、導入の意義が薄れてしまったりすることがあります。
この課題を克服するには、ただ単に研修を開催するだけでなく、成功事例の共有、業務に直結した実践的トレーニング、学習成果の評価制度や認定制度の導入など、社員が自発的に継続して学べる仕組み作りが重要です。
継続的にIT教育を実施することで、組織全体のDX推進力を高めることができます。
セキュリティ対策の強化
DX推進に伴う企業のデジタル化が進むことで、情報漏洩やサイバー攻撃などのセキュリティリスクは以前よりも格段に増加しています。
しかし、多くの企業ではこのようなリスクへの認識が不十分であり、具体的なセキュリティ対策が後手に回っています。
対策としては、最新のセキュリティ技術の導入はもちろん、社内で定期的なセキュリティ教育を行い、全社員のリスクに対する意識を高めることが重要です。
また、専任のセキュリティ担当者や専門人材の配置を進め、日常的にセキュリティポリシーの策定・更新、リスク評価、インシデント発生時の迅速な対応体制を構築することが求められます。
※DX化を行うときに注意すべき点について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
日本企業の多くがDXに取り組み、経営の効率化や新たな価値創造を目指して日々努力しています。
しかし、現状では、大きな成果を実感できている企業はまだ少なく、課題解決に苦戦しているのが実態です。人材育成や明確な経営戦略策定、IT投資の適正化など、それぞれの課題を明確に捉え、具体的に取り組んでいくことが求められています。
これらの課題に対して戦略的かつ継続的に取り組むことで、日本企業はDXをスムーズに進められるだけでなく、企業競争力の強化や社会全体への貢献にもつなげることができます。
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コンテンツマーケティングディレクター
慶應義塾大学卒業後、日系シンクタンクにてクラウドエンジニアとしてシステム開発に従事。その後、金融市場のデータ分析や地方銀行向けITコンサルティングを経験。さらに、EコマースではグローバルECを運用する大企業の企画部門に所属し、ECプラットフォームの戦略立案等を経験。現在は、IT・DX・クラウド・AI・データ活用・サイバーセキュリティなど、幅広いテーマでテック系の記事執筆・監修者として活躍している。