
目次
「システム開発」に使用されるプログラミング言語は数多く存在します。開発現場では、プロジェクトの特性に応じて適切なプログラミング言語が選定され、活用されています。しかし、どのプログラミング言語がどのようなケースで適しているのか、明確に把握している方は多くないかもしれません。
たとえば、日本語、中国語、韓国語がそれぞれ異なる特徴を持つように、プログラミング言語も性質や特性、ルールが異なります。業務システムやWebシステム、Webサービスといったシステムの種類や用途に応じて、選定すべきプログラミング言語も変化します。そのため、システム開発案件を発注する企業の担当者が各プログラミング言語の特徴や適用範囲を理解していることは、自社プロジェクトの成功にとって大きな助けとなります。
本記事では「業務システム」に焦点を当て、開発によく使用される主要なプログラミング言語について詳しく解説します。最後までお読みいただければ、自社の業務システム開発に適したプログラミング言語について理解を深めることができるでしょう。
各システム/サービスの主要プログラミング言語
プログラミング言語は、システムやサービスの種類に応じて選定されます。以下に代表的なシステムと使用される主要なプログラミング言語をまとめました。
<業務システム>
- Java:大規模な基幹業務システムに適した汎用言語
- C言語(C#、C+、C++を含む):高い処理能力と信頼性でハードウェア制御に対応
- Python:データ分析やAI関連業務で活躍
<Webシステム/Webサービス>
- Java:安定性とセキュリティが高く、Webアプリケーションで広く採用
- PHP:サーバーサイド開発の定番。CMSやECサイトで活用
- Ruby(Ruby on Rails):迅速な開発が可能でスタートアップに人気
- Python:APIやデータ処理、科学技術計算で使用
<汎用系業務システム>
- Java:信頼性の高い言語で、多くの業界で標準採用
- C++:高性能なデータ処理やリアルタイムシステム向け
- COBOL:金融や官公庁の基幹システムで使用されるレガシー言語
<モバイルアプリ(参考)>
- iOS:Swift、Objective-C
- Android:Kotlin、Java(Android-Java)
プログラミング言語とは、システムやサービスの開発に必要なコンピュータプログラムを記述する手段です。文法や構造は言語ごとに異なり、それぞれ得意とする分野や用途があります。
2022年時点で、250種類以上の言語が存在し、派生言語を含めると1,000種類以上に達します。開発会社はこれらの中から、システムの特性や要件に最適なものを選定し、効率的で効果的な開発を進めています。
業務システムとは
業務システムとは、ERP(Enterprise Resource Planning)のような基幹システムや販売管理システム、製造管理システム、在庫管理システム、会計管理システムなど、企業の事業活動を支えるためのシステムを指します。これらのシステムは、業務プロセスの効率化やデータ管理の精度向上を目的としています。
最近では、Money ForwardやFreee、SmartHRといった廉価な月額料金で利用できるパッケージソフトやSaaS型サービスも業務システムの一種として広く活用されています。また、ネットワークに接続せず単独で動作するスタンドアローン型の業務システムも存在しますが、現在では、PCやタブレット、スマートフォンなどの端末を専用サーバに接続して利用するクライアントサーバ型システムが主流です。
業務システムの開発においては、クライアント側(プログラムの指示に従い、画面を表示する側)とサーバ側(プログラムを実行し、クライアントに画面を提供する側)の両方に対応するプログラミング言語が求められます。たとえば、C言語(C#、C++など)やJavaは、その汎用性から多くの場面で採用されています。さらに、統計処理や機械学習(マシンラーニング)、ディープラーニング(深層学習)に強みを持つPythonが選ばれるケースも増加しています。
このように、業務システムは企業の基盤を支える重要な存在であり、目的や要件に応じて最適な技術やプログラミング言語が選ばれています。
業務システム開発に適した主要言語
Javaとは
Javaは、1995年にサンマイクロシステムズによって公表されたオブジェクト指向型のプログラミング言語です。Javaは、JVM(Java Virtual Machine)と呼ばれる仮想マシン上で動作し、JVMが動作する環境であればプラットフォームを問わず動作可能なマルチプラットフォーム性が大きな特徴です。オブジェクト指向とは、特定の役割を持つ「モノ」をClass(クラス)として設計し、それらの関係性を定義することでシステムを構築する考え方です。この概念は非常に広範であるため、詳細は別の記事で改めて紹介します。
Javaには、未使用メモリを自動的に管理する「ガベージコレクション」という機能があり、効率的なリソース管理を実現します。また、コンパイラ型言語であるため、実行速度が速いという利点を持ちます。これにより、大規模なプログラムコードを必要とするシステムや、処理速度が重視されるプロジェクトに最適です。
Javaは、その汎用性の高さから、業務システムに限らず、WebシステムやWebサービス、スマートフォンアプリケーション、さらには組み込みシステムなど、さまざまな分野で利用されています。また、他言語と比較して堅牢性やセキュリティの高さにも定評があり、大規模システムでの採用が多い理由の一つです。
実際の導入事例としては、Googleの各種サービスやTwitterといった有名なプラットフォームが挙げられます。これらの事例からも分かるように、Javaは信頼性が高く、大規模システムに適した選択肢です。弊社でも、業務システムをはじめとするさまざまな開発案件において、Javaの採用を推奨しています。
C言語
C言語は、1972年にAT&Tベル研究所によって開発されたプログラミング言語で、その後継としてオブジェクト指向の要素を加えたC++が登場しました。C++(シープラプラ)は、C言語の基本構造を引き継ぎつつ、拡張性と柔軟性を高めた言語です。処理の高速性や汎用性の高さ、さらにはC言語とC++の互換性などの特徴から、現在でも広く利用されています。
C言語は、コンピュータ内部のCPU(中央処理装置)に適合したコンパイラを作成することで、さまざまなプログラムコードを生成できます。この汎用性が、C言語が長年支持されている理由の一つです。近年では、C++の需要が高まっており、業務システムの開発だけでなく、C言語で構築された既存システムの再設計や、高速化を目的としたWebサービスの再構築にC++が採用されるケースも増加しています。
C#
C#は、2000年にMicrosoftによって公表されたオブジェクト指向型のプログラミング言語です。その名称からC言語の後継と思われることがありますが、C#はC言語やC++との互換性を持ちません。一方で、JavaのJVM(Java Virtual Machine)と似た仕組みを持つ.NET FrameworkやVisual Studio .NET上で動作するため、どちらかと言えばJavaに近い特徴を持つ言語と言えます。
C#は、豊富な機能と直感的な文法を備えており、業務システム開発においても広く採用されています。また、GUIアプリケーションの開発やWebアプリケーションの構築においても強みを発揮します。特に、Windows環境との親和性が高いため、企業内システムの構築やデスクトップアプリケーションの開発において非常に有用です。
さらに、C#の持つ高い汎用性や開発効率の高さにより、大規模なプロジェクトや複雑な業務要件に応えることができます。その結果、業務システム開発プロジェクトで選ばれることも多い言語です。
業務システム開発に使用される開発言語について詳しく知りたい方は「業務システム開発に使用されるおすすめ開発言語」の記事もご確認ください。
Webベース業務システムの開発言語
Webベース業務システムとは、Google ChromeやSafari、EdgeなどのWebブラウザ上で動作するシステムやサービスを指します。このようなシステムの開発は、主にサーバサイドとフロントエンドの2つの役割に分かれて行われます。
サーバサイドでは、サーバ上で動作するプログラムコードを開発します。主な使用言語には「Java」、「PHP」、「Python」、「Ruby(Ruby on Rails)」などがあります。
一方、フロントエンドでは、ユーザーが操作する画面や機能を開発します。「HTML」「CSS」といったマークアップ言語や、プログラミング言語の「JavaScript」が使用されます。
以下では、Webベース業務システムの開発に使用される主要なプログラミング言語について、詳しく解説します。
Ruby
Rubyは、1995年に日本人プログラマのまつもと・ゆきひろ氏によって開発されたオブジェクト指向型プログラミング言語です。日本発の言語でありながら、国際電気標準会議(IEC)で国際規格として認証されている権威ある開発言語です。
Rubyの特徴は、プログラムコードの記述量が少なく、文法が非常にシンプルで自由度が高い点にあります。このため、効率的でスピーディーな開発が可能です。DjangoやFlaskといったフレームワークの代わりに、Rubyには「Ruby on Rails」というフレームワークがあり、Webシステムの開発速度をさらに高める役割を果たしています。
Rubyは特に新規事業やスタートアップ企業向けのプロジェクトに適しており、短期間でのシステム構築を可能にします。そのため、弊社でもスピードが求められるプロジェクトにRubyの採用を推奨しています。
PHP
PHP(ピーエイチピー)は、1995年にカナダ人プログラマのRasmus Lerdorf氏によって開発されたプログラミング言語です。当初は「Personal Home Page Tools」という名前で開発され、Webサイトのアクセス状況を調査するために使用されていました。その後「PHP」として広く知られるようになり、現在ではサーバサイド開発の定番言語の一つとなっています。
PHPは、文法がシンプルで学習しやすいことが特徴です。また、データベースとの連携が簡単に行えるため、小規模から中規模のWebシステムに適しています。一方で、記述の自由度が高いため、セキュリティ面に配慮する必要があります。また、大規模システムには向かないとされることもあります。
WordPressなどのCMS(Contents Management System)のサーバサイドにもPHPが採用されており、現在も多くのプログラマから支持されています。その普及率から、今後もPHPがWebシステム開発の重要な選択肢であり続けることは間違いありません。
Python
Python(パイソン)は、1991年にオランダ人プログラマのGuido van Rossum氏によって開発されたプログラミング言語です。シンプルで読みやすい構文を持ち、初心者から上級者まで幅広く利用されています。
Pythonは、Web開発においても非常に強力な言語であり、特に「Django」や「Flask」といったフレームワークを活用することで、安全性が高く、長く使えるWebシステムを素早く構築することが可能です。また、AI(人工知能)やデータ分析の分野でも多く使用されており、データ処理を含む業務システム開発には非常に適した言語です。
Webベース業務システムにおいては、Pythonを活用することで、APIの開発や機械学習を組み込んだ高度なシステム構築が可能になります。そのため、特にデータ処理や自動化を重視するプロジェクトにおいて、Pythonの採用が推奨されます。
Java Script
JavaScriptは、Webブラウザ上で動作するプログラミング言語で、フロントエンド開発の中核を担う存在です。ユーザーが操作する画面上の動的な要素やインタラクティブな機能を実現するために使用されます。
JavaScriptは「HTML」や「CSS」と組み合わせて使用されることが多く、Webページのデザインや動きを高度に制御することが可能です。また、Node.jsの登場により、JavaScriptはサーバサイド開発にも利用されるようになり、その汎用性がさらに高まりました。
Webベース業務システムにおいては、JavaScriptを使用してユーザーフレンドリーなインターフェースを構築し、ユーザー体験(UX)の向上を図ることが一般的です。その直感的な文法と広範なエコシステムにより、JavaScriptはフロントエンド開発者にとって欠かせないツールとなっています。
開発言語について詳しく知りたい方は「プログラミング言語の一覧・種類と特徴を徹底解説!」の記事もご確認ください。
業務システム開発言語の選定基準
業務システムの開発において、プログラミング言語を選定する際にはいくつかの基準を考慮する必要があります。まず、システムの要件や規模が重要です。たとえば、大規模で高い処理速度が求められる場合には、JavaやC#が適しています。一方、短期間での開発が必要なプロジェクトでは、RubyやPythonといった開発効率に優れた言語が選ばれることがあります。
また、選定する言語の保守性や将来性も重要な要素となります。長期的な運用を視野に入れる場合、活発なコミュニティがあり、サポートが充実している言語が望ましいとされます。さらに、プロジェクトに参加するチームのスキルセットや習熟度を考慮することも欠かせません。既に経験のある言語を採用することで、開発速度を向上させることができます。
加えて、業務システムでは高いセキュリティと信頼性が求められるため、選定する言語が提供するセキュリティ機能や過去の実績を十分に評価する必要があります。これらの基準を慎重に検討することで、プロジェクトに最適なプログラミング言語を選定し、システム開発を成功に導くことが可能となります。
【補足】汎用系業務システムとは
汎用系業務システムとは、国税庁や厚生労働省といった官公庁、銀行や保険会社などの金融機関で活用される基幹システムを指します。IT業界以外の方には馴染みが薄いかもしれませんが、NECや富士通、IBMなどが開発したメインフレームと呼ばれる専用コンピュータ端末を用いるシステムのことを総称して汎用系業務システムと呼びます。このシステムでは「Java」や「C++」といったプログラミング言語も使用されますが、主に「COBOL(コボル)」が利用されています。
COBOLは、1959年にアメリカ国防省が提案し、事務処理用プログラミング言語として国際標準化された言語です。COBOLの特徴は、英語に近いプログラムコードの記述が可能で、他の言語と比べても非常に読みやすい点にあります。計算処理に優れており、金融機関が運用するATM機器の取引処理の多くがCOBOLで動作しています。その信頼性の高さから、長年にわたり重要な業務システムを支えてきました。
しかし、COBOLを用いたシステムはメインフレーム環境に依存しているため、最新のクライアントサーバシステムに移行することが困難です。そのため、COBOLは依然として一部の業界で使用され続けると考えられていますが、新しい開発案件で採用されることはほとんどありません。後継言語として「OPEN COBOL」や「UNIX-COBOL」なども存在しますが、プログラムコードが冗長になるという欠点から、広く普及するには至っていないのが現状です。
おわりに
今回の記事では、業務システムを中心に、実際のシステム開発で使用されるプログラミング言語の特徴と利点について解説しました。情報システム部がない企業担当者の方にとっては、プログラミング言語やシステム開発といった言葉に苦手意識を持つ場合もあるかもしれません。しかし、今回の記事を参考にすることで、プログラミング言語の性質や種類を理解し、どのような業務システムを開発するべきか整理することができます。
開発プロジェクトの計画段階で必要な情報を整理するだけでも、プロジェクトの質を向上させる助けになるでしょう。ぜひ、この記事をご活用いただき、理想的な業務システム開発に役立てていただければ幸いです。
—————————————————————————————————————
システム開発、アプリ開発、新規事業立ち上げ、DX化の推進でお困りではありませんか?
日本全国には開発会社が無数にありますが、Webサービスやアプリサービスのスケール(規模拡大)を実現するビジネス推進力やシステムの堅牢性、可用性を意識した設計力・技術力を持つ会社は、多くはなく、弊社は数少ないその一つ。お客様のご要望通りに開発することを良しとせず、お客様のビジネス全体にとって最適な解を模索し、ご提案ができるビジネス×テック(技術力)×デザインの三位一体型の開発会社です。ITやDX全般に関して、何かお困りのことがございましたらお気軽にご連絡いただけたらと思います。
—————————————————————————————————————